あらすじ
21世紀の「金融イノベーション」がはじまった! 「国家の後ろ盾がある法定通貨」は、完全無欠ではない。暗号通貨は、「欠点だらけの現行通貨」を革新する可能性を秘めている。暗号がなぜ、おカネになるのか? 電子マネーやクレジットカードとどうちがうのか? 偽造される心配はないのか? ビットコインの背後に潜む数学や暗号技術と、経済へのインパクトをくわしく語る。(ブルーバックス・2014年5月刊)
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ビットコインについて、よく耳にするけれど、詳しいことは分からない。そんな人におすすめの一冊です。
ビットコインについて、「経済」と「情報技術」の両面から説明されています。
また、ニコニコ動画や2ちゃんねるなどにおける「振り込めない詐欺」、Suicaの決済の仕組み、RPGのゲーム内通貨といった身近な例が出てきます。おかげで、ビットコインに親近感が湧いてきます。
最後の章「ビットコインのもうひとつのインパクト」では、ビットコインと数学の価値について語られています。ビットコインの登場によって、数学を学ぶ意義はどう変わったのか。なんで数学を勉強するのかわからない!という学生さんにもおすすめできる一冊です。
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Posted by ブクログ
口述筆記らしい文体。それだけに類書のなかでは飛び抜けて読みやすくなっている。かといって軽い本ではなく十分にタイトル通りの内容だ。
「通貨とは」などと演繹的に説明するのでなく、決済周辺の過去の歴史に触れながらビットコインなどの新しい仮想通貨または暗号通貨の説明をおこなっている。
ビットコインに関係ないようなところばかりメモしてしまったような気がする。が、これらが説明には必要であったと思う。もちろん、本筋の技術的な説明も、RSAとかハッシュ値とかマイニングとか、なされている。自分がすでに理解してるのでメモしてないだけで。
流通の発展とインターネットによる情報の流通のための国際的な決済手段、少額の決済手段が求められ、一方でそれを解決する情報技術ができてきたという節目にいるって感じ。
それが取引所破綻というニュースを経て、本作のようなビットコイン解説本が増えてきているということ。
p89.内国為替と外国為替では、先に内国為替が発展したと思いたくなりますが、中世ヨーロッパでは、国際決済をおこなう外国為替から先に発展しました。
p89.通貨が異なる国の間でおこなう外国為替なら、為替レート(為替相場)のなかに金利をふくめてしまうことで、実態として金利のやりとりが可能でした。だから中世ヨーロッパでは、外国為替が先に発展し、金利を禁止していたキリスト教の影響が強いなかでも、銀行業が成長できたのです。
p92.国際送金では、取引コストが格段に高くなることを覚悟すべきです。日銀ネットの代わりに銀行間の決済を完了するしくみが、公的には用意されていないことが、最大のポイントです。実態として、中央銀行の代わりをしてくれる銀行は存在しています。主にアメリカの大手民間銀行です。
p95.こうした決済ネットワークの事実上の中心にあるのが、アメリカの大手民間銀行であるからこそ、米ドルが基軸通貨として機能しているのです。。世界のいろいろな銀行がアメリカの大手民間銀行を決済の"ハブ"として使っているから、これを変更するのはむずかしいと考えられます。そうして、米ドルの基軸通貨としての地位は維持されているのです。実際に、世界の外国為替市場の取引の約9割は、米ドルを相手とする取引です。
p99.じつは、ビットコインの登場を脅威と感じているはずの企業として、クレジットカード会社があります。少額の国際決済をビットコインが担うようになると、クレジットカード会社の金融ビジネスを侵害するからです。他方で、アメリカの大手民間銀行はさほど困らないでしょう。すでに述べたように、国際決済ネットワークの中心にいるという既得権は、少額の決済についていえば価値の高い既得権ではありません。銀行は「少額の国際決済についてはビットコインに任せてもいい」と考える可能性が高そうです。
p181.ハイエクが通貨に競争原理を導入することを強く主張した背景には、国家と国家組織のひとつである中央銀行に対する不信感がありました。
p193.オランダ議会から貿易を独占する特権を与えられて、1602年に設立されたオランダ東インド会社は、出資金が10年間は据え置かれ、永続的な株式会社として資金を集めました(実際に、江戸時代で鎖国時の日本とも貿易をおこないながら、約200年も営業を続けました)。そして、ライバルであるイギリス東インド会社の10倍以上の資金を集めたといいます。設立時から現代の企業会計の基本である「複式簿記」が採用されており、利益は配当され、株を他人に売ることで出資金が回収できました。また株価は、東インド貿易の利益に影響を与えるニュースに反応して変動するなど、現代の株式会社と株式市場のしくみが、すでにできあがっていた点に驚かされます。不適切な会計処理によって、さほど利益がないのに多額の配当がなされたときもあったようで、このあたりの問題も現代に通じるものです。
p166.このミシシッピバブルがフランス国民に「銀行(banque)」という言葉を忌み嫌わせる原因になったため、フランスの民間銀行の多くは、その名称に「銀行」という言葉を入れていません。
p202.中央銀行は、イギリスとフランスが戦争をくり返し、お互いに国家の債務が通常の方法では処理できなくなった状況を強引に処理しようとして、かなり怪しい人たちによって設立されたものです。発券銀行としての役割を重視する近代的な中央銀行になったあとでも、いざ国家が戦争をするとなれば、戦費調達に協力して、軍人たちが要求するままに紙幣を印刷するはずです。国家が滅べば中央銀行も消えますから仕方がありません。日本銀行にもその前科がありますが、当時(戦時中)の日本銀行を責めても意味がありません。国家が莫大な戦費を投じて戦争をしてしまえば、国家財政は危機に瀕しやすいでしょう。中央銀行はしょせん国家機関であり、戦争を止める権限もありません。
p215.唯一の解決策は、強すぎるドイツがユーロから離脱することだと筆者(吉本)は考えますが、これは現実的ではありません。なお、著名投資家のジョージ・ソロス氏も、ドイツがユーロから離脱するしかないと主張しています。
p232.江戸時代の「国内にタイプが異なる複数通貨が併存して為替レートが変動する通貨制度」は、きわめて優れた通貨制度でした。唯一の、そして最後には致命傷となった欠点は、政府(幕府)が金・銀貨の裏づけとなる価値や、通貨制度そのものを変更できたことです。
p247.過去に安易に救済してしまった経緯があるために、当事者が救済を期待して過大なリスクを安易に負いやすい傾向にあります。その結果、さらなる危機を起こしやすく、かつ、起きたときの危機を大きくしやすくだからまた救済してしまう、という悪循環に陥っています。この点でビットコインは、最初から自己責任が強調されていますし、マウントゴックスの破綻とともに認知度が上がったことは、不幸中の幸いだったのかもしれません。p260.こんな単純化はまちがっているかもしれませんが、理系の人は暗号通貨という通貨携帯のイノベーションに注目しやすく、文系の人は政府から自由な通貨単位というイノベーションに注目しやすいように思われます。
p264.いま起きているのは、膨大な情報を世界中に運ぶ技術の発達が、数十年をかけて、通貨の大進化を促すという現象です。ビットコインのような暗号通貨が登場して普及する歴史的必然性があり、それに応える試みだからこそ、これだけ話題になっているのです。
Posted by ブクログ
「マウントゴックス」の破綻で、いかがわしさを感じるビットコイン。その仕組みやメリットを紹介した入門書。
本書を読んでも、個人的にはビットコインについて理解が不十分である。
・マウントゴックスは「ビットコイン取引所」の1つにしか過ぎない
・ビットコインに管理者はいない
・考案者である「中本哲史(さとし)」の正体は不明である
など、初めて知ることも多かった。知識が増えたことは確かである。
取引情報のブロックを承認し、長いブロックチェーンを作っていくことで信頼性を増すことや、ブロックの末尾についている鍵を計算する作業を行う(マインニングという)こと、マインニングによって報酬を得ることなど、ビットコインの仕組みのアウトラインは理解できた。そして、①国家通貨(中央銀行)への不信、②取引コスト(手数料と手間)の低さによる決済手段としての便利さ、③投機対象としての注目、として、今後もビットコインは普及する可能性を秘めていることも知った。マウントゴックスの破綻によるビットコインの限界というのは、全くの誤解であった言えよう。
一方で、(ア)中央銀行の金融政策はどうなるのか、(イ)暗号通貨の世代交代はどう行われるのか、(ウ)暗号通貨で混乱が生じた時はどうするのか、といった課題も残されている。こういった課題も踏まえ、今後のビットコインの動向に注視していきたい。
なお、本書のサブタイトルにある「『良貨』になりうる3つの理由」が何なのか、個人的には理解できなかった。本書の理解度も不十分であったと言えよう。
Posted by ブクログ
通貨とは何か、ということで経済学者の吉本氏が2章を、ビットコインとは何か、ということで西田氏が2章を書いている。ビットコインの技術的な側面についてはこのうち一章のみで、しかも「ハッシュというのがあって、、、まぁ、詳しくは説明しませんが、、、」というような書きぶりでやや物足りないかも。マウントゴックスがハッカー(?)被害に遭った経緯についても触れられていない。
ビットコインはメンコのようなもので、その価値は仲間うちだけで通用するものだ、という説明は腑に落ちる。
・ビットコインのシステムでは、取引の記録全てがネットワークを流れる。新しい取引が付け加えられると、nonceという数値を用いてハッシュが計算されるが、この際、ハッシュの頭から特定の桁までが全て0になるようなnonceを見つけることが「マイニング」で、25ビットコインが得られる。
これは取引のブロックが更新されるまでの10分の間に解かないといけないが、最高級のPCをもってしても計算しきれない量になっている。
マイニングがインセンティブとなり、取引を承認しようというPCが多く参加することとなる。取引を偽造しようとしても、そういうデータを使ってマイニングしようとする人が偽造グループ以外にいないので、更新が遅れ、承認されないデータになる。