【感想・ネタバレ】シーラという子のレビュー

あらすじ

清潔とはいえぬ姿に敵意むきだしの目。シーラは6歳で傷害事件を起こし、トリイの特殊教室に送られてきた。決してしゃべろうとせず泣きもしない。ときに感情を爆発させ大暴れする。だが実は高知能の持ち主で、心身に深い傷を負っていた……虐待に蝕まれた少女が堅く閉ざした心を次第に開いていく姿を描く感動作

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Posted by ブクログ

ネタバレ

虐待された女の子と、教育心理学者の著者(シーラにとっては先生)とのノンフィクションです。
僕が持っているのはおぞましい表紙のハードブック版で、昔父の本棚にあったのを見て以来ずっと気になっていたんです。その頃は絵が怖くて読んではいけない本かと思っていました。今はこういう絵、すごく好きです。
抱きしめたいとかキスしたいとか歌詞とかでよく見る言葉ですけど、実際盛ってるよな~と今まで思っていました。あるいは性欲とか。でもこの本を読んで、人は言葉で相手を癒せないと知った時、抱きしめたくなるものだなあと思いました。
著者と一緒にシーラを抱きしめたくなるシーンが沢山出てきます。「そんなことない」って言ってあげたいけど、シーラにとっては無駄な言葉だとわかるから、せめて側にいることを体温と鼓動とで知らせてあげたくなります。
しかも傷ついた心を癒すだけではなくて、癒してくれた存在と「さよなら」するところまでシーラが成長しているのが感動です。
続編の「タイガーと呼ばれた少女」はまだ読めていないので是非読みたいですね。

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2023年01月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 先日から漫画『こどものじかん』を読んでいてヒロイン・九重りんにどうしても重なって見えたのが、現実世界に存在する本書の主役シーラだった。そして、少し前からどうしても再読したくなって続編の『タイガーと呼ばれた子』とセットで安い古本を買って積んであったので『こどものじかん』のラストを読み終えてすぐに読み始めた。
 この二人のキャラクターの共通点は年齢の近さと髪の長い美しい少女(金髪)であるという外見のイメージだけでなく、大人が怖じ気づくほど大人びた問題児であるところ。野木田先生(ヒロイン九重りんが1年生の時の担任)と九重りんの関係は年齢的にも『シーラという子』そのままのイメージになるので、ずっと教育問題に興味を持っていたという私屋カヲルがこの本を読んでいた可能性は高い。なんにせよどちらか一方の作品を好きになった人には是非もう一方も読んで欲しいというのが個人的な願い。(ただし、シーラの本にエッチなサービスなどは求めないように…)
 
『シーラという子』は人気ノンフィクションシリーズとなったトリイ・ヘイデンの第一作目で世界的ベストセラーである。特殊学級などの教師をしていた著者が在職期間中に出会った特別な子供たちと過ごした忘れ得ない時間を卓越した文章力で再現した記録。中でもこの最初の本はもともと出版予定があったわけではなく、著者がシーラとの思い出を残したいという個人的な気持ちから書き始めたものであり、数年後の彼女との再会を描いた『タイガーと呼ばれた子』とともに他のシリーズ作品より一歩抜きん出たインパクトと感動がある。
 先にも書いた通りこのノンフィクションシリーズの最大の魅力はトリイ・ヘイデンの卓越した文章力だと思う。もちろんそれぞれの本に取上げられている子供たちと過ごしたドラマティックな時間こそ本の命だが、その体験をした著者自らが読み始めた者を心をつかんで離さないまるで良く出来たエンターテイメント小説を思わせるような力強い筆致で描いているのが特徴。またこのシリーズは全て同一の翻訳者であり、作品の面白さは彼女の実力によるところも大きいと言える。
 本書では、著者が普通の学校の一室で主に情緒障害を持つ子供たちを預かる特殊学級を教えていた時期を描いている。その時期すでにサポート人員とともに教えられる限界いっぱいの人数を預かっていたところに、少し前新聞記事になるほどの傷害事件を起こし精神病院送りになる予定だった6歳の少女シーラが期間限定でやってくるところから物語は始まる。
 シーラの生活環境は絵に描いたような貧困の父子家庭であり、さらに母親が彼女を乱暴に置いて弟を連れて出て行ったことがトラウマになっていた。また父親が刑務所に入っていた時期に親戚をたらい回しにされた経験も情緒不安定な性質を作る要因になっていたことも想像された。様々な試行錯誤の末ようやくシーラの心の壁を打ち破って著者が知り得た予想をはるかに上回る真実。傷害事件を起こした問題児童として精神病院に送られようとしていたシーラはIQ180を超える超のつく天才児だった…
 
 自分に大きく依存させてしまうような方法で教育をすることは教師と生徒の信頼を高める反面、別離を辛くする。だからもっと教育者として割り切った姿勢が一般的な中で一匹狼的に自己流の母性愛で治らない子供を治すことを可能にして来たことがトリイ・ヘイデンという教師の個性であり、多くの問題児を預けられる信頼に繋がっていったのだということがこの本を読むと良く分かる。ようするに自分の私生活や感情まで犠牲にして生徒を愛するという大変なことを普通の教師はやらない。それを一体誰が責められるだろうか。
 
 終盤近くまで読んでようやくなぜ『こどものじかん』を読んでこの本を思い出したのかが良く分かった。ヒロインのキャラクターイメージが酷似していることも確かだが、それ以上に彼らを担当する教師の苦悩(教師と言う立場の乗り越えられない壁)がだぶって見えたのだ。もちろん『こどものじかん』の青木先生は新米の男性教師でヒロインの恋愛対象であり、トリイ・ヘイデンは中堅所の女性教師でシーラにとっては母性の象徴という全く異なる関係には違いないが、どちらも自分の教師としての立ち位置を見据えつつも、結果的に他の子供たちに対する以上の愛情をヒロインに与えてしまう。
 ただし、本書のシーラの物語は現実の出来事であり、もしもトリイ・ヘイデンが彼女の担当になって本来の役割以上の行動に出なかったら、あるいは弁護士の彼氏がいなかったら、様々な偶然が噛み合っていなければシーラはもうすでにこの世にいなかったかも知れないという恐ろしい現実に、まさしく“事実は小説より奇なり”という言葉が自然に出てくる。
 
 トリイ・ヘイデンのノンフィクションシリーズの中で唯一後日談として続編『タイガーと呼ばれた子』が書かれたのもシーラだけであり、そこにも彼女との教師と生徒という以上の深いつながりが垣間見える。そして『シーラという子』から7年後の再会を描いた『タイガーと呼ばれた子』の虚しいほどリアルな時の流れに誰もが再び涙する。

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2013年08月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

トリイ=ヘイデンの最初の作品・・だと思う。障害児学級を受け持つ作者の実体験を手記にしたもの。この本を読んでから、かたっぱしから彼女の本を読みまくりました。・・・でもここには登録されてなくて紹介できないのぉ〜〜。書店でさがしてね。

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2009年10月04日

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