【感想・ネタバレ】イノベーションのジレンマ 増補改訂版のレビュー

あらすじ

米国の経営手法に革命を起こした「現代の古典」が、増補改訂版として刊行
「偉大な企業はすべてを正しく行うが故に失敗する」
業界トップ企業が、顧客の意見に耳を傾け、新技術に投資しても、なお技術や市場構造の破壊的変化に直面した際、市場のリーダーシップを失ってしまう現象に対し、初めて明確な解を与えたのが本書である。
著者、クリステンセン教授が掲げた「破壊的イノベーションの法則」は、その俄に信じがたい内容にも関わらず、動かしがたいほどに明晰な事例分析により、米国ビジネスマンの間に一大ムーブメントを引き起こした。
この改訂版では、時代の変化に基づく情報更新と破壊的イノベーションに対応するための組織作りについて、新章が追加されている。
【原書タイトル】The Innovator's Dilemma
※本電子書籍は同名出版物を底本とし作成しました。記載内容は印刷出版当時のものです。
※印刷出版再現のため電子書籍としては不要な情報を含んでいる場合があります。
※印刷出版とは異なる表記・表現の場合があります。予めご了承ください。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

クリステンセン教授の代表作。経営書としては古典の領域なんだけど、全然古臭さを感じさせない面白さがやはりあった。クリステンセン教授はホント面白い本を書いてくれるなぁ。

「イノベーションのジレンマ」とはつまり(真に顧客が求める)評価軸の誤解と呼んで良いだろう。今売れている製品がより高品質になっていくことは、決して顧客や市場が求め続ける姿じゃない。技術とは進歩していくものなので、いつかローエンド商品が真に求められる範囲の規格を満たしてしまう。
まぁ難しいのは「市場で求められる製品規格」を決めるのは流動する市場のあり方からしか見えず、関連企業(本の中では「バリュー・ネットワーク」と呼んでいたが)が一意に決められないという部分。市場は出たこと勝負なのに、決められると誤解することが破壊的イノベーションを許してしまうというわけだな。

この理論を消費者目線からみた時がつまり『ジョブ理論』なのだなぁ、と勝手に理解しました。最初からこっちを読んでおけばもちっと理解が深まったかも?
古典でありながら強い説得力をもった一冊。オススメです。

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2023年10月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最強に面白いし、怖い。
「偉大な企業はすべて正しく行うが故に失敗する」
主要顧客や株主の期待に応えて高利益率の製品を提供し続けてるうちに、全く異なる指標で評価される市場で生まれる利益率が低い製品にいつのまにか代替される。

最近だと地銀の勘定系システムのクラウド移行が例かな。
勘定系の評価軸は信頼性や性能。メインフレームが主に利用される。
ただ、スケールや管理の容易さで評価されるシステムにてクラウドが導入され始め、徐々に勘定系システムで要求される信頼性や性能を満たすようになり、メインフレームを代替。

メインフレームを提供する企業は持続的イノベーションを加速
→異なる指標で評価されるローエンド市場で破壊的イノベーションであるクラウドが勃興
→メインフレームは勘定系の評価軸に対して供給過多になり、クラウドが勘定系の需要を満たすようになり代替。
恐ろしいなあ。

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2021年08月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

中小企業の中で組織人として新事業立ち上げに従事している私としては、あまりにも身に覚えがありすぎて、グサグサと胸に刺さる本だった。

「わかる…!!」と噛み締めながら読んでいた。

私の勤める企業が優良企業かどうかはさておき、「古い経営慣行が邪魔をして新しいことへの対応が遅れる」という本書の論旨はあまりにも刺さりすぎた。

私は3人の小さなチームに所属していて、幸い会社の中でもかなり若く、勢いのある人員が揃っているから、モチベーションは高い方だ。

しかし、それでも「なんで会社はそんなことにばかりこだわって動きが遅いんだ!今までの商売と違うんだから、古いやり方に当てはめられるわけないだろ!さっさとやって、失敗しながら直して前に進んでいけばいいじゃないか!」と、はらわたが煮え繰り返ることがこの一年本当に何度もあった。

だから著者の本書での主張は、本心から賛同できる。

読み応えのある本だから簡単に人に勧められないが、同じように組織の中で鬱屈した思いを持つ人には良いかもしれない。

やっぱり何か新しいことに挑戦するときは、ある程度エイヤで一か八か的な姿勢でいかないと、物事は始められないのだろう。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

# メモ

## 破壊的技術の原則

1. 企業は顧客と投資家に資源を依存している
2. 小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない
3. 存在しない市場は分析できない
4. 組織の能力は無能力の決定的要因になる
5. 技術の供給は市場の需要と等しいとは限らない

優良企業は、優れているがゆえに失敗する。

## イノベーションに気付いたときには遅すぎる

「新事業をやらないと」というのは多くの会社が考えることだが、「そんな小さい売上では会社は支えられない」と言われることも、あるあるだろう。

会社の新事業立ち上げに関わっている私自身、首がもげるほど頷きたくなった。

アイデアは出たが、市場が大きくなるまで待たないとと言われる。しかし大きくなった頃には競合がうじゃうじゃいて、もう勝てない。

誰もがサボっているわけではないし、知見もあるが、今のビジネスのお客さんをさらに満足させようとすればするほど、業界をひっくり返すような新しい技術には見向きしなくなってしまう。

顧客の声に応えるよう積極的に投資することは企業が成功するために必要なことであり、真っ当なことだ。しかし、そうするあまり小さな市場には目がいかなくなり、イノベーションの種を見逃してしまう。

2001年に書かれた本書の中で「電気自動車は破壊的技術」とあり、確かに今はその通りになった。

「大切なのは、そうした破壊的技術の種を見つけても馬鹿にせず真剣に受け止めて、それでいて現在の顧客をないがしろにしないこと」と著者は言う。

未来と現在、両方とも大事ということだろう。

## 企業がイノベーションを見落とすわけ

企業は通常、より収益性の高い(粗利率の高い)市場へ移動したがる。それが健全な企業としての活動だ。

しかしそうするあまり、「収益性は悪いけど、将来業界を改変するようなイノベーションの種」を見落とすことがある、というのが本書の主張。

上位市場には移動するが、下位市場へは移動しないという。

例えば、鉄くずを再利用して鉄鋼を作るミニミルという技術は、低コストながら大手製鉄所は当時見向きもしなかった。

収益性がないからだ。

当時のミニミルは鉄筋くらいにしか使えず、鉄筋は利益率が低くて魅力の薄い業界だったので、大手は手が引けてほっとしたくらいだったらしい。

一方で、ミニマルはその後成長し、どんどん上位市場に食い込んでいく。

さらに業界に新しい技術が現れるとミニミルを扱う会社がそれを取り入れ、大手が安定を目指して高収益事業に邁進している間に、シェアを広げていった。

たしかに、組織人として働いていると納得感がある。

仕事が軌道に乗ってくると、「もっと売ろう」と攻勢をかける。そして経費も増える。なので、より大きな市場、収益性の高い市場を目指すことになる。

そして、新しいけど小さな市場に参入するためには、たくさんの根拠を必要とするようになってしまい、腰が重くなる。

私の勤める会社でもまさにそう(大企業じゃないけど)。

これまでの既存の商売があるから、それを伸ばそうと試みる。その活動も大切なのだが、同時に、「新しい事業の種」を植えて育てることもやっていかないといけない。

種は植えてすぐに果実がなることはないのだから、早く植えて大事に育てていかなければならない。

## 既存の顧客による束縛

ハードディスク業界の破壊的技術は「小型化」、掘削機業界の破壊的技術は「油圧式」だった。

すごい速度で成長していたハードディスク業界の破壊的技術は「小型化」だったと後で分かるが、その時にそれが業界を塗り替えるほどと思った人は少なかっただろう。

カズオイシグロの小説『日の名残り』でもスティーブンスが「ターニングポイントは後になって気がつくもの」と言っていたが、まさにそうだ。

その時々の変化を捉えて、「これ、すごいんじゃない?」と気がついた少数の人はチャンスを掴める。

ハードディスク業界の主力企業たちも、小さな製品を作る技術はあった。なのに戦略的決定が遅れて負けた。

それは、『既存の顧客による束縛』があったからだと著者は言う。

「新しい技術があるらしいけど、うちのお客さんが求めるものをちゃんと作り続けなきゃ」と頑張っているうちに、気付いた頃には業界が塗り変わっていた。

既存事業が成功しているからといって、日々世の中に生まれる新市場の種を見下し、無視していたら、いつか足元をすくわれるということだろう。

## 新しい技術を市場に押し込むのでなく、評価される新しい市場を見つける

ハードディスクを小型化する技術を見つけたら、それの用途を新たに生み出す。

油圧式を見つけたら、それの用途を新たに生み出す。

そうして破壊的技術は市場に出てくる。そして出てきた時には、大企業では狙えない、狙いたくない小さな市場であって、対応が遅くなる。

重要なのは「この技術が受け入れられる市場はどこだ」とターゲットを探す姿勢。

マーケットイン、プロダクトアウトという言葉があるが、そもそも役に立つかどうかも怪しい「新技術の種」のプロジェクトを前進させるのは、プロダクトアウト以外の何物でもない。

「これはすごい技術のはず!」と、ある程度一か八かになるだろう。

「評価される場所を見つけてそこに行く」というのは、自分のキャリアを設計するのも同じだ。

自分の持っているポテンシャルを評価してもらえる場所を探して移動することで、評価も満足度も大きく違うだろう。

## マネージャーによる「ふるい分け」

「ほとんどのイノベーション案は組織の深い場所から生まれるが、その中から何をどう上に通すかは、中間管理職であるマネージャーが行うことが多い。そして、マネージャーは自分が通したプロジェクトが失敗することを恐れるため、確実に市場の需要があるであろうと思われるプロジェクトを支援したがる。どのプロジェクトを上層部へ持ち込むか、どのプロジェクトを放っておくかは、中間部のマネージャーが決めている。」

そう著者は言う。

これは、組織人に私にとっても身に覚えのありすぎる話だ。

みな、それぞれのポジションの仕事を全うしようとするあまり、大胆な行動はとりづらくなるのかもしれない。

下部の人員は「ふるい」にかかるようなアイデアを出すことはもちろん大事だが、「ふるいの目の細かさはマネージャー次第」というのがやきもきするポイントだろう。

会社の誰もやったことのないアイデアや、さらには市場でも新しいアイデアは、どのくらいの効果があるのか一か八かに思えるので、上司は安牌を取りたがる、というのも理解できる。

しかしそれらを放っておき、現状維持を選択することは、衰退する選択肢を選ぶことと同義である場合があることも、分かっておかないといけない。

よく投資の世界では「現状維持は実質損している」といったことが聞かれる。

投資を恐れて利率の低い銀行口座に貯金しているだけでは増えず、物価をはじめ支出は増え続けているので、実際は貯金の価値は目減りしている、という話。

ビジネスの世界でも同様だが、そのバランスを取ることが、経営者のセンスの問われるところだろう。

## 小さい組織に任せる

「大企業では小さな新市場に投資しにくいので、小さな組織を用意して任せる方が良い」というのが本書の主張。

大企業から見て小さな新市場は魅力的じゃないので、積極的に関わる人も少なければ、得られる売上も本業に比べてとても小さく、「それで事業としてやっていけるの?」となるだろう。

だから、小さな売上でも十分な小さな組織を作って任せる方が進むということかと理解した。

小さな組織なら、小さな売上でもモチベーションを高く保てる。

また、「人にとってプロジェクトが意味を持つのは、それが重要な顧客のニーズに応え、組織に貢献し、昇格の可能性を高める場合」と著者は言う。

「それやる意味あるの?」的状況のプロジェクトのマネージャーは、投資してもらうために社内を駆け回ることに労力を持って行かれてしまう、とも著者は言っており、これまた頭が飛んでいきそうなほど頷いた。

そんな意味でも、小さな組織でモチベーション高く進める方が良いのだろう。

## 不可知論的マーケティング

「破壊的イノベーションに直面したとき、マネージャーが打ち出す計画と戦略は、実行するためのものというより、学習し発見するための計画であるべき」と著者は言う。

市場の将来性を分かっていると思い込んでいるマネージャーより、不透明性を認識しているマネージャーの方が、柔軟に対応できる。

こんなとき、誰かが市場の輪郭をはっきりさせるまで待つという姿勢では乗り遅れる。

やったことのないもの、見たことのないものを、既存の社内の仕組みに無理に当てはめようとしても上手くいかないということかと理解した。

市場の未来は誰にも分からないのだからトラブルは起きるものだし、何が起きても修正できるように余力を残した上で計画を進めるべき。

## 変化に対応できる組織か否か

「変化に直面した組織を率いる経営者は、資源が確保できるか、成功するためのプロセスや価値基準があるかを検討しないといけない。慣例的に使ってきたプロセスは新しい問題に適しているか?」と著者は言う。

慣例の力は強い。

「うちのやり方はこうだから」「いつもこうしてきたから」と既存の方法に捉われているうちに、世の中はどんどん変わっていく。

だからその場合は、別の組織を買収するか、独立した組織をスパンアウトして作るかする方がいいというのが本書の主張。

しかし気をつけるのは、買収した企業の価値基準を親会社に合わせようとさせること。

それをすると、結局同じように変化に腰が重くなる。

## 性能の供給過剰

性能の向上がある一定のレベルに達すると、顧客は別の価値基準に価値を見出すようになる。

ハードディスクなら、処理速度が各社変わらなくなってきたら、次は小さくて軽いものに価値を見出す。

機能性、信頼性、利便性と、他社商品と差別化できなくなったら、もう価格しか見られない、というのが本書の主張。

作り手、売り手からすると「他とは違うのにお客さんは値段しか見てくれない!」と憤るかもしれないが、他者から見たらもう差はほとんど感じられない、ということは悲しいけどありそうだ。

私の仕事に関する家具について言えば、「機能性」はもう差はないだろう。「利便性」についてはLOWYAが「1台7役!」みたいな家具を販売しているが、あれに当たるか。「利便性」はECだろう。さらに「価格」も安いときた。こう考えると、LOWYAはめちゃくちゃ強い。

だから、たぶん「ズラす」のが良いのだろうと私は思う。例えば「家具」というジャンルをもっと細かく分けて、土俵を変えて戦う。

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2025年09月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大規模な会社であればあるほど周りの目が気になり、圧倒的な躍進ができない。

というような内容
勉強になりました。

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2021年08月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

評価はものすごく高いけれど
大企業のお話なので、あまり響く箇所なく。
中小企業は当たり前にやっていることが
書かれていると思う。
忠実に翻訳されていると思うが
もっと読みやすくしても良い。
ハードディスクの大きさをインチで語られても
頭に入らない。そこは翻訳しないのか。
大学生が読むにはちょうどよいかも。

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2023年01月03日

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