あらすじ
【語注付】青や橙色に輝く星の野原を越え、白く光る銀河の岸をわたり、ジョバンニとカムパネルラを乗せた幻の列車は走る。不思議なかなしみの影をたたえた乗客たちは何者なのか? 列車はどこへ向かおうとするのか? 孤独な魂の旅を抒情豊かにつづる表題作ほか、「風の又三郎」「よだかの星」など、著者の代表的作品を6編収録する。
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Posted by ブクログ
私は宮沢賢治を優しくて綺麗で空想的な世界観だと想像していたのが、実際に読んでみると貧困、虐め、理不尽な死など現実の非情な一面ががっつり描かれていて面食らった。特によだかの星、ひかりの素足、銀河鉄道の夜が顕著で、優しい心をもった主人公が報われずに深い悲しみを背負いっていくのが辛かった。宮沢賢治は優しい人間が報われず、誰も彼もが苦痛を伴う現実世界を苦にして、全ての生物が向かう先の死後の世界を絢爛に描いたのではないかと思った。
そして作中で度々口にされる自己犠牲だが、私は宮沢賢治は自己犠牲を絶対的な善とする事に懐疑的に思っていたのではないかと思った。
銀河鉄道ではカムパネルラが、ひかりの素足では一郎が、よだかの星ではよだかが、何かを守らんと自己犠牲をして躍起になっているが、作中で報われる結果は訪れない。
自己犠牲は特定の者が必死に行なっているのに、世界の不条理や他の利己的な者のせいで献身が身を結ばない。そこから鑑みて、宮沢賢治は自己犠牲に対して懐疑的に思っていたのだと解釈した。自己犠牲を絶対的な善として受理したいのに、世界は自己犠牲で変わるほど優しくない、そんな認識のズレの葛藤を感じた。
世界は自身が思うほど優しくもないし人間も皆優しい人ばかりじゃない。それでもどうにか衆生が救われるような世界があって欲しい。そんな思いから生まれたのが死後の美しい世界線なのかなと思った。
本当に良かった。暗部に沈んだ私の心を掬いあげてくれた傑作。大好きだ。
Posted by ブクログ
大人になって銀河鉄道の夜を見返したが、ジョバンニの夢の情景が非常に見事で、宮沢賢治の描く綺麗な透明感のある世界に引き込まれていきました。
様々な解釈がある小説であり、色んな所に伏線があるので、読むたびに違った一面を見せてくれるのではないかと思います。
また、『やまなし』の独特な世界も面白く、この歳になって宮沢賢治ワールドに魅了されました。
Posted by ブクログ
宮沢賢治の有名どころを集めた物語集。
-やまなし-
「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」
国語の教科書でも出てくるお話。キラキラする水の光が浮かびます。
-いちょうの実-
いちょうの子どもたちがお母さん木から旅立つお話。
-よだかの星-
「いったい僕は、なぜこうみんなにいやがられるのだろう。」
鷹からは名前が似ているのが不愉快だから市蔵にしないと殺してしまうぞと言われたよだかは、遠くの向こうの向こうの空を目指して高く高く飛び立ちました。
-ひかりの素足-
「お父さんおりゃさ新しきもの着せるっていったか。」
「それからお母さん、おりゃのごと湯さ入れで洗うていったか。」
仲の良い兄弟の物語。
-風の又三郎-
どっどど どどうど どどうど
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんもふきとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう
風とともに転校生がやってきました。あれは風の又三郎だ、子どもたちはそう思ったのでした。
-銀河鉄道の夜-
天の川、銀河、キラキラ光る星の川。ジョバンニとカムパネルラは銀河ステーションから列車に乗って、銀河へと飛び立つ。
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有名なのにきちんと読んだことがなかった「銀河鉄道の夜」を読もうと思って購入しました。「やまなし」で懐かしい気持ちになり、いちょうであたたかい気持ちになった後は切なかったです。よ、よだかぁぁ…!青空文庫で小学生の頃に読んだ時以来の再読でしたが、心優しいのに見た目で理不尽な扱いを受けているよだかが健気でした。「光の素足」は初見だったのですが、風の又三郎の声を弟が泣きながら繰り返す時にまさか…と思ったらまさかでした。あーうーうー。「銀河鉄道の夜」は大筋は知っていたものの、改めてしっかり読むと、途中のきょうだいが切なかったです。キラキラキラキラした星の情景がいっそう切なく浮かんでくるようでした。キラキラ、キラキラとした幻想の物語集でした。
Posted by ブクログ
私は宮沢賢治が書くものがたりがとてもこわくて大変好きだ。ひかりの素足はもちろんのこと、銀河鉄道の夜に蔓延るひかりに溢れたおどろおどろしさと言ったら他に無い。あんまりまぶしいひかりの中にひたひたひたひた闇があるのだ。地を這うように漠然とした不安があるのだ。その不安はいつのまにかにそこにあり、いつまでたってもここにあるのだ。だから私は宮沢さんの描くせかいがいつもいつもいつまでだってこわいのだ。
同時収録の「よだかの星」
宮沢さんの作品で何よりも好きな作品です。
※表紙のイラストが登録時と変わってしまっているのが非常に残念です。
文庫でありながら絵本のようなやさしいイラストの表紙がすてきですきだった。
Posted by ブクログ
『カムパネルラ』 (創元SF文庫) 著:山田正紀
を読んで、子供のころに読み終えることができなかった
『風の又三郎』と『銀河鉄道の夜』が収録されている
本書を購入。
『風の又三郎』は当時なぜ読み終えることができなかったのだろうと疑問に思うほど、自然の中の子供の世界の幻想的な世界が詰まっている。
一方、『銀河鉄道の夜』は、二人の少年の星座をめぐる鉄道旅の幻想の世界に、この歳(表紙イラストの作者名で『BADだねヨシオくん!』を即思い出す年代)になって理解できる味わい、死の世界。
『ひかりの素足』なんて兄弟愛の話かとおもいきや、自然の驚異と死後の苦しみ、一方で信仰、現世の苦しみからの解放、そしてそれを深い悲しみのなか受け入れる、死後の世界に救いがあるはず、という姿勢。
で、現在子供たちが悲しい思いをしないよう、希望に満ち溢れ能天気にみんなハッピー、なありもしない理想の世界を描くよう物語に期待されている部分があるように聞くこともあるけど、現実を見て、生きて、苦しみ、自ら、世界の幸せを求めて、もがく、人間としての弱さと強さを、幻想的な世界とともに突き付けて、自ら考え、苦しみ、乗り越える強さを与える物語も、芯のある大人になるために、子供・少年少女には必要なのではないかと思わされる。
Posted by ブクログ
「銀河鉄道の夜」をちゃんと読むのは初めて。まずは「やまなし」、今読んでも不思議で分からないなぁ、という感想。小学校の授業で読んだのが懐かしい。「よだかの星」も高校でプリントで配られて読んだことがあった。「いちょうの実」、「ひかりの素足」、「風の又三郎」は初めて。さて「銀河鉄道の夜」に限らず宮沢賢治の話は読む人それぞれの思い浮かべる風景は違うんだろうなと感じた。それに時代が違うからニュアンスとかが分かりにくいと感じる部分もあった。注釈も多いし。しかしそういう部分は飛ばしてもいいから作品全体の雰囲気を味わえればそれで充分。「銀河鉄道の夜」はジョバンニに自分の子供時代を重ねて感じるものがあり、なにより銀河鉄道の風景を想像力を総動員して思い描くのが楽しい。
また後ろが解説はありがたい。作品をざっくり振り返ることができるし、解釈にもなるほどと感心。