【感想・ネタバレ】コミュニティを問いなおす ――つながり・都市・日本社会の未来のレビュー

あらすじ

戦後の日本社会で人々は、会社や家族という「共同体」を築き、生活の基盤としてきた。だが、そうした「関係性」のあり方を可能にした経済成長の時代が終わるとともに、個人の社会的孤立は深刻化している。都市、グローバル化、社会保障、地域再生、ケアなどの観点から、新たな「つながり」の形を掘り下げる試みである。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 戦後の日本社会とは、「農村から都市への人口大移動の歴史」であった。都市に移った日本人は都市的な関係性を築いていくかわりに「(核)家族」という、閉鎖性の強いコミュニティをつくった。これは家族の利益を追究することが、個人のパイの取り分の増大にもつながるという意味で一定の好循環を作っていた。しかし、経済が成熟化し、そうした好循環の前提が崩れるとともに、家族のあり方が流動化・多様化する。それはかえって個人の孤立を招き、「生きづらい」社会や関係性を生み出した。
 このように社会的紐帯がゆるんでいくことは、人々が個人個人でしたいことをして生きるという理想を実現し始める反面、イエやムラなど前近代に起源がありながら、経済成長を支えるなどした社会的準拠枠の喪失を意味する。
 そのような状況下、新たなコミュニティ作りが模索される。そこにはどのような解決策が存在するのか?
 大学の講義と卒論にて使用。

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2013年12月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

テーマは『つながり』。
日本社会の各都市で起きている孤立問題から日本を覆う閉塞感、その打破のための普遍的原理追求を世界レベルの視点から模索しています。
もっさ抽象的ですが、今の日本には以前の高度成長期のような普遍原理(『追い付け追い越せ!』)が無くなり、カイシャという小さなコミュニティの中で個人は生きている。
排他的で余所者を受け入れない体質(ウチとソトの峻別)、しかし日本の都市計画ではそれが仇となり街の一体感や調和、コンセプトが見えない。乱雑した街並みになっている。
世界の都市(特に西欧)と比して目も当てられない凄惨な姿になっている。

西欧を倣って公有地を有効活用することが鍵と主張する。
特に住宅問題として、空き地の再開発(公営住宅)を通じて若年層の流出阻止及び流入を図り、ハード・ソフト共にコミュニティを再構築する機会と述べる。

普遍的原理については、紀元前5世紀に各地で隆盛した諸宗教がリージョナルレベルで浸透、いずれ来る諸原理の衝突にうまく折り合いを付け、価値観の多様性及び深化を遂げて現在に至る…。

とまぁ世界レベルから日本の地方都市レベルまで包括して『つながり』を主軸にして述べてますが、個人的に言えば同著『定常型社会』の衝撃の方が忘れられません。
次の時代は時間そのものを消費する社会になるという予言的文章には説得力があり、斬新な発想に驚愕しました。

またコミュニティについて、結局日本に無い普遍的原理の構築には社会心理学の最近の研究が目覚ましいほど発達していて、彼の問題提起を一歩踏み込んだ研究がなされています(社会心理学の山岸俊男教授や対人ネットワーク研究の増田直紀氏、また昨年亡くなった土居健郎著『「甘え」の構造』など)。

抽象レベルでは僕が今まで思っていたことを文章にしただけですが(過言です)、上記で紹介した本を併せて読むことで未来社会のビジョンが見えてくる気がします。
興味のある人は読んでみて下さい。
最後に…、この本は優れていると思います(実際、平成20年度大佛次郎論壇賞を受賞しています)が、もう一歩突っ込んだ内容にしてほしいと、期待をかけて星3つにします(笑)

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2011年09月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 「私」の領域(市場)でも「公」の領域(政府)でもない、「共」の領域である「コミュニティ」からの新しい社会作りを提案した本。内容は社会、経済、福祉など多岐に渡り、この第三の領域を発展させることで諸問題を解決しようというものになっている。

 この本でいうコミュニティとは、「メンバーの帰属意識やメンバー間の連帯、相互扶助を前提とする社会と個人の間に属する中間的集団」とのことである。


 人間社会の消費形態は、物質の消費→エネルギーの消費→情報の消費、と変遷してきたが、現代は量的な情報の消費から、質的で内面的な充実を求める「時間の消費」の時代であるとされる。

 その中で、人々は自然、公共性、スピリチュアリティなどを追求するようになり、NPOや社会起業家の活動が目立ち、神社などが見直されるようになった。

 「時間の消費」の時代である現代では「地域」が見直されている。充実した時間を自分の所属する地域(コミュニティ)で過ごそうとする傾向である。

 そこで著者はコミュニティの中心を福祉、医療施設、自然関係、大学などに置く「福祉地理学」が提唱している。以前なら日本のムラ社会のしがらみの代表例として扱われていた自治会・町内会の再評価もなされている。

 これまで私も、人々が緩やかに所属できるコミュニティを作ることで、分断された個人の立ち直りや相互扶助、社会的ノウハウの共有が図れ、新たな発展に繋がるのではと朧気ながらも考えていたので、大いに参考になった一冊。

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2011年06月06日

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