【感想・ネタバレ】鴎外随筆集のレビュー

あらすじ

幕末、津和野藩の下級武士の子として生まれた森鴎外(1862-1922)は、藩校で漢籍を学び、上京して東大医学部で学んだ。軍医総監に上りつめ、最後は帝室博物館長として没した公的生活と小説家鴎外-封建的イデオロギーと藩籍の素養、近代ヨーロッパ文明と自然科学者の眼が同居したこの作家の息づかいが聞こえる随筆18篇。

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Posted by ブクログ

鴎外という人、この表紙の写真のすかした構えっぷりを見るだけでもとても魅力的な人に見える。
何気ないエッセイふうの小品ばかりなのだけれど、語調さえ今ふうに直せばちっとも抵抗なく受け入れられるようなとても自然な語り口。
知人が亡くなった時宗教色のない葬儀を行ったことへの賞賛など、全く今の問題と重なって直葬なんてちっとも新しいことではないことに気づかされたり。あるいは日本と欧米のどちらかに偏った思考を危ぶんだり。これもとても今的なテーマ。読んでいてちっとも飽きない優れもの。

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2015年05月14日

Posted by ブクログ

2012年の今年は鴎外生誕150年にあたる。文語文は読む感覚を取り戻すのに少々手こずった。鴎外の遺書も収録。

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2012年01月02日

Posted by ブクログ

森鴎外(1862-1922)著。
収録随筆一覧:
?:『サフラン』、『空車』、『礼儀小言』
?:『原田直次郎』、『長谷川辰之助』、『夏目漱石論』、『鼎軒先生』、
?:『我をして九州の富人たらしめば』、『鴎外漁史とは誰ぞ』、『潦休録』、『夜なかに思った事』、『混沌』、『当流比較言語学』、『予が立場』、『文芸の主義』、『俳句というもの』、『歴史そのままと歴史離れ』、『なかじきり』
付:『遺言』
以上の全18篇の随筆集。
なかでも特筆すべきは『予が立場』。これにて鴎外は自身の立場を Resignation に帰するのみと述べる。これは、軍医総監という社会的地位を有する林太郎の立場と、文学人としての鴎外の立場の葛藤の結果、この立場に関して専ら甘受してあきらめるという諦念の思想である。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

「この頃は談話の校正をさせてもらう約束をしても、殆ど全くその約束が履行せられないことになって来ました」(「予が立場」pp.136-137)。
 この後、雑誌『文章世界』(明治39年3月創刊、博文館)のことに触れているが、田山花袋が大正2年3月まで編集していたらしい。「予が立場」の初出は明治42年12月の『新潮』だから、校正の約束を破ったのは田山花袋だったということか。

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2022年11月16日

Posted by ブクログ

まず代表作(?)の『サフラン』『空車』『礼儀小言』が掲載され、続いて人物評が4つ。その後、(主に芸術や論壇に関する)様々な事柄に対する鷗外の所感が自由に綴られる。自分に対する世間の誹謗中傷をのらりくらりとかわしつつ痛烈に批判してみせたり、自分が書いた歴史小説のスタンス(歴史離れしようとおもって書いたのに、結局は歴史に厳密になっちゃうのよねー的な)を書き綴ったり、「何か書けって言われるから書くけど、言っとくけど俺そんなに期待通りの事かかねーよ?」と言ってのけたり、とにかく自由で囚われない印象。思いついたままを気どらずに書きたい、むしろ気取った物言いは自分の領分ではないというスタンスが感じられます。
個人的に気に入ったのは、『りょう休録』の「最近の作品は、過去の作品とは違う表現を提示する事が目的と化していて消極的」という主張と、『夜中に思ったこと』の「キチンと整理整頓された知識より、ごっちゃの混沌とした思考回路の方が大物を生む」という主張。それと、『当流比較的言語学』の「ドイツ語にあって日本語にない言葉がある、それはそういう概念が日本人には欠けているから。例として、streber(糞真面目な努力家、型にはまっている、小者)、bismarck(義憤、けしからん)」。

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2011年01月23日

Posted by ブクログ

 特に印象に残ったものを幾つか。

「礼儀小言」〜鷗外らしい、典拠を示しながら自らの意見を少しずつ展開させていくやり方。

・今はあらゆる古き形式のまさに破棄せられんとする時代である。…人は何故に昔形式に寓してあった意義を保存せんことを謀らぬのであろうか。何故にその弥縫に労する力を移して、古き意義を盛るに堪えたる新たなる形式を求むる上に用いぬのであろうか。(42頁)

「原田直次郎」〜ドイツで鷗外と知己であった洋画家。「うたかたの記」の主人公巨勢のモデルとのこと。世に入れられなかった友への鷗外の心情がかなり前面に出た追悼文。

「鷗外漁史とは誰ぞ」〜かなり斜に構えた感のする。

「歴史そのままと歴史離れ」〜鷗外の歴史小説と言えばあまりに有名な文章。引用文でしか知らなかったので、全文がこんなに短いのかと少し驚いた。しかもほとんどは「山椒大夫」の楽屋裏。

・わたくしは史料を調べて見て、その中に窺われる「自然」を尊重する念を発した。そしてそれを猥に変更するのが厭になった。…わたくしは歴史の「自然」を変更することを嫌って、知らず識らず歴史に縛られた。わたくしはこの縛の下に喘ぎ苦しんだ。そしてこれを脱しようと思った。(146頁)

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2022年10月10日

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