あらすじ
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それは、なんともふしぎなながめだった。弟は、両方の腕をくみ、ふうせん売りのおじさんのことを、にらみつけていた…。「こころ」をうたいつづける歌手・さだまさしが書いた初めての児童文学。
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Posted by ブクログ
まさしが童話?ふうせんのはか?どこかで聞いたことあるなあ。ふうせんのはか---そうか,あのお祭りの話だ。泣いた赤鬼の話だ。ピンときた。お祭りに行ったとき,2人のお兄ちゃんが小さな妹のため,ふうせんを買ってあげる。妹はうれしくてはしゃいで,でもいつしか疲れて,お兄ちゃんの背中で眠ってしまう。家に着いたとき,ふうせんはもう天にのぼってしまった後だった。泣きじゃくる妹・・・。
この話のいいところは,ここから後だ。わんぱくでやさしいまさしの弟は,ぷっといなくなる。そう,ふうせんを手に入れるためだ。でも彼にはお金がない。弟は,腕を組み,ふうせん売りのおじさんをにらみつける。「さっき買ったふうせんがとんでいっちまったからもうひとつくれ。」と。「あれはおじさんのむすびかたが悪かったから,とんでいった。もうひとつくれ。」と。ものすごい顔で。そんなところにまさしとお父さんがやってくる。
妹思いの弟の願いはかなった。家に帰って,妹にふうせんを渡すと妹は大喜びした。ふうせんを抱いて寝るほど。それがいけなかったのか,それとも寿命だったのか,次の日ふうせんはしぼんでしまう。それを見たときの弟のショック。妹以上に傷つく弟。しばらくのち,まさしはある光景を見る。弟が,人前ではめったに涙を見せない弟が,こっそりふうせんのはかをつくりながら,・・・。
何でも買える時代じゃなかった。1日10円のこづかいの中で生活していた少年時代。あの頃,100円は大金だった。だから,みんなものを大切にした。そして,買えないものは自分たちで作り出していた。なけなしのお金はたいて買ったふうせんだからこそ,この話は感動をよぶ。自分の買いたいものもがまんして買ってあげたふうせん。妹を思うまさしの弟の男気とやさしさに胸が熱くなる。娘達にも読ませたい。