【感想・ネタバレ】人間小唄のレビュー

あらすじ

小角が書き送った短歌を自分の文章に無断で引用した作家・糺田両奴。国民の無意識に影響を及ぼして駄目にする奴の文学を根底から破壊する! こちらの世界に拉致してきた糺田に課した難題は、「一、短歌を作る。二、ラーメンと餃子の店を開店し人気店にする。三、暗殺」。それは魂のテロルの始まりだった。(講談社文庫)

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Posted by ブクログ

名作です。町田康さんにハマり20年以上たちますが、1番かもしれません。

難解な印象が強い町田康さんですが、今作はテーマが明確です。「薄っぺらいくせに、さも本物のように表現して多くの国民を洗脳するエセクリエイターども許さん、ちゃんとしろ。性根を叩き直してやる」

文学は読み手の受け取り方次第で、何が正解なのかは分かりません。町田康さんも別にそんなこと思っていないかもしれませんが、私はそう解釈しました。

解説にあった、
?田(?読みも分からんから変換できない笑)の薄汚れた魂の浄化を図るためのもの、という指摘に近かったです。

1、短歌を作れ→創作に真摯に向き合え
2、ラーメンと餃子の人気店をやれ→大衆(読み手)を
理解しろ
3、暗殺→なんだっけ、わすれた笑

猿本丸児はもうこれ秋元康でしょ笑笑「川の流れのように」のパロまで入れて。

ちなみに1番笑ったのは、鎖鎌で切りつけた時の一文「音頭朗々〜」です笑

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2021年09月06日

Posted by ブクログ

『こいつを潰すのは俺の使命。俺の勇気。そして希望。青雲。ラララ、君が見た光。』

『思考における二股はひとりの人間を複数の人間にする。その好例がエグザイルだ。』

『もう口惜しくって口惜しくって、手に持っているグラスを握力の力で握り割って、割れたガラスで掌を切り、鮮血を迸らせ、その鮮血の迸る手で寿司を握り、真面目で冷静な声で、「へい。お待ち。血の握りです」と言って配って歩きたいような気持ちになった。』

「もう、あいつはやきもののこととなるともう、きちがいだからね。ね、そうだよね、未無ちゃん」
「きちがいです」
「だよね。まあ、それ以外のことについても大体、きちがいなんどけど、まあそういう僕も実際はきちがいみたいなものなんだけど。そうだよねよね、未無ちゃん」
「きちがいです」

「君はいま頭の痛みに苦しんでいるのかも知れないが、そんなものはこれからの苦しみに比べたら練習のようなものだ。ウグイスの交尾のようなものだよ。」

「や、やめて…」
「なにが、やめて…、じゃ、ぼけ。おまえは処女か。あのなあ、あのさあ、俺はおまえが帰ったらどうなるかを呆れるほど克明に説明したよねぇ。してない? した? 未無、どっち?」
「呆れるほど克明に説明してました」

『もちろん俺たちに隙はない。明日もない。あるのはいまだけ。』

「おまえを葱で殴りたいような気持ちを常に心の中心に抱いて、その葱の臭みを、それは臭みじゃないでしょう、むしろ、それを臭いと思う消費者のほうがよっぽど臭いんとちゃうんけ、と思いながら!」

『屋上の草原はごみごみした地上と違ってとても気持ちがいい。こんな気持ちがいいところで暗殺の練習ができるなんて、本当にうれしい、気持ちいい。感謝。』

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2014年02月12日

Posted by ブクログ

勤勉な作者のお巫山戯。絶え間ない向上心、集中力、アップデート。
ここまで噛み砕いて差し出されているのだ。若者よ、もっと文学を読まねばならぬ。傑作。

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2014年02月01日

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ネタバレ

脳が動く。読むより飛ぶ。その意味で詩的。
言葉の揺らぎによって、小角、未無、ほか人物が狂っているように思える。おかしくみえる。対して糺田の言葉がいわゆる一般的な感覚に近いことで、読み手の拠り所になっている。よって狂った世界に振り回されることになる。巻き込まれる。
とにかく言葉が、思考が飛び回る。軽やかな文体。若くてユカイ。ダイヤモンド。振り切りたいなと思える文章。自分も文章を書きたくなった。

ストーリー。小角が糺田を陥れるために短歌を書いて送りつける。見事罠にハマったので未無に手伝ってもらい、拉致して異世界へ行く。異世界で①短歌を書かせ、②ラーメン屋を出させ、③暗殺をさせようとする。小角の理不尽によって数々の苦難被ることになり、自宅に帰る最後のチャンスである暗殺もうまくいかない。ひいては決闘することになり、錐が頭にぶっ刺さる。なんとか異世界から逃れ、自宅に帰るが、脳が損傷してしまってまともな文章が書けなくなってしまう。それを糺田は笑っている。 

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2020年04月03日

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ネタバレ

 他人のアイディアを勝手に引用し、「センスがいい」日本語を綴っていた糺田両奴に、小角(蘇我臣傍安)の天誅が下される。
「一、短歌を作る。二、ラーメンと餃子の店を開店し人気店にする。三、暗殺」。糺田の文学を根底から破壊するべく、これらのミッションに挑ませる。
「全体としてはよくわかんないけど、けっこう笑えたし、まあいっかー」と言って終わりかけてたけど、解説を読んで再度パラパラと読み返すと、これはなんやすごい作品なんではないかと思えてきた。人間は謙虚に生きなければならない。傲慢であってはならない。あらゆる表現者への警笛とも言える作品。

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2017年02月14日

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最初はその世界観に慣れるまで苦労したが、その後はもう転げ落ちるように小説に引き込まれていく。絶望的で絶対的で不条理な設定なのだけれど、町田康の語り口がそれを隠すように軽い雰囲気で進んでいく。
やみつきになるというよりも、読んでいる時だけ浸っていたい。ずっとだと胃がもたれそうで、良い意味で濃すぎる味付け。ハマる人はメチャクチャにハマるでしょうが。

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2015年11月09日

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ギャグなの?真面目なの?って思うの、最初は。でも読んでるうちにクセになるというか、ケラケラ笑っている自分がいた。
でも笑えるだけじゃなくて、常に狂気が潜んでいるというか。なんてことない、って感じで人を痛めつけるんだよ。怖いよね。そんで妙にまともなことを口にするんだ。登場人物みんなかわいいけど、みんな怖い。誰も友達には欲しくないな。
でもおもしろかったし読んでよかった。今まで読んだことなかったタイプの小説でした。

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2015年07月30日

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久々の町田康でしたが、出だしからほくそ笑みつつ最後まで面白く読みました。そういや生きるヒントも頂いたのでした。なんか運命感じたしね本屋で見かけた時に(笑)

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2015年07月21日

Posted by ブクログ

ずっと高熱でうなされている時に見る夢のような話。
主人公の小角は、訳の分からない単価を一方的に糺田両奴に送り付ける。
その単価を考察した文章を著書に載せてヒットした糺田両奴に小角は恨みを持ち、糺田両奴を謎の世界に拉致し、短歌を書かせたりラーメン屋を開かせたり、秋元康的なプロデューサーを暗殺させようとしたりとめちゃくちゃな事を課題として押し付ける。
とにかく、終始わけがわからないのだが、町田康独特の言い回しで続くストーリーは読んでいてとても面白い。
特に続きが気になるなどはないが、ついつい読み進めてしまう。
あと、登場人物の漢字が全く読めないので調べたら、どうやらそういうものらしい。
糺田両奴(きゅうだりょうど)と私は読みました。

実写でやるとしたら

小角→オダギリジョー
糺田両奴→滝藤賢一
新未夢→池田エライザ

かな?

楽しい小説でした。

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2023年09月09日

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ネタバレ

うーむ。うーむ。うーむ。わからん。わかりませんでした。でも、ま、分からなくても良いか、と思った自分もいる。正直、ホンマに正直言いますと、そこまで面白いとは、思いませんでした。あくまでも自分基準で。俺には合わんなあコレ、って感じ。

でもアレだ。合わないんだけど、合わないなりに好き、という変な感想。ああ、町田さん、ぶっとんでんなあ~、ってのはヒシヒシと伝わったし、別の作品で、十分に「町田康、マジすげえ!!」って驚愕驚嘆感嘆感動させていただきまくっているので、別に合わない作品があってもね、そんなこたあ、俺の町田さんに対する尊敬の気持ちは一向変わらんね、って感じ。

ま、平たく言うと、町田康、という作家を、無条件で尊敬信頼する自分がいるのです。それだけ好きな存在なんですよね。で、ちなみに、町田町蔵時代のパンクバンド「INU」は、、、正直、、、わからん、、、ありゃあ、わからん、、、でもなんだか凄いよな、って感じ。

町田さんの作品で以前に読んだ中で、この作品になんだか近い感じ?って思ったのは「真実真正日記」でしょうか。アレの意味不明さとコレの意味不明さは、なんだか似ているなあ、とか、ザックリ思いました。でも「真実真正日記」を読んだのは、えれえ大昔なんで、今読んだら「全然ちゃうよね」って思うかもしらん。それはまあソレ、って感じですね。

まあ、ぶっ飛んでるなあ、というか、ホンマに有体に言うと、狂ってるよなあ、って感じなんですが、まあその、怒涛の狂いっぷりを楽しむ物語、でしょうか。個人的には、登場人物の誰にも感情移入することなく、単なる傍観者として、淡々と物語を読み進めました。「ああ、、、みんな、アホばっかやなあ、、、」みたいな感じで。

いわば神の視点でこの物語を眺めたのです。高みの見物、ってヤツですね。傲岸不遜過ぎる。そんな俺はマジでクソみたいな人間なのか?とも思いつつ、まあ、すまん。感情移入して「自分の身にこんな事が降りかかったらどうしたらいいんだ!!マジ辛い!!なんとか助かりたい!!」とか全然思わなんだ。すまん。

物語の終盤で、なんだか軽佻浮薄なポップスソングを世間に矢鱈乱発しているクソみたいなプロデューサー、みたいな人物が登場して、主人公目線で「あいつはクソ。死んでいい。だから暗殺」ってなるんですが、あっこらへんの流れは、うーん、、、どうだろう。個人的には、納得できないなあ。

誰かが誰かを、死んでも良い人間だと断定する。アイツがいるのはこの世の中のためにならない。だから暗殺するのは正義。って思うのは、「あなたにとって都合の良い世界にアイツはいらない」ってことですよね?それは、絶対に誰の目線から見ても「アイツは死んだ方が良い」では無いですよね?ということを、常に、思ってしまうのだ。「(誰にとっても)真の悪」とは何か?「(誰にとっても)真の正義」とは存在するのか。それは、永遠に問い続けるべき問題ですよね。

そういう意味では、あの最後らへんの展開は、ブランキー・ジェット・シティーの「人殺しの気持ち」という曲を思い出させてくれてサンキュー、って感じでした。自分にとっては、とても大切な曲です。あの曲は。あの曲の存在を思い出させてくれたってだけでも、この本を読んで感じた事があったね俺はラッキーだね、ってことですよね。

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2021年01月17日

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怪文書を送られた作家が、その内容を自作でネタに使ったら、送り主に異次元空間に拉致されて、解放する代わりに課題を与えられる。?短歌を作れ……失敗、?ラーメンと餃子の店を出して人気店にしろ……いいトコまで行ったが失敗、?暗殺……ターゲットに拉致監禁され、総合格闘技の試合を申し込まれて敗北。作家の脳が壊れてお終い。内容を全てネタバレしてしまったが、まぁいっか。ネタバレしたところで何にも影響は無い。

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2018年01月08日

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何て乱暴で不条理な話なんや…
町田康ていつもは踏んだり蹴ったりな側視点ばかりやったような気がするんやけど逆側なんもしんどい原因やと思った。
でも安っぽいラーメンを食べたくなった。

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2017年03月30日

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わけ分かんねぇ。まぁ、クスってなるとこいっぱいあったけど。

関係ないけど解説でジャン・ジャック・ルソー(人間不平等起源論の人)の「社会や法律は金持ちが貧乏人騙して反抗させないための偽の仕組みだ」って言葉が出てきてて、おおーってなった。

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2016年05月22日

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ネタバレ

初めて触れた町田康の文章は強烈。時代感不明な言葉遣いやぶっ飛んだ想定。こういうのもアリなんやと、読み物の幅を広げてくれた一冊。

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2015年12月03日

Posted by ブクログ

面白いけど、読んでいて殺伐とした気分になりました。
笑っちゃう箇所も多々有るのですが、底に流れているものが絶望というか。。

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2014年02月13日

Posted by ブクログ

怖えええ。こんな怖い町田康、読んだことない。

ある日突然送りつけられてきた謎の短歌を、雑誌の原稿に無断で引用した作家・糺田。糺田に短歌を書き送った張本人である小角と、小角に協力する美女・未無。
短歌の無断引用を理由に、糺田は小角と未無にどつきまわされるのであった。

って言ったら、町田作品に親しんできた人は「ああ、この糺田とかいう奴はヘラヘラふにゃふにゃその日暮的な日々を送っていて、大方今晩の酒代に困るとかして盗作に及び、その報いを謎の男女から受けるに至るのだろうな。それはもうズタズタに。ボロボロに。はは、おもろ」なんて頭の中で町田文体っぽく思ったりするんじゃないかなと思う。と云うか、私はしました。

自らの怠惰や見通しの甘さから、努力はすれども報われなかったり、そもそも努力の方向性が世の慣習から大分ズレていたりする主人公たちなら、これまで何人も見てきた。
彼らは肉体的にも精神的にもハードな目に遭う。ハード、って簡単に言うけどそこはそれ、作者の想像力に裏打ちされたハードさなので、もう、えらいハードである。
しかし、我らが主人公たちは、いかなるハードにも意外と負けなかったように思う。
例えばプロレスなんてまさにその最たるものだと思うんですけど、やれバックドロップだジャーマンスープレックスだエメラルドフロウジョンだって大技が炸裂して、その度にお客は大盛り上がりする。レフェリーがカウントをする。食らった側が必死で起き上がる。お客どよめく。こうして益々高まってゆく興奮状態と云うのは、「受ける側」のタフさの賜物なんじゃないかなあ。
これと同じようなことは、どつきまわされ系主人公たちにも言えて、我々読者は主人公の受身の上手さを前提として、彼に降りかかる数々のハードを楽しんできたのではあるまいか。

長々書いたけど、『人間小唄』はそういう小説じゃありませんでした。

酷い目に遭う側ではなく、遭わす側視点。
天誅であり革命でありテロル。うわ怖えええ。

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2014年01月24日

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