あらすじ
ホームレス同然の生活を続け妻子からも捨てられた芥川賞作家、アパートの五階から墜落し両目を失明した市役所職員、その容貌ゆえに四十六年間、一度も男性とつきあったことのない独身OL……人は劣等感にさいなまれ深く傷ついたとき、どのように自尊心をとりもどすのか。読むとなぜか心が軽くあたたかになる、新しいタイプのノンフィクション。
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ボブ・グリーンのようなほっこりするような話だと思ったら、一本一本がずしんとくる。人生の悲哀や遣る瀬無さ、無常で無情が描かれる。社会も厳しい。だけどとても面白い。
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上原隆作品3冊目。
これぞ、僕が書きたいジャンルだとあらためて思う。
普通の人を普通に書く。
それが特別なことであり、全ての命に意味と重みが等しくあることを体現していると思う。
そういう意識を持って生きていきたいし、何かの形でその意志を残したい。
上原作品はその想いを強くさせてくれる。
あと2冊積読している。連続でよもう。
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エッセイとルポルタージュとの間の読み心地という感じがした。事実のみを記す中にも、著者の取材対象者への眼差しや、興味が感じられて、わたしも同じ場所にいて話を聞いている気分になる。生きるのがつらい時や、まさしく「他の人は〇〇しててあんなに進んでるのに私はなんてだめなんだ」って気持ちになった時にこの本のことを思い出したいな。村上龍の解説もよかった。ネガ編集者という仕事も初めて知り、村上龍『共生虫』も気になる。
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メンタルが辛いときにすごく効く。定期的に読み返したい。
色々な人が色々な悩みを抱えて生きているということが、見たまま淡々と書かれているのが良い。こうしたらいいというアドバイスではなくて、そっと寄り添って視野を広げてくれる本だと思う。
この本を読むきっかけになったのが「容貌」という話で、やっぱりこれが一番好き。
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取材型のエッセイ集、視力を失った友人、離婚したシングルファーザー、見習い女優などざまざまな人に話を聞き、悩みや不安にどう向き合って生きているのかを、鮮やかにまとめている。そこから浮かび上がるテーゼは「人は自分でつちかってきたやり方によってのみ、困難な時の自分を支えることができる」(P19)。と、言えるだろう。
苦しんでいる人に寄り添うのは難しい、苦しいのは本人だけではない。それを見ている他人も目を背けたくなり、酷いことに、本人を怠惰だと責めてしまうことだってある。しかし、著者は結論を出すことに焦らず、一人ひとりの物語を包み込むようにして、教訓ではない作品に仕上げている。
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「普通」から外れて 割の合わない境遇に
なってしまった悔しさ 辛さが
淡々とした言葉ににじみ出ます
つまずいた人たちの話だけど
何度でも立ち上がれると思える
みんな 強いですね
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市井の人の日常。
すべての人にドラマがある。
でもそれを取り立てて盛り上げるわけでもなく淡々と。
それが物足りなくもあり、日常らしくてよくもある。
家ついていってもいいですか?を思い出した。
新ジャンルだなと思った。タイトルが良い。
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啄木は、「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ花を買ひ来て妻としたしむ」と読んだが、辛くてどうしようもない時、人はいかに自分を支え、希望を見出すのか。
本書には、さまざまな悩みをもった人が登場しているが、その人たちは置かれた状況の中で精一杯「自分をはげまして生きている」。
私自身も、他人と比べて、他人を羨むことがあるが、本書を読んで悲観してばかりではいけないと思った。正直言って、私は本書の人よりも恵まれている。今に感謝して生きなければならない。
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何度失敗しようが、何度挫折しようが、こうありたいという思いを持ち続けることはできる。
(「うつ病」より)
*****
多分、この文庫本が出てまだ間もない頃。
いつも通る本屋さん、ふと目に付いた本屋さん、いくつかの書店にこの文庫がずらりと並べられていた。
ミーハーなので、すぐ私は手に取る「何?ナニ??」って。
でも、何故か買わず。
月日は流れ、およそ5年、私はこの本を遂に読む。
ジャンルはノンフィクション。
ボブ・グリーンタッチのルポ。
…ぼぶぐりーんとは何ぞや??
アメリカのコラムニスト…などなど、ちょっと調べてみたり。
普段、私はノンフィクションを読むと、色んな意味で考え込んでしまうので、あんまり好きではない。
明るいイメージもなかったりする。
ノンフィクションというと、歴史に残るような事件を取り上げたものだとかが浮かぶけれども、14章から成るこの本の中に出てくる人々はけして新聞に載ってしまうような事件の中心にいたり、誰もが驚きを得てしまうような人生を送っている…というわけではない。
基本的には周りにいてもおかしくない境遇のひとびとだ。
だけれど、みながみな当人たちなりに劇的な日々を送っている。
毎日考えて、悩んで、時には笑って、時には泣いて、生きている。
そういったことがどの章にも顕著に浮き出ていて、何だかほっとしてしまう。
そして、強張らない程度にちょっと気が引き締まる。
自分の毎日が大切で愛おしくなるような、少し切なくもあるような。
不思議な読み心地。
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様々な人からその人生経験の話を聞き、それらまとめた短編集。いわゆる何らかの傷をもった普通の人、を対象として心にグッとくるようなエピソードが多く、改めて世の中には人の数だけその人生があるのだなと思った。
「友がみな我よりえらく見える日は」どこかで聞いたことがあるフレーズと思ったが、石川啄木の一握の砂でした。
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幸せの物語は少ししかないけれども
不幸せの物語はその人の数だけある
まるで
そのままの、せつない短編集でした
生きているということは
こういうこことなのです
自分が暮らす
すぐそばに
それぞれのやりきれなさを抱えて
暮らす人たちの物語り
生きていることに
愛おしさを感じてしまう
それでも
生きていきましょう
と思わず感情移入してしまった
Posted by ブクログ
そこら辺?にいる人を追う、ルポとでも言うか。以前、猪瀬氏の無名人シリーズを読んだが、それよりもより普通の人々(ちょっと違うか)に焦点を当てている。
現在版のルポもあれば読みたい。また、ボブ・グリーン(ジョーダンの本を書いた人かも)の本にも興味が出てきた。
Posted by ブクログ
登場する人はみな、どこに出口があるのかも分からない悲観したくなるような状態で生きている。
登校拒否になった学生の話で、同級生等から「もっと~すべき」等の所謂"常識"という重圧を掛けられるのが辛いという話は考えさせられた。
学校という空間には、「積極的に友達を作らないといけない」というような雰囲気があるのは確かかもしれない。
「学生時代の友達が、社会人になってから貴重な存在になる」みたいな話を学生だった当時に見聞きしたような気がするけれど、実際問題、学生時代の友達だから貴重とかは無いとは思う。
Posted by ブクログ
読書録「友がみな我よりえらく見える日は」4
著者 上原隆
出版 幻冬舎
p220より引用
“ 他人はどのようにして自尊心を回復する
のだろうか?
人が傷つき、自尊心を回復しようともがい
ている時、私の心は強く共鳴する。”
目次から抜粋引用
“友よ
登校拒否
職人気質
別れた男たち
リストラ”
ルポライターである著者による、日々を生
きる一般人の人生の一部を記したノンフィク
ション。過去に他社から刊行された作品の
文庫版。
事故で失明した人から会社の嫌がらせでリ
ストラに追い込まれた人達まで、苦境であっ
ても時分を失わないように生きている人達が
記録されています。
上記の引用は、あとがきでの一節。
気持ちが落ち込んだり、誇りを失いそうに
なった時に、それを取り戻そうとすることが、
人であることの証明の一つ、なのかもしれま
せんね。
題名は石川啄木の「一握の砂」の一節から
とられているようです。石川啄木を読んだ事
がありませんが、その気にさせる良い一節が
引用されています。
ーーーーー
Posted by ブクログ
2017/1/30
書かれたのが結構古い本だったけど、人の思い、やり過ごし方は変わらない。自分の思いに閉じこもらないように。「私よりひどい生活をしている人はいっぱいいる。私はまだずっとまし」
Posted by ブクログ
これはなかなか良いノンフィクションでした…! 著者曰く、劣等感に苛まれた時、人はどのようにしてそれを克服するのか…? みたいなことがテーマに掲げられていますけれども、ここに出てくる人たちはまあ、平凡な人生を歩む人たちばかしですね…。だけれども、平凡の中にもそれぞれ、感ずるところがあったりして決して一筋縄ではいかないんですなぁ…!
ヽ(・ω・)/ズコー
著者は傍観者というか、外野の人間に徹しているような感じですので、決して当人を否定したりなんだり…そういったことをしないので、読み手としてはとても気持ちよく読めました。生きていると色々なことが起こるんですねぇ…みたいな感慨と共に再読することを誓います…さよなラーメン。
ヽ(・ω・)/ズコー
Posted by ブクログ
前半がとても良かった。なんだかよく分からないのだけど、それぞれに孤独で、でもその生を日々保って保って繋いでいる、その生きているというだけのことがなんだか妙に尊く思えたりする、不思議な作品。誰もが劣等感をもって、でも毎日を受け入れていく。ビジネスとか自分らしくとか、なんかそういうことじゃなくて、みんなただ日々生きてるってことも全然あるんだよな、と少しほっとするのかも。
Posted by ブクログ
この本は一体どんな風に読んだら良いのだろう?と思いながら読んで、村上龍さんの解説で「なるほど!」ってなりました。普通の人の普通の人生が淡々と描かれているのに、何故か引き込まれる感じ。面白い!
Posted by ブクログ
タイトル買いした一冊。
20年以上前に書かれたノンフィクション。
積読になってたのを時間潰しに、と特に意味もなくポケットに忍ばせて持ち歩いた。
まさにそんな風にサラリと読んでさらに味が出る。
普通の人の話を普通に書いてある。
何が普通かはわからないけど、それを飾らず弄らずにまんまの形で書いてくれてる。
やはり人間って面白いと思う。
普通に見える人にも物語がある。予想できない物語がある。上からとか下からとかじゃなく、フラットな気持ちで書かれているのが興味深い。
これで元気が出るかと言うと、
〝個人差があります〟って感じだなw
〝芥川賞作家〟
〝テレクラ〟の2篇が好きです。
解説の村上龍も良いねw
Posted by ブクログ
内容はまさに「友が我よりえらくらみえる日は(そうでもないと言う事実を確認して安心しよう)』と言うものでした。
たしかに自尊心の保持には役に立つが、楽しいもんではない。
Posted by ブクログ
なんでもないふつうの人のなんでもない日常をインタビューしているだけだが不思議と和む。自分にちょっとした悩みがあるときなどに読むと、なぜか「みんな悩んでいるんだ。自分も頑張ろう」と思える本。
Posted by ブクログ
世間で【普通】と定義される人生を望む望まずに関わらずはみ出してしまった【市井の人々】へのインタビュー集で、対象者に寄り添った事実だけが淡々と語られる。心地の良い内容では全くないが、タイトル通りの気持ちに苛まれた時に「ひとりじゃない」と思わせてくれる本だ。舞台は90年代だが、2018年の現代は当時以上にレールを踏み外すきっかけがそこらじゅうに溢れていて、そうなれば何を糧にどう生きれば良いのか考えるだけで不安になる。希望を失っても人生が続く限り、現実と折り合いのつく抜け道を見つけて歩いていくしかないのだろう。
Posted by ブクログ
Facebookで絶賛されてたのと、タイトルにぴんときてうんまさにそう思うと思って読んだけど、上質なウシジマくんという感じでした。落ち込んでる人にお勧めかな。
Posted by ブクログ
コラム・ノンフィクションのシリーズ第1弾。
都合により第2弾『喜びは悲しみのあとに』(2004年)の方を先に読んでしまったので、シリーズを一から読んでみることにした。
本書のテーマは、〝人は劣等感にさいなまれ深く傷ついたとき、どのように自尊心をとりもどすのか?〟である。
とくに印象深かったのは、事故で全盲になった市役所職員の話(「友よ」7頁~)と、うつ病で看護士の道を諦めた青年の話(「うつ病」183頁~)。
困難な状況に陥ったとき、真正面から壁に立ち向かえば傷ついて打ちのめされ、何もできなくなってしまうことがある。
だから時には逃げたっていいし、挫折という経験は、自分自身を形成する大切な要素になっていく。
目標を実現する時、それは必ずしも決まった一つの形をとるわけじゃなくて、いろんな形があって良いものなんだ~ということを教わった気がした。
今回も、14人の“普通の人々”による14通りの生き様が深く心に沁みた。
是非、続けて第3弾『雨にぬれても』(2005年)も読んでみたいと思う。