あらすじ
酒田、雄大な庄内平野の最上川河口に位置する街には、世界に誇れるものがあった。淀川長治や荻昌弘が羨んだという映画館(グリーン・ハウス)。そして開高健や丸谷才一、土門拳が愛したという料理店(ル・ポットフー)。なんとそれらは1人の男――佐藤久一がつくったものだった。酒田大火の火元となった映画館が彼の波乱に富んだ人生を象徴する。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
極端にいえば、酒田に居たとあるボンボンの話。もう少し踏み込んで言えば、「地方文化を維持し育むための手法(昭和版)」。
突き詰めれば「湯水のごとく金を使えば、地方であってもナンバーワンを取れる」という話。映画の話でも、料理の話でも、ましてや経済・経営の話でもない。正直、こんな人が親類にいたら心が安まらない。
ただ…こういうボンボン的な立場の人が、軽薄な夢と希望を語り行動しなければ地方には文化は残らないのも事実で。田舎の現状を見ていると、「ボンボンが夢を見られた昭和時代は、まだまだ幸せな時代だったのかな?」と思うところがある。
地方のボンボンが夢を見ず、夢と引き替えに立てたテナントビルに入った全国ブランドチェーンはそこそこのところで撤退する。残るのは絶望だけで、だからこそ気持ちよく人は立ち去れる。それが今の現実なのかな?と。
いや…いまでも田舎で夢を見てる人はいるんだろうけど…それを発掘し現金化するのは、炭鉱を掘り当てるより難しいんだろうな、とそんなことを思ったりしてました。
「寂れる地方都市」の現状を、ノスタルジー込みで客観的に見たい、と思う人にはなかなか面白い一冊。