あらすじ
西暦672年、古代史最大の争乱・壬申の乱が勃発した。この争いは天智天皇亡き後、大海人皇子と大友皇子が皇位継承権を巡り対立、日本を東と西に二分する争いに発展したのは有名だ。ところが、軍事的に劣勢であった大海人皇子が、なぜ勝者となり得たのか。古代史最大の謎がいまだ解明されていないと著者は言う。壬申の乱に隠された歴史の真相を「二つの日本」という視点から解き明かそうというのが本書の試みだ。「二つの日本」に大海人皇子の逆転勝利の秘密を解く鍵を求めたのは著者独自の斬新な視点だ。つまり壬申の乱当時の日本は、西国を支配していたヤマト王朝勢力と、蝦夷と呼ばれ恐れられていた東国の豪族勢力とに二分されていたのだ。大海人皇子が劣勢を見事に覆すことができたのは、東国の有力豪族の後押しが得られたからだった。なぜ大海人皇子は東国勢力の支持が得られたのか。その謎が明かされたとき、読者は驚愕の真相を知ることになるだろう。
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Posted by ブクログ
壬申の亂。
古代史上最大の騷亂とされてゐるが、謎が多く、その全容は捉へがたい。
從來の史觀では「律令制度」の側面から言及された説が多いが、それは結果論ではないかといふ思ひから、私にとつては納得できるものではなかつた。
まず、何故この戰爭が行なはれるに至つたのか、究極の原因がわからない。
そして天武が隱遁してゐた吉野から尾張に向かつたのは何故か。
東國が擧つて天武に味方したのは何故か。
外交政策が推古朝から全方位外交を目指してゐた大和朝廷が、何故天智朝の時にあまりに百濟寄りになるのか、そして何故天武朝になると全方位外交に戻るのか。
孝徳天皇が難波に遷都出來たのは何故なのか。
そもそも蘇我氏の政策が保守的で、中大兄皇子の政策が革新的だつたと云へるのか。
かういつた壬申の亂周邊の謎を、本書は大膽な假説をたてて解き明かしてくれる。
2003年9月16日讀了