あらすじ
東京湾の海底に、海流発電を利用した海中都市が作られた。海の中で生まれ育ち、青春を謳歌する夏波たち。だが、生まれ故郷には、消滅する運命が待ち受けていた。身を切られるような悲しみと、憧れの先輩への淡い恋。大人へ成長する少女と、過去を追憶する青年の視点から描く、切なくも美しい近未来青春小説。
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Posted by ブクログ
自分が生きてきた町が無くなるというのは、どのような感覚なのだろうか。そのような事態に向き合ったことが無いから、本当のところはわからない。
福島の原発事故で今も住み慣れた町に戻れない人たちがいる。
「全世界を本当に幸せにするエネルギーって、ないんですか?」
作中で主人公が問いかける。
先日、消滅可能性自治体というものが発表され、話題になった。
日本の約1800市町村のうち896自治体が2040年までに消滅するというもの。
問題は見なかったことにしようとする日本のこと。「そんな大げさなこと言って~」と結局、何もしない何もできないだろう。
事故でも事件でも天災でもなく、町が消える。
作中ででてくる海底都市に、作者からのメッセージがあるように受け取った。
かつて、東京湾に海底都市がつくられた。
海洋エネルギーと安価なコンクリートからなる人工都市は究極のエコ都市としてもてはやされた。
そこで生まれ育った木口夏波は高校生活を仲間たちと遊び、剣道部で汗を流し、憧れの先輩と付き合い、青春に過ごしていた。
ある日、インターネットから映画館のスケジュールを印刷しようと立ち寄った教室で、何かプログラムを打ち込んでいるメガネの生徒に出会う。
その生徒、牧村光次郎は海底都市の危険性に気が付いていた。
かつて存在し、すべて海底に沈んでしまった町の追憶が語られる。