【感想・ネタバレ】太陽の季節のレビュー

あらすじ

戦後の青春はこの1冊から始まった。ドラマ化された表題作のほか、伝説の名作「乾いた花」全面改稿決定版、あとがき「青春のピュリティ」、「処刑の部屋」、「完全な遊戯」、「ファンキー・ジャンプ」を収録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

第1回文學界新人賞受賞作にして、第34回芥川賞受賞作。

表題作の「太陽の季節」を含め、「処刑の部屋」、「完全な遊戯」、「乾いた花」とどれも退廃的な若者の姿が描かれている(「ファンキー・ジャンプ」は、内容がよく分からず途中で読み止めてしまったため不明)。

表題作「太陽の季節」は津川竜哉と英子のboy meets girlだが、英子を玩具同然に扱うその関係は所謂純愛では当然ない。
だが最後、竜哉の「スポーツマンとしての彼の妙な気取り」で死んでしまった英子に対して、「竜哉の一番好きだった、いくら叩いても壊れない玩具を永久に奪った」と感じる竜哉の心境には、英子への愛着が感じられる。もちろんそこには英子の人権を貴ぶ意識は微塵もないが、竜哉にとっては紛うことなく愛であったのではないだろうか。

「処刑の部屋」は、克己の良治に対する失望と期待が、不確定性(良治が闘わなかったのは、腑抜けからくるものなのか、竹島のピストルのせいなのかという不確定性)を交えて描かれている点が面白かった。その後に壮絶なリンチが始まるが、これ以降はグロテスクな描写に圧倒されてしまった(のであまりちゃんと読み込めてないかもしれない)。

「完全な遊戯」はとうとう殺したかと思わせる一作。
精神疾患を抱えた女を犯し、女郎屋へ売り飛ばそうとした挙句に崖から落とすストーリーには共感も同情も全くできない。だが、「完全な遊戯」という題名にもあるように、これが男たちの間で100%遊戯であるという冷めた認識で統一されている。この点において、軽はずみで猟奇的な殺人が横行している現代で一読の価値があるように思える。

「乾いた花」は個人的には一番好きな作品だった。
村木は出所後の何も変わらぬ娑婆の生活に退屈を覚え、冴子は何不自由のない生活に退屈を覚えていて、その退屈を通じて二人はつながっていく。人には「何者かになりたい」という思いや「自分が世界をかき混ぜていく」という思いがあるものだが、彼らはその思いが大きすぎて飼い慣らせないのではないだろうか。晴らせぬ思いを抱えたまま生き生きと生きられずに腐りそうになるのを、大きな賭けで何とか防腐する。私にはその生き方がどこか愛おしく感じられた。
冴子の言う「人間て、なんでもっとまともな方法で、本当に生きられないんだろ」が正しく彼らの渇きなのだ。

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2022年07月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

一度に読むにはかなりきつい話ばかり。
「完全な遊戯」
女子高生コンクリ殺人を彷彿とさせるような話で、事件が起きる前から、石原は世の中の動きを予見していたのではないか、と言われているようだが、私としては、報道されない、あるいは発覚しないだけで当時からこういう事件はあっていて、石原は噂などでそれを耳にしてインスピレーションを得ていたのではないかと、ふと思った。
「ファンキー・ジャンプ」
さっぱり意味がわからず途中から村上龍を読んでいる錯覚に陥る(同氏の作品にもたまにこういうジャンキーなやつあるので)。
「乾いた花」
後味の悪い話ばかりで、もう読み進めるのが苦痛だったが、ラストのこの作品がとても良くて救われた。
唯一女性を一個の人間として見ている男が主人公なのだ。
結局どの登場人物もろくなことにはならないのだが、この本に収録されているとなにか爽やかささえ感じるのだから不思議。この話は手元に置いておきたいと思った。
『―要するに私達には何かがかけているのだ。いや、それは当節の人間が多かれ少なかれ、そうなのかも知れない。私たちはただそれを急いで焦って埋めようとしただけだ。それ自体をまともでない、といえばいえもしようが。』

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2018年03月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

やっぱり面白い。
「典型的な青春」がストレートに、嫌味なく、描かれている。
ストーリーとしても、結末まで目を離せない展開が好き。

他に収録されている「処刑の部屋」や「乾いた花」などなど、
どれも古さは感じるにも関わらず、実に刺激的である。

ちなみに、「青春」という概念そのものが古いのだから、
青春」しか描いていない作品が古く感じるのは当たり前のことで、
まったくマイナス要素にはならない。
着物を見て「ダサい」と言ったらおかしいのと同じだ。

また暴力にも、何かしらふさわしい意味がついているところが、いい。
肉体がどう壊れようと、確固たる意志がある勇姿には、かなりの説得力がある。

青春をまるごと小説につめこみ、男と女の関係も面白く動く。
そんな魅力がいっぱいの作品で、しかも読みやすい点もうれしかった。

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2012年01月28日

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