あらすじ
鳶・土木業の傍ら非行少年の更生を引き受ける阿万崎家。その長男・郁己は周りへの反発から、ゼネコン勤務の今に至るまで優等生を続けている。だが、少年たちの中にあって不思議と荒んでいない大信とは気が合った。勉強熱心で勘も良く、若くして鳶の職長になった大信は眩しく、安らげる存在――そんな相手から「好きだ」と告げられた郁己は……?
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Posted by ブクログ
ゼネコンに勤める阿万崎郁己。
彼の幼い時の夢は、父と同じように鳶になること。
けれど、どうしても高所恐怖症が克服できず、郁己は自分に他にできることはないか、と考えた末に、今の会社に就職することを決める。
そんな彼の実家は、鳶・土木業の傍らに非行少年の更生を引き受けていた。
郁己が小さい時から、郁己以外にも「不良少年」という少年たちが一緒に暮らし、尚且つ同列に扱われるという環境に、幼い頃は不満を覚え、「決して彼らのようになるまい」という思いから、郁己は優等生を続け、現在の会社に就職した。
けれど、そんな非行少年の中で、一人だけ「荒んでいる」と言いがたい男がいた。
それが大信だった。
大信は、キレると容赦のないところがあるものの、それ以外はとても仲間思いで面倒見もよく、勉強熱心だった。
おまけに勘もよくて、若くして鳶の「職長」になっていた。
郁己はそんな大信に対して憧れを抱いていて、一緒に過ごす時間を楽しみにしていた。
その時間を失いたくないばかりに、「妹と結婚してくれれば」なんて考えていたけれど、あろうことか、大信から「好きだ」と告げられてしまう。
当然、同性を恋愛対象として考えられない郁己は断るけれど――
という話でした。
憧れと劣等感とが、綺麗に混ざっていてすごくいい話でした。
個人的に、この作者さんのデビュー作を読んだことがあるんですけど、その時はまさかこんないい話を書く人になるとは思わなくて、すごっくびっくりしました。
素敵です。
最近、これも含めて何冊か本を読んだんですが、どれも素敵な話になっていて、とってもよかったです。
劣等感を含んだ優しい話を読みたい人にはオススメです。
それ以外の言葉は思いつかない――。