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Posted by ブクログ
『ワークシフト』で一躍有名になった、リンダ・グラットン教授の「企業版働き方本」。三つの領域でレジリエンスを高めよというメッセージである。
(領域1)内なるレジリエンスを高める
(領域2)社内外の垣根を取り払う
(領域3)グローバルな問題に立ち向かう
具体的なメッセージの一つひとつは、すでに多くの経営論で紹介されているものも多いが、事例を丁寧に重ねているので理解しやすい。ただ、他の方の書評にもあるように、「レジリエンス」がメインコンセプトでありながら、その意が日本人にポンッと馴染むものにまで昇華されていない感がある。
しかし、「サステナビリティ」というタームがそうであったように、今後の社会のなかで「レジリエンス」とは何であるのか、と考えるヒトが増えていくと、自然と理解が深まっていくのではないかと期待して待つ事とする。
個人的にメモを多く残した項目は下記の通り。
「第四章 精神的活力を高めるため」に、企業はなにができるのか。とくに、一律的な採用から、60歳前後でのリタイヤまで、一本道としてのキャリアラダーを前提とした「就社文化」が、いかに自然なリズムに外れるかを考えさせられる。
また、「第六章 よき隣人としての行動規範」では、地域社会に思いやりを発揮する企業としてのあり方が紹介されている。そのなかで、唯一日本企業の事例として「ヤクルトレディ」が取り上げられている。一見、非生産的に思える「高齢者に話しかけ、手助けをする」という見守り行為を、会社が思いやりのある行動として、正当に評価している」からこそ、ヤクルトレディが命の救出者となった事例が生まれたとしている。
また、地域社会への貢献には、「疲れを残さない働き方」が欠かせないとして、「労働時間が長くなると地域社会における社会的な行動が減る傾向にある」との社会学研究を引き合いに出しつつ、フレキシブルな働き方や疲れを残さない仕事の進め方の奨励も、企業が取り組むべきテーマとしている点も興味深い(BTやデロイトのフレキシブル・ワーク事例を引用)。
「地域住民の即戦力となるスキルを高める」活動について、教育格差の広がるインドで、インフォシス、タタ、ウィプロなどが協力しあい、若年層のスキルギャップを埋めようとする試みは、日本型職能システムの限界を克服する処方箋にも思われた。