あらすじ
始まりは、各種メディアに届いた『メルヘン小人地獄』だった。それは、途方もない毒薬をつくった博士と毒薬の材料にされた小人たちの因果を綴る童話であり、ハンナ、ニコラス、フローラの三人が弔い合戦の仇となって、めでたしめでたし、と終わる。やがて童話をなぞるような惨事が出来し、世間の耳目を集めることに。第一の被害者は廃工場の天井から逆さに吊るされ、床に「ハンナはつるそう」という血文字、さらなる犠牲者……。膠着する捜査を後目に、招請に応じた名探偵の推理は? 名探偵史に独自の足跡を印す、斬新な二部構成による本格ミステリ。
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久しぶりに面白かった。しかし、これはミステリというよりむしろ、瀬川という名探偵を描いた物語なのだなと感じた。それを踏まえてもとても素晴らしい作品だと思う。
探偵はただ謎を解くだけであり、それは誰かを幸せにするためじゃない。幸せにするために解けるなら素敵なんだけどね。
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物語は創作童話「メルヘン小人地獄」に関する二つの事件の二部構成。
登場する名探偵の視点で語られる真実や、描写に名探偵があるが故の苦悩や葛藤に強く触れられる。
グロテスクな描写もあるので苦手な人は注意。
物語の最後にドロリとした何かが心に落ちてずしりと残る作品。因果とは何か。
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ミステリとしても小説としても面白い。
一部二部構成になっていて、この二部のために一部があったのかと。
一部の展開から二部は全く想像できませんでしたし、二部の展開もよきです。
お気に入りの一冊になりました。
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二部構成のミステリ。創作童話と見立て事件。
そしてその事件に関わった人々のその後の事件。
鳥肌が止まらない展開とタイトルが響いてくるラストの温度が最高です。
ロジカルな真相もですが、何よりも探偵の物語。
声が出てしまったわね。
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童話『メルヘン小人地獄』をなぞるように発生した連続殺人を名探偵が推理する第一部。第一部は第二部のための大きな伏線であり、名探偵が見せた解決は第二部の悲劇のためのお膳立てである。この結末は予想できない。誰も救われない、名探偵に薔薇を贈りたいと思うのも当然である。また、この作品の結末は、『虚構推理』にも通じるものがあった。
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真実が分かると本当に切ない。胸がつぶされるようだった。
探偵の苦悩も分かり、探偵の印象がガラッと変わる。
話の構成も工夫されており、最初と最後ではちがう話を読んでいたように思える。でもちゃんとつながりがある。面白かった!
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以前から気になっていた本。2部構成になっていて、第一部メルヘン小人地獄は、謎の毒薬「小人地獄」(スゴイ名前だ)をめぐる殺人事件。第二部毒杯パズルは、それから2年後の「小人地獄」が使われた殺人事件。登場人物は重複しており、探偵役も同一人物である。
第二部こそがメインであり、第一部はプロローグにすぎないと思った。ラストは、何ともやるせない。メルヘンで始まり、メルヘンで終わるミステリ。第8回鮎川哲也賞最終候補作だが、受賞してもおかしくない作品だと感じた
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作者の方が原作をされている「スパイラル 推理の絆」という推理漫画が好きだったので、読みました。「小人地獄」という完璧な毒薬をめぐる2篇の話。
1話目はまっとうなロジック推理。1話目も十分に楽しかったが、2話目を読むと、1話目は状況説明の前座にすぎなかったのか!となる。2話目が本編。
スパイラルでも感じたちょっとファンタジー要素(スパイラルにおける「ブレードチルドレン」本書における「小人地獄」という存在)がありつつ、ダークで救いのない話でよかった。救いがないんだけど、物語の余白があるので、自分なりの空想で結末後彼ら・彼女らがどうなっていくのか想像しがいがある。
城平京さんは、主人公(探偵役)を苦しめるのが好きなんだな笑
絶望の先を描写してくれることはないのだけど。
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設定はリアリティの欠片もない、トリックも凡庸、キャラクターの魅力もさほど感じず…
が、それ以上に読ませる力があるストーリーと構成、展開力。
いやはや、これだからミステリーはやめられないです、はい。
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1. はじめに
2部構成の本格ミステリ。
1部では童話に見立てられた猟奇殺人を名探偵が鮮やかに解決する。
そして第2部、二転三転する状況下で名探偵の前に現れるあまりにも美しい真相と悲しい事実に心突かれる作品だった。
2. あらすじ
「小人地獄」という非現実的に作られた毒物を中心に物語が進み、シンプルな殺人事件を奥深く流れて行くような作品で面白かった。
3. 心に残ったポイント・印象的なシーン
物語の冒頭「小人地獄」の製造過程のシーンで多くの生まれたての子どもが犠牲となり作られているシーンは想像に絶えうる内容で中々出会わない設定だと思った。
また「小人地獄」に関わってきた人たちが無惨に殺されるシーンも印象的であった。
4.おすすめしたい読者
ミステリー小説が好きな人で非現実的な物語を求めている人。
5.まとめ(一言で魅力を伝える)
「小人地獄」という薬を中心に多くの人が悩み、迷いう心情、そして事件が起こりそれを解決していく物語が面白かった。
シンプルな構成ながらも多くの複雑な心情描写が多く、物語に没入できる作品であった。
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『虚構推理』の城平京さんの長編デビュー作とのこと。そうと知って読んでいたので、その原型っぽさを噛み締めながら楽しんだ。第一部では、三橋の、一見不甲斐なさそうに見えて意外と冷静で頼れるところや、瀬川の、一見冷徹そうに見えて実は壊れやすい繊細さと優しさを抱えていそうなところなど、キャラクター造形にそれを感じた。
そして第二部、次から次へと新たな〝真相〟が現れる、『ギリシャ棺の秘密』もびっくりの多段推理。解説では、この作品の生まれた経緯の一幕として、作者がどのようにして古今東西の名作ミステリーを吸収していったかも紹介されていたが(必ずしも、昔から好きでたくさん読んでいた、というわけではなかった)、数々の過去作品を踏まえて本作が生まれ、そして『虚構推理』に至るのかと、その道のりも興味深かった。
タイトルは、『エミリーに薔薇を』のオマージュだろうか。本作で「自分はこれまで名探偵をやってきたが」と職業のように「名探偵」という言葉が使われるのは、考えようによっては笑止なのだが、第二部のメインテーマは、推理機械などではない人間としての名探偵の苦悩である。私は名探偵がヒーロー的に大活躍する様を楽しみたくてミステリーを読んでいるタイプのミステリー好きだが、だからこそというか、「責任を感じる」とまでは言わないけれど、こういうテーマの追究には非常に興味がある。『虚構推理』、はじめの二作しかまだ読んでいないので、また続きも追いかけてみようかな。
グロテスク描写もありその内容的にはまあまあショッキングなので、苦手な方は要注意。ただ、私も苦手だけど、グロさで気を引いて面白がらせようという感じがしなかったので、意外と大丈夫だった。
Posted by ブクログ
虚構推理で有名な著者の長編デビュー作。
本作は二部構成となっていて、第一部は完璧な毒薬「小人地獄」と童話を用いた見立て殺人、そして話の後半に現れる名探偵の活躍といった、THE本格ミステリといった様相で面白かったです。
一転して第二部は名探偵、瀬川みゆきが語り手を務め、一部の名探偵の活躍とついになるような、名探偵の苦悩が話しの焦点となっています。
そして、最後に判明するタイトルの意味を知った時、切なく、やりきれない気持ちになりました...
"探偵"を描いた小説として、傑作です。
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のっけから「どういうこと?」となり、引き込まれる。
一部はグロいというか感じたことのない気持ち悪さを感じるのは確か。二部に漂うドロっとした空気感はなんとも…
良くも悪くも心に残ってしまう。
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探偵推理小説に登場する多くの探偵は、いわゆる変人というイメージがありながらも、完璧に推理し犯罪の形を明らかにするため、どこか強い印象がありました。
本書の探偵、瀬川みゆきも群れることなく容姿美人であるため、同じイメージで読み進めましたが違いました。ここまで儚く、辛い気持ちで探偵をしている人はいないでしょう。
この本の前半は正直普通の小説のように感じましたが、後半の瀬川の心情は虚しくも儚くもあり悲しい余韻を残しました。
Posted by ブクログ
登録前
スパイラルの原作者だ〜、と思って購入したのが悪かった。
そういえばスパイラルもラストはバッドエンドよりだったのを読んでから思い出した。
それくらい読後は暗鬱な気分になれる。
内容はとても面白かった。本当に面白かった。
最後まで読んでなるほどこの作品はこのタイトルしかないと納得した。
星4なのはあまりにも読後感が後味悪かったから。でも後味の悪さはいい意味でとてもよかった。
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事前に何の情報もなく読んだのでびっくりしました。
なんとなくタイトルからは、ポップなライトノベルのようなイメージだったのです。
ところが。
すごくグロテスクな話なんですよ。
苦手な方はこの先ご遠慮ください。
私は終始脳内で『こびとづかん』の小人たちが蠢いていて、閉口しました。
「小人地獄」という究極の毒薬を巡る話です。
小人(実際は胎児や赤ん坊)の脳髄をどうにかして作る秘薬で、無味無臭、少量で人を死に至らしめ、その痕跡を残すことがないという究極の毒薬。
その毒薬造りを告発するのが、童話のかたちを借りた『メルヘン小人地獄』。
江戸川乱歩もびっくりなグロテスクな惨殺死体が出てきます。
これ系が苦手な私は、『第一部 メルヘン小人地獄』が本当につらかった。
けれど、『第二部 毒杯パズル』は二転三転する情報に名探偵が翻弄され、面白かったです。
最後まで頑張って読んでよかったな。
でも、再読はできないな。
グロいの苦手。
Posted by ブクログ
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これぞ、という部分もありつつ、ドロドロした若々しさ、歪さも感じられる、エキサイティングなミステリでした。『虚構推理』の初篇で感じた大きな、物語とミステリに対する恐ろしいまでの執着を確かに感じ、けれど探偵像のスタンスは正反対にも見え、それが対立しているわけではないのだなということを教えてくれる。
因果な商売、と云ったりするけれどまさに。 フィクションの探偵の因果に挑みながら、キャラクタ小説としても魅力的でコンゲーム的な要素もある。
ところどころの大正浪漫的な語り口が、好き嫌いはありそうだけれど怪奇探偵的なイメージで悪くなかったです。グロテスクな部分を引き立てるのには良いのだなぁ。ふうむ!
☆3.6
Posted by ブクログ
『虚構推理』シリーズで知られる城平京さんの長編デビュー作だそうである。初版刊行は1998年。『虚構推理』シリーズが刊行される10年以上前である。書店を物色していてたまたま発見し、軽い気持ちで読み始めた。
帯によれば、本作は二部構成。曰く、第一部はただの傑作です。読み始めて早々に覚悟した。こりゃ今どき珍しいほど猟奇的描写がきつい。こうした表面的な派手さが本質ではないことは、苦笑しながら読み進むとわかってくるのだが。
『小人地獄』なる恐怖の毒物が物語のキーワード。効果もさることながら、製造方法が…。この毒物に絡んだ殺人事件が発生し、解決のために招聘された名探偵・瀬川みゆき。愛想はないが傲岸不遜ではない。ストイックな流儀を貫くらしい。
ビシッと解決して第一部は終わり、特に言うことはない。ところが、第二部早々においおいおいおい…何だよこの一族は? 再び招聘された名探偵・瀬川みゆき。名探偵として、苦悩するが妥協はできない。ずっとそうして生きてきたのだから。
本作は、元々は第8回鮎川哲也賞最終候補作だが、前例があるとして受賞は逃している。前例とは、探偵にこのような役回りを担わせることなのか? 確かに、異例ではあるが、こういうパターンもあったような気がしないでもない。
「普通」のミステリーである第一部は、第二部の前振りだったわけである。自分なりに解釈すると、推理よりはストーリー性やロマンス重視か。『名探偵に薔薇を』というタイトル通り、詩的ではあるが、誰も救われない。探偵役自身も。
瀬川みゆきが名探偵として迂闊なのは否めないが、面目を潰すような使い方はどうなのだろうと思わなくもない。こういう構図では、最初から手の打ちようがなかったのだ。名探偵が見抜けなければ、当然自分も見抜けなかった。
どちらかといえばキャラを前面に出している『虚構推理』シリーズとは、毛色が異なるのは確かである。映像化されるとしたら、瀬川みゆきを誰が演じるのか想像は尽きない。いや、舞台向きか。再登場は望み薄なのだろうなあ。
Posted by ブクログ
事件や作品の構成もモチロン面白かったですが、それ以上に探偵さんの苦悩がとても印象的でした。
読み終わって、せめて…… ”名探偵に薔薇を” と思わされました。
一応、グロテスクな描写には注意です。
Posted by ブクログ
3.8
究極に切なすぎる真実に、探偵もののジャンルとしてはかなり苦味が残る感じ。
でもその真実の可能性はまったく思いつかなかった、、、
二転三転する話に翻弄され、圧倒されます。
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて購入。
第一章の小人地獄がめっちゃ面白かった。そんな毒あったらすごい。耽美だけどグロテスク。全体的に鼻につく登場人物だけど、90年代の小説だからしょうがない。
ただ第二章がなー……まず形見とはいえ毒を手に取りやすい場所に置いておくなよ。おとぎ話を語る風のキザな謎解きはちょっと笑ってしまった。
しかしタイトルの意味が最後までわからなかった。なんで薔薇……?百合だったらまだわかるんだけど。
Posted by ブクログ
グロテスクな場面も多々あるので苦手な人にはおすすめできない。二部構成のお話です。小人地獄という毒薬を中心に物語が展開した一部。下世話ですが、グロテスクさに興味をそそられ読み進めました。ある意味万能すぎる毒薬にはリアリティは無いのですが物語なのでそこも楽しめました。そして二部では名探偵の苦悩が描かれています。推理は上手くいかず、ラストも全く救いがない。探偵と言えど人間であり解決できない事柄があるのだと思い知らされます。
Posted by ブクログ
世界観が物語チックで最後のエピソードで想像していない結末でビックリはしたものの、色々と都合のいい設定が多く現実味は無かった。
アニメやドラマ化には向いているかもしれないけど、小説で読むにはもう少しリアリティやひとひねりが欲しい気もする。
最後の展開は捻りすぎていて、今までミスなく解決してきた名探偵が3度も推理をミスするという流れが今までの世界観と矛盾していてすんなり入ってこなかった。
Posted by ブクログ
帯につられて手に取った作品でした。
ミステリですが軽めのミステリ?という印象です。謎解きもあっさりでトリックがすごい!っていう感じではなかったです。
また一部から二部の流れで答えがなんとなくわかってしまう…
そろそろ帯につられて買うのをやめたいです笑
Posted by ブクログ
城平京。第一部と第二部に分かれており、前半はメルヘン小人地獄と呼ばれるおとぎ話に沿って次々に人が殺される
しかし小人地獄と呼ばれる毒薬は本当にあったのだ。殺されたのはその毒薬の開発者に関係のある人たち。容疑者らしき人物が見つかったが、決定的なものがなく捜査は難航する。そこに名探偵があらわれる。
後半はその数年後の話であり、同じ登場人物がまたその毒薬に振り回される話。
名探偵の苦悩については読者それぞれ思うところがあるだろうが、探偵がただの推理装置でなく1人の人間だとしっかりと描写しているのは良かった。