あらすじ
最大の事業仕分け、GHQによる官庁中の官庁・内務省と巨大な人員を擁する陸軍省、海軍省の解体。
だが官僚たちはしたたかだった。名とかたちを変え組織は残った。
<目次>
最後の陸相・下村定の未公開手記
陸軍省消滅と下村陸相の国会での謝罪演説
陸軍最後の日──昭和天皇と下村陸相の涙
陸軍最後の日の皇居内──侍従武官の証言
「公」のためと「私」のための自決
なぜ俺が敗戦国の軍使に──河辺虎四郎の憂鬱
敗戦は「我等軍人の罪」──自決したO大佐の真摯な反省
“官庁中の官庁”内務省解体を目指すGHQ
内務省解体とGHQ内部の確執
“責任ある政府”──ケーディスの理想と内務省解体
解体目前の内務官僚たちの心中──鈴木俊一の証言
国家警察と自治体警察──警察改革を巡る攻防
警察法改正──ゆきづまったアメリカ型警察制度
内務省終焉──真に解体すべきは悪しき官僚制度
海軍は開戦に反対していたという“神話”の誕生
最後の海相・米内光政の訓示に込められた思い
米内光政の見事な出処進退と消えた海軍の戦争責任
戦後、一切の公職に就かなかった井上成美の生き方
「三笠」艦上から海軍解体の日を思う
特攻作戦の責任と海軍将官の自決
海軍という理想郷のなかで消えた「勇断」
警察予備隊創設と旧内務官僚と旧軍人の対立
自衛隊の基礎を作った十一人の旧軍佐官クラスの任用
そして官僚機構はかたちを変え、残った
あとがきに代えて──戦前、戦後とも責任をとることのない官僚組織
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Posted by ブクログ
一番身近な時代でもあるはずなのに、戦国時代や幕末などメジャーな時代以上に資料も揃っているはずなのになかなかその真相がわからない『昭和』。
正直、学生時代から自分が生きている時代であった昭和については関心が持てなかった。
歴史の授業でも最後の最後に飛ばすくらいで終わっていた時代。
今思うと、あえて飛ばされてたのかと勘ぐってしまう面もなきにしもあらずであるが。
そんな『昭和』にも年をとるにつれて興味が沸いてくるようになった。
なぜ、昭和に興味が持てないのだろうか?明治維新までの歴史というものには、その時代時代の『役者』に焦点が当たっているものの、昭和という時代を説明するにあたり、役者よりも歴史的事象に終始しており、役者の顔が見えてこない、役者を教えられてこなかったからではないか?
そんな疑問から徐々に昭和モノを読むようになってきたのである。
本書は主に戦争を主導してきたといわれる陸軍省、海軍省、内務省という3つの巨大官庁が、太平洋戦争後にどのように解体されていったか、または綿々と今の時代にも影響をもたらしてきたのかということが、当時のそれぞれの立場の戦争指導者や士官の行動を元に書かれている。
そういう面では役者の顔がハッキリしており、あの時代をわかりやすく理解できる。
陸軍がなぜ戦後『悪』の権化のように国民から思われるようになったのか、それに比べてそれほどの悪いイメージはなくむしろ戦争反対派として、なぜ海軍は『善』のイメージで捉えられるようになったのか?
明治以降近代化の中心をなした内務省はなぜ解体させられるにいたったのか?
等々、GHQの施策による戦前の体制の解体がそれぞれの組織戦略の有りや無しかで三様の末路を辿った経緯がわかりやすくまとめられている。
惜しむらくは、本書はあくまで3官庁の解体の話なのでしょうがないと思うが、GHQ側の思惑、特に日本の占領施策でG2とGSの対立があった等々、米国側の思惑ももっと取り上げていただきたかった。