あらすじ
予言者、野坂昭如の東京昨日今日明日。うつつか幻か、郊外の小さな公園のベンチに坐る場所柄につかわしくない粧いの女、その数奇な身の上話に耳をかたむける、これもまた身をもてあまし気味の私。時は春。東京にはさまざまな世間があるのだ。「家庭篇」から始まり告白的「私篇」、そして巨大都市・東京の行末を暗示する「山椒媼」まで饒舌かつ猛スピードで語られる14の断章。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
今から3-40年も前の短編なんだけど、びっくりするほど今の東京。滑らかに流れるような文体、あめりかひじきなどでも思ったけど力強くて読みやすくて良い。
Posted by ブクログ
1988年から1989年にかけて『小説現代』に連載された連作短編シリーズ。バブル景気のまっただ中、そして昭和から平成へと年号が変ったまさにその時に連載されていた作品。野坂作品でよく出てくるテーマを扱いながらどこか冷めて漂白されたような体温のない雰囲気が当時の世相を色濃く反映しているような気がする。「純愛篇」の乙女的なロマンチシズム漂うオチと「隅田川篇」の意表を突く着地点と物悲しい余韻が個人的にはお気に入り。