【感想・ネタバレ】きずもののレビュー

あらすじ

5年ぶりの長編小説、新たなる代表作。

小説家・松川貢は、郷里の幼馴染みである田持猛とゆるやかにSNSで繋がり続けていた。
運動が得意だった猛は、貢にとって仰ぎ見る存在だったが、いまやその関係性は真逆のものになっていた。
某写真家のパーティーで貢と出会った遥は、ある出来事を機に、カナダ・バンクーバーで生活を続ける親友の万千花のルームシェア相手になる。
幼少期から互いを知る二組には、それぞれの時間が着実に流れていた。

執筆3年。
絶望と勇気が肩を組んでやってくるような、
直木賞受賞作「サラバ!」、がん治療ノンフィクション「くもをさがす」著者の新たなる代表作。

※この作品はカラーが含まれます。

(底本 2026年9月発売作品)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

人間と、人間関係の複雑さとか、その時その時で変わる感じ。それがすごく良かった。

登場人物も多いし、視点もどんどん変わって、視点が変わるたびに、その人がちゃんと主人公になって。
誰か一人の物語を中心に進んでいくというより、それぞれにそれぞれの人生があって、「こうあるべき」とか「こうしたい」とか、「これって何なんやろ」とか、右往左往しながら生きてる。

頼子は最後までなかなか掴みきれなかった。他の人みたいに、まわりの人の言動や、自分の中での罪悪感とかに傷ついたり迷ったり、感情に引っ張られたりしている感じと違っていて、周りから見える自分っていうのとか、こうあるべきとかがないんかなって。

SNSで貢への評価が変わっていくところも印象に残った。 賞を取った作家として「素晴らしい人」と見られていたのが、薬物や若い女性とのことが出てくれば「最低な男」になって、女性を守って亡くなれば今度は「英雄」になる。 でも、貢本人はその間ずっと一人の人間として生きている。

人にはレイヤーがあるってところ。 誰かから見た自分、自分が思っている自分、昔の自分、今の自分。 同じ人間でも、見る人や、その人が知っている情報、その時の関係によって全然違って見える。

遙と万千花の関係が好きだった。
もう昔の私たちとは違うんやなってなって離れてしまうことがあるから、二人の関係は終わるって思ってた。
でも、ちょっと待って、シバかな気が済まん!って感じの遙と、万千花がけんけん相撲をして、お互い今の自分をさらけ出して話して、昔の私たち!だけじゃない、新しい関係で進んでいく二人が良かった。

「こうあるべき自分」に近づきたいと思うことも、もしかしたら安心したいからなのかなと思った。 こうであれば間違いない、こうしていれば大丈夫、というものが欲しくなる。 でも、人との関わりの中で、自分が思っていた自分と、相手から見えている自分が違うことに気づいたりする。 そういう意味でも、人との関係って、自分自身のレイヤーを見せてくれるものなのかもしれない。

「人間ってこういうものです」って分かりやすい答えもなくて、それが面白かった。
再読してまた色々考えたいと思いました。

西加奈子さんの作品はこれがはじめましてで(恥ずかしながら!)、他の作品も読みたいと思いました!
この()の使い方、めちゃくちゃ好きで、他の作品もそうなのか?気になりました。
メディアでの西加奈子さんは見ていたので、痛快な関西弁で話す聡明でユニークで素敵な人!って印象で、私には難しくて、素敵過ぎて共感できるとこないかもしれん、、と思ってたけど、(実際難しくはあった!)でも、押し付けてくる感じはなくて、人間やもんなってのが良かったです。

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2026年10月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人って人でしかないんだなあと思った
変わることも変わらないこともある
自分から見た自分と他人から見た自分の違いもある
どの部分がその人なのかどうかもわからない
貢の性欲は貢目線で見ると気持ち悪く描かれるけど別の人の視点だとまあそんなもんじゃない?みたいな感じで描かれてたり。美人作家の人のインタビューが赤線だらけなことも、その人の内側はわからないけどこれも二つの視点が混ざるだけでその人物像がだいぶ違う印象になる。
感想にまとめるのは難しいんだけど、誰しもが自分のために生きれたらいいなと思う。でもこの登場人物ぜんいん優しすぎるからなあ。むずかしい。とてもすきだけど、まだ自分の中でまとまらない。そこがすき。

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2026年10月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

小説家と妻
小説家と幼馴染
幼馴染と妻とその娘たち
小説家とともに逮捕された女
女と親友

いくつかの関係値にある人物が次々と描かれていくお話。人間は一事が万事ではない、ひとつのことでその人のすべてを語ることはできない、といったことがメッセージの核でしょうか。ちょっと長いな…と思ったけど、いやそれが人を書くということなのかとも思い直しました。人間の複雑さや説明のつかなさ、予測不能な感情の起伏などを、それでも言葉で書き切るしかない小説や小説家って、やっぱりどこまでいってもすごいです。

終盤にでてくる、遥とマッカの口論シーンがすきです。YouTubeでご本人を見た後だったからか、完全に西加奈子さんで再生されました。
西加奈子さんVS西加奈子さん

思えば他のいろんなキャラクターも、どことなく西加奈子さんが真ん中にある感じがします。性格設定や置かれている状況は歪んでいながらも、根本的にどこか爽やかでからっとして、ふつふつと強い。根が嫌な人じゃない。もっと壊れてそのままになったり、どす黒く堕ちていってもおかしくないのに、快方に向かうのが早い。それぞれの感情を補足するような(  )書きが多用されてて、そのときのキャラが!を使うような少しだけ一辺倒な感じがするからというのもあるのでしょうか。ここにもやっぱり西加奈子さん。でもそれもまた、テレビやYouTubeで見る西加奈子さんのほんのひとつでしかないのでしょうが。

周りにいる人、それが血縁者や友人や、一見遠い意外な間柄の人であっても、大切に繋がっている人がいるというのはいい生き方だなとしみじみ。
読書するとこれを感じることが多く、普遍的なことなんだろうなと、自分の暮らしをかえりみてしまいます。

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2026年10月05日

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