あらすじ
大イビキをかく愛犬チョビ、モンチャンというあだ名の奥さん……定年後やることがないと思っていた日々は思いのほか楽しい。「ヌカ味噌くさい女房のくせにヌカ味噌はへただね」と憎まれ口を叩きながらも、その生活からは小さな幸福が零れ落ちてくる。洒落たユーモアの中に昭和の記憶が香り立つ名エッセイ。「こんなふうに“声”のある文章を書けるひとが、いまどのくらいいるのだろう」と江國香織さんが賛辞を惜しまない、隠れた名エッセイスト、初の文庫化!
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Posted by ブクログ
大正生まれの筆者の、定年退職後のエッセイ集。戦前から戦後まで、東京の情景を軽やかな足取りで振り返っていく。戦時中のエピソードもさらりと織り込まれ、当時の風俗や感覚が、自然と身に染み込んでくるのが不思議だ。
当時の人の当たり前の感覚としての、下ネタ的要素が若干受け付けなかったものの、全体的にすごくお洒落な文体だったのが印象的。江國香織先生の解説も、じわっと胸に広がるものがあった。
筆者の早川氏は、他界した祖父祖母より少し上の世代。じいちゃんばあちゃんが若い頃はこんな世俗だったのかなあ、と想像がふくらんだ。
……長らく積読にしていて、なんで購入したのかもさっぱり忘れてしまっていた一冊なのだが、奥付の年をみてピンときた。20代の、めちゃめちゃ社畜してた頃だ、2014年は。疲弊しきって癒やしを求めて衝動買いしたんだろうなあ……。その時分にすぐに読んでいれば良かったのに、と振り返り思うのだった。
Posted by ブクログ
タイトルと表示画に強く惹かれて手にとった。退職後のはなしは序盤のみで後は昔ばなしで綴られ、中盤以降共感を持てない内容ばかりで退屈に。それでも当時の生々しい時勢が綴られ戦前戦中、戦後の日本に思いを馳せることができた。忠犬ハチ公の尻尾を踏んだり日中戦争に従軍したりと歴史に関わる作者の体験回顧が読め、もはや歴史資料的です。