あらすじ
18歳の薊は、死んでしまった祖父の相続税を払うため、夕陽の当たる海辺のバー〈サンセット〉でアルバイトを始めた。過去を語らぬ店長の浩一に魅かれ、彼がかつての新鋭作家だと知った。……薊は初めての恋に落ちていた。人生への不安、胸の痛み、そして抱きしめてくれた腕の熱。彼の残した唯一の小説を探り、いつしか薊は小説家を目指す。人生で一番濃密で、一番短い夏が終わる。薊はその夏失った大切な命を描こうと誓った。小説に寄せる著者の切実な想いを込めた青春ロマン。
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Posted by ブクログ
夏の海辺で進む物語。実際に海辺で育った人が読んでも、描写にリアルさがあるのでは?どっぷりとした恋愛話でもない、青春物語というのも少し違う気がする。さっぱりとした主人公たちは気負いせず入れる。ただ最後はやはり少し悲しい。
Posted by ブクログ
葉山で年老いた祖母と2人暮らしている早川薊(あざみ)。高校を卒業後、貝の密猟で小銭を稼ぎながら日々を過ごしていたが、漁港の監視船の見周りも厳しくなっていく。そんな中、立ち寄ったバー「サンセット」で密猟した魚介類を買い取ってもらいつつアルバイトをすることになるが、時々顔を見せる2人の客と、マスターの浩一の間が気になり始める。
1990年頃の、あの頃の雰囲気をAORのアーティストの名前などから匂わせつつ、流行りから目を背けた(それがまた流行りっぽい)雰囲気で読ませる、青春小説になるのかな?
清水義範などからも感じる流れていくような文章に、時には主語もすっ飛ばすような軽いハイスピード感で、薄い本でもあってあっという間に読み終わってしまうだろう。
中盤からの大きく話が変わっていく動機も舞台設定もいい。でも、何かが残る前に全て終わってしまう感じもあるが、だからといって不満があるわけでもない。
1990年頃の、カラフルとセピア調の流行ったあの頃の、さらにはあわよくば映画化ドラマ化を狙った角川のいやらしさも感じつつ、気分転換にサラッと読めていい一冊なんではないかな。