あらすじ
本格ミステリーとホラー融合の愉悦 “作家三部作”第一作。後日譚「西日」収録。主人公は“三津田信三”! 奇妙な原稿が、ある新人賞に投稿された。“私”は友人から応募者の名が「三津田信三」だと知らされるが、身に覚えがない。そのころ偶然に探しあてた洋館を舞台に、“私”は怪奇小説を書きはじめるのだが……。本格ミステリーとホラーが見事に融合する三津田信三ワールドの記念すべき最初の作品が遂に登場。
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Posted by ブクログ
現実世界の話と連載小説の話が交互に展開されていくの私にとって新鮮な展開だった。
一家惨殺のあったと噂のある洋館に住みだしたホラー作家が少しずつおかしくなっていく・・最高でした
1ヶ月以上記憶が飛んでいた三津田信三だが、その間彼はどう生活していたのか。
そして何が真実なのか。
ただ洋館に魅入られ、事件繰り返させる要因にされただけなのか、覚えていないだけで事件を起こしていたのか。
綾子がその結論に至ってしまったのも無理もない
そして「西日」で新たに洋館を借りた男はどこにいってしまったのか・・
Posted by ブクログ
処女作とのことだが、三津田らしい作品だった。
本作のジャンルはホラーだが、後発のホラー作品よりもミステリー(刀城言耶シリーズみたいな)に寄っていると感じた。それでいて刀城言耶シリーズを"裏返し"(; "逆さま"ではない)したような感触も受けた。
刀城言耶シリーズが「オカルトに見える事件を推理・論理でミステリーとして解く」のに対して、家シリーズは「オカルトに見える事件を推理・論理でオカルトとして解いた」ように見える。
本書で物語は完結しているように見えるが、あと2冊ある家シリーズの続編はどんな内容なのだろうか。
また、三津田作品のなかに"逆さま"の「ミステリーに見える事件を推理・論理でオカルトで解く」ようなホラー作品はあるのだろうか。
三津田作品としては刀城言耶シリーズだけでなく「誰かの家」のようなオーソドックス(?)な形のホラーをすでに読んでいたので、著者の文章の書き方の多彩さは知っており、本作を楽しむことができたが、もし、本作から時系列に沿って読んでいたのなら、刀城言耶シリーズの2作目くらいで「幅が狭い」として読むのを止めていたかもしれないと思った。
余談だが、カバー表紙の絵はそれだけでも怖いが、読み終わると意味が分かる。読むまでは不気味な女性だと思っていたが、読み終わると女装のようにも見える。不思議。
Posted by ブクログ
刀城幻耶シリーズをついに読もうと思い、その前に手に取った作品。
メタ的な手法を上手く使っており、デビュー作としては非常にレベルが高いように感じる。
あまりホラーを読んだことはないのだが、まさに(?)ホラーといった展開で物語は進み、陵子の正体が明かされるあたりから徐々にミステリ色が強くなってくる。伏線を仕込みながらホラーを描き、そして終わった後にミステリのような解釈を提示しており、ミステリとホラーの融合としてはそこそこ上手くいっているように思う。
だが、正直ホラーの部分はそんなに怖くはなかったし、ミステリ部分だけ見ても弱いし、どうしても勿体ない作品という評価になってしまう。
16年前のイギリスでの事故という伏線はお見事。
途中の乱歩や連城三紀彦に関する談義も楽しめた。
Posted by ブクログ
作品世界と作中作の境界が曖昧になって読者を眩暈させる、という設定自体は真新しいものはないのですが、最後にここまでミステリ色の強いどんでん返しが入ったものは初体験かもしれません。
ただ、この手の話の陥穽になりがちだと思うのですが、読者を積極的に惑乱させようとする書き方は、下手すると若干あからさま過ぎて途中から辟易するんですよね…。本作は、非常にギリギリでした。
静かな夜に読むと、思わず家の中に何かいるんじゃないか、誰かに見られているんじゃないかと息を潜めてしまうような作品です。
単純にミステリ的なオチで締めることもできた本編を、文庫化に際して収録した短編を付けることでホラーに引き戻したやり方に、作者が主張したいスタンスも強く感じられます。
私の名前を騙って新人賞に投稿された奇妙な原稿。その頃引っ越した曰くありげな洋館を舞台に怪奇小説を書き始めた「私」のもとに、ファンだと名乗る女性が訪れる。やがて、小説と現実が入り混じったような奇妙なことが次々と起こるようになるが…。
Posted by ブクログ
いや~怖かった。
引っ越した直後の深夜に一人で読むもんじゃないです。
道具立ては典型的といってもいいくらいで、パーツがそろった段階で全体の絵は大体想像がつくんですが、
それを、登場人物が気づいてないという辺りは、いかにも古典ホラーを踏まえてます。
そっちいっちゃ、ダメだ!的な。
作中作がカットバックで交錯していって、最終的に今日実の境目があいまいになる構成はなかなか。
編集者が主人公で、実在する現役作家の名前が出てきたり、乱歩や正史に関する薀蓄話を盛り込むなど、現実に片足が突っ込んでる分、虚実混沌が怖かったです。
最後も、結局どうなったのか良くわからんまま閉めちゃうし。
ハッピーエンドで青空の見えないホラーって反則。