あらすじ
なぜ日本は世界を敵に回す戦争を起こしたのか? 今の日本人は、その意味を正しく捉えられているか? わかりやすい「欺瞞的な説明」を排し、軍事面や外交面にとどまらず、政府や日銀の政策を軸に「あの戦争」を再考。財務出身官僚が、新たな視点で描く戦前日本の「失敗の本質」。
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Posted by ブクログ
なぜ日本は無謀とも言えるあの戦争に向かって行ったのか。軍事面、外交面ではなく経済の観点からの研究は珍しい。
1930年代、高橋是清による経済再建に成功した日本は、NY株式大暴落の余波に苦しむ欧米諸国よりも遥かに繁栄し、植民地への輸出額は英国を抜いて世界一に達していたという。したがって「持たざる国」を欧米が追い込んだ結果の戦争、という考察には不自然さがある。むしろ「強い元老と弱い首相」を規定していた明治憲法下の政府が、元老の引退やテロによる殺害に依って無力化し、軍部の暴走を押さえられなくなったこと、そして軍部の主導で拡大した中国戦線が日本の好調だった経済をも食いつぶしていったことが望まぬ対米開戦へと繋がっていたのだと考えられる。二・二六事件で凶弾に倒れた高橋是清が、誰よりもこの国の落ち行く先を見通していたのかも知れない。無念である。