あらすじ
……「恐怖」に至る一歩手前で感じられる「奇妙」という感覚を描いてみたかった。日常と非日常、あるいは現実と非現実との境界線上に、きわどく存在する奇妙な世界。それを物語ることはぼくにとって、習作の頃から現在に至るまで、常に好奇心を刺激する試みであり続けている。(あとがきより)脳髄の片隅に封印された記憶がふとしたはずみに甦る違和感を描いた「みずひこのこと」をはじめ、掌編小説の名手がデビュー前夜に綴った幻の恐怖譚2編を含む6編を収録。
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Posted by ブクログ
短篇集です
「恐怖小説」などと書いてるけど,原田宗典にたぶんガチの怪奇現象みたいなのは書けない.そういうわけで,「いやな音」はあんまりおもしろくない.「いわくつき」の「いわく」を具体的に読者に想像させないと怖がれない.
原田宗典が書くのはそういうのじゃなくて,もっとドギツイ程の人間っぽさ.一番最初の「ミズヒコのこと」がまさしくそれ.「ポールニザンを残して」なんかは,ムリにホラーとしてのオチを付けなければ,ほんと,サリンジャーの短編みたいですごく好きだった.
最後の「屑籠一杯の剃刀」はいずれも葉介なる人物が年齢を変えて主人公として登場するいくつかの物語.最後の「西洋風林檎ワイン煮」は世にも奇妙な物語で見た.ほかは,正直意味がわからなかった.