あらすじ
太平洋の赤道直下に浮かぶ、名前のない小さな島。そこには教会があり、神父とわずかな島民が暮らし、訪れるどんな二人も祝福され、結婚式を挙げることができる。同性愛、近親愛、不倫愛、そこではあらゆる愛が許される――二人が、本当に愛し合っている限り。 その島を訪れる、父親と娘。それから姉と弟。ある者は愛の存在証明のために。またある者は不在証明のために。様々なものを見失って渇いた者たちの、いのちと時間がその場所で交錯する。
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Posted by ブクログ
メディアワークス文庫創刊後第一弾の作品の中の一つですね。
装丁に惹かれて、ちらっとあらすじ見て、
これは決まった!と思って購入し、
読んでから、やっぱり買って間違いじゃなかった!と思った作品です。
たぶん読む方によってかなり評価が変わってくる作品かと思いますが
私はとても気に入りました。
話の展開はもちろん、最後のネタあかしも良かったし
私自身この作品のテーマはわりと普段考えることに似ているので
うなずかされるところも気づかされることも多く、
とても印象の強い作品だったなあと思います・・・
何度も読み直してみればみるほど味が出てくる作品だと思うので
読まれる方は一度読んで投げてしまわないでほしいほしいですね・・・
Posted by ブクログ
【あらすじ】
赤道直下に浮かぶ小さな島。そこでは、あらゆる愛が許され、結婚式を挙げることができる。――二人が、本当に愛し合っている限り。
常夏の楽園で結びつけられる、いくつもの、狂おしく痛ましい愛の物語。
お互いの間の愛の存在証明、不在証明を巡る話なのですが、、杉井光ということもあり、ミステリじみた要素もありました。いわゆる叙述トリックを使ってるのですが、3重のトリックになっていてなかなか面白かったです。読み直すと面白いタイプの叙述トリックですね。
しかし、ミステリ的な要素の登場によって、最初思っていた愛を巡る物語から、ずれてしまった為(意図的にずらした)消化不良を感じたのも事実です。
愛というのが何なのか僕にはわからない、傷つけ、傷つけられ、それでも一緒にいる覚悟でしょうか。
杉井光の書く今までのラノベとは少し違うかなという感じ、ラノベ文学の中間みたいなところにある小説だと思います。
杉井光は例え話が上手いね!
文章から少し村上春樹っぽさを感じたり感じなかったり・・・
Posted by ブクログ
愛情と欲望の境界線に悩んだ父、父の背中を只管に追いかけ続けた娘、娘を愛してしまった弟。そして2人の間には子供が…
何だか複雑な人間関係で途中ちょっと混乱しましたが、最後にはすっきりしました。信仰や愛情がテーマなのかな?愛の方はともかく、信仰についての描写には惹かれました。
Posted by ブクログ
読後感はというか、後半の感情としては「やられた!」かもしれない。
自分が思い描いて読み進めている設定が、必ずしも当たっているとはかぎらない。
きもちよく騙された感じがしました。
Posted by ブクログ
非常に小説っぽい小説。
実の娘に欲情してしまう先生も滑稽だし、それに執着する咲希も
ジェラシーを感じつつ自分が代わりと知っている直樹も
そんな愛で育てられた愛もまた、粋な話であった。
近親愛がテーマというだけあって、結ばれてはいけない。
という前提のもどかしさがすごく伝わった。
視点がコロコロ代わり最後まで読まないと筋が通らないのが分かりにくかった。
Posted by ブクログ
愛の物語ではなく、呪われた愛からの解放の物語といった方が、たぶん適切なのではないかと感じました。
太平洋に浮かぶ小さな島に、同性愛であれ、近親愛であれ、不倫愛であれ、結婚式が挙げられる教会がありました。2人が本当に愛し合っていると神が認めれば、教会の奥にある扉が開くと言い伝えられています。
この島を訪れた2組の男女が、この物語の主役です。一方は父と娘で、もう一方は姉と弟です。父は藤岡学といい、周囲の人びとに「先生」と呼ばれている小説家です。娘は藤岡咲希といい、先生とその愛人の間に生まれた娘でした。父は、愛など少しも信じてはいませんが、娘に引きずられるようにこの島にやってきます。父は教会の神父に出会い、教会が、愛してはならない人を愛してしまった人びとの想いを、信仰によって支えていることを教えられます。「神の名において強迫し、快不快の物差しを造りかえること。幸せを再定義すること。それが信仰です」。
しかしそれは、愛を信じない「先生」にとっては真実でも、愛してしまった娘にとっての真実ではありません。「愛していいかどうかを決めるのは愛する側です。愛される側ではない。だから信仰が力を持つんです」。
教会の扉を開けることのできなかった娘は、島から帰り、先生の妻のもとに引き取られて育ちました。彼女は「先生」の愛を求めて、異母弟の直樹とともにふたたび教会を訪れます。島に残された「先生」の手がかりをたどりながら、2人は教会の真実を突き止めます。そして彼らが教会の扉を開けて目にしたのは、「先生」の残した小説と、聖書に刻まれた父と娘の名前でした。父もまた、彼なりの仕方で、娘への愛を再定義し、そこに自分自身をつなぎとめていたのでした。
エピローグでは、咲希と直樹の娘・藤岡愛が教会を一人で訪れ、「愛する人がそこにたしかにいると、感じられるだけでいい」という決断を下すことで、3世代にわたった呪われた愛からの解放を実現することになります。
Posted by ブクログ
最後に時系列がよくわからなくなった。途中までは適度にグロテスクでじとっとした感じがよかっただけに、残念。
『ほんの一ミリグラムの望みは、絶望の千倍つらい』
『幸せを再定義すること。それが信仰です。』
なかなか好きなフレーズを書いてくれてました。
Posted by ブクログ
太平洋の真ん中の名もない島。
そこは同性愛、不倫愛、近親愛などあらゆる愛が許される命と時間が交錯する島。
杉井さんってこんな作品も書けるんだなぁという感想しかないな。
組み立ても上手いし、まとめも上手いんだけど、登場人物に名前が基本なく、感情移入が出来なかった。
でも、そこが味なのかもしれないけど。
Posted by ブクログ
「そうだよ。ほんの一ミリグラムの望みは、絶望の千倍つらい」
医者がすれちがうときに残した最後の言葉が、あたしの胸に深々と突き刺さった。あたしは振り向いて、瞬きだけでくしゃりと潰れてしまいそうな白衣の背中を見送る。坂の下に見えなくなってしまうと、もう一度、真っ白な教会に目をやった。
存在証明の失敗は不在証明にならない。
だから、つらい。
(P.109)
「たとえば神がどれほどの屑でも、他に神がいない以上、私たちはその神を愛するのです。神もそうおっしゃっている。我の他に神なしと。愛していいかどうかを決めるのは愛する側です。愛される側ではない。だから信仰が力を持つんです」
(P.167)
Posted by ブクログ
道ならぬ恋をしている人にとって、自分たちの愛が真であることを証明できるなにかを、求める気持ちは理解できる。
欲情していることも愛だと説く神父と父親のやりとりが、特に印象に残っている。
Posted by ブクログ
ファンタジー?ミステリ?読み進めることにジャンルがわからなくなる。
もちろん、全てが両立もするだろう。けれど一番何が適しているかといえば、何がメインテーマかといえばやはり愛なのだろう。
過去と現在が交わる島。
わずか200ページ足らずでうまく書ききっている。
Posted by ブクログ
もっとこう…幸せな展開溢れる話かと思っていたので、読み始めからずっと「あれ〜?」という気持ちを引きずってました(笑) 後半で「あ、何でこれ気づかなかったんだろ?」という叙述トリックにはややヤラれましたが、何だか色々とモヤッと感が残る話でした。