【感想・ネタバレ】ザイルを結ぶときのレビュー

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Posted by ブクログ 2014年04月02日

 新刊で出た数冊のうちのこの一冊。手にとってみたのは、なんでもない、分厚かったから(笑)動機は至って単純。単純なほうが、人生を変えるほどの本にも出会うことがあるから好きである。
買ったその日の晩と翌日の昼には読んでしまったほど引き込まれた。まず、奥山章(おくやまあきら)って誰よ?からはじまる。どん...続きを読むな人かわかんない、何した人かも知らない、ましてやこの表紙の山ってどこかなあ、と明らかに著者はこんな人が手に取るとは予想だにしていなかったと思う。裏表紙を見た瞬間、固まった。47歳でガンを苦に自死した登山家だという。山に登る人が、山以外で死ぬことはあるだろうが、自ら死ぬのか?死ねるのか?よくわからないが、ひきつけられた。
 きっと、この人は哲学をもっている人だろうなあ。
読む前からの第一印象。読後はそれを確信できる内容でした。彼はかなりの文学青年だったというだけあり、文章の力がすごいと思った。そして、後世に残したのは著書以外に多くの映像がある。そこには死に急ぐような時間の流れ方があるように思えた。
 時は1960年代。初の女性隊でマッターホルン北壁挑戦した今井通子さんの話、そのために尽力した人たち、奥山氏が折衝した当時朝日新聞社の記者だったという本多勝一氏の顔も見え、なんだか時代を感じた。
 本題に戻ると、奥山氏の山に対する敬意とそして人間としての哲学がしっかりと織り込まれている内容である。1/3も読まないうちにそれを感じ取ることができる内容だった。山は遊びではなくスポーツであるという言葉に多くのことが含まれている事を理解し対峙するには、読み手も人間力が鍛えられていないと無理なように感じた。このような人が最終的には自ら命を経ったのは、人間としてどう生きるべきかを問うた美学だろう。自分勝手な生き方であるが、それが彼の哲学であるとすれば、強い精神力の持ち主だったと感じ入る。読んで後味がすっきりというか、納得した気分になるのは、不思議である。潔さとはこういうことかもしれない。

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