あらすじ
聴く、届く、遇う、迎え入れる、 触わる、享ける、応える……
哲学を社会につなげる 新しい試み
第3回桑原武夫学芸賞受賞作
わたしは、哲学を〈臨床〉という社会のベッドサイドに置いてみて、そのことで哲学の、この時代、この社会における〈試み〉としての可能性を探ってみたいとおもうのだが、そのときに、哲学がこれまで必死になって試みてきたような「語る」――世界のことわりを探る、言を分ける、分析する――ではなく、むしろ「聴く」ことをこととするような哲学のありかたというものが、ほのかに見えてくるのではないかとおもっている。
本文より
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Posted by ブクログ
臨床哲学の第一人者鷲田清一氏による臨床哲学の入門書にふさわしい一冊。
他人の話を「聴く」行為はまさに「他人を受け入れる」ことだと冒頭では述べられている。
当然の行為である「聴く」ことを哲学的行為と定義し
聴く側の自己を創成する上で大きな意味を持っていると本書では指摘する。
ことばを受け止めることこそが、他者の理解に繋がっていく。
「聴く」行為の主体者になるよう語りかけてくる。
鷲田の論考を読み解く際に、掲載されている植田正治のモノクロ写真は本文の雰囲気を一層醸し出す。
哲学的視点から「聴く」ことの意味を明瞭にし、
一人一人の読者が他者とのより関係を構築する際のヒントを提示する。
哲学という学問の可能性を、また一つ広げたに違いない。
ネットが発達し、コミュニケーションが重視される世の中で、疎かにしやすい「聴く」行為。
本書を読み終えた時には、聴くことの重要性に気付かされることだろう。