【感想・ネタバレ】きずもののレビュー

あらすじ

5年ぶりの長編小説、新たなる代表作。

小説家・松川貢は、郷里の幼馴染みである田持猛とゆるやかにSNSで繋がり続けていた。
運動が得意だった猛は、貢にとって仰ぎ見る存在だったが、いまやその関係性は真逆のものになっていた。
某写真家のパーティーで貢と出会った遥は、ある出来事を機に、カナダ・バンクーバーで生活を続ける親友の万千花のルームシェア相手になる。
幼少期から互いを知る二組には、それぞれの時間が着実に流れていた。

執筆3年。
絶望と勇気が肩を組んでやってくるような、
直木賞受賞作「サラバ!」、がん治療ノンフィクション「くもをさがす」著者の新たなる代表作。

※この作品はカラーが含まれます。

(底本 2026年9月発売作品)

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

西加奈子が中年を描いてくれている!
こんなに解像度高く。幅広く。ちゃんと絶望も、そして希望も交えて。

近年はみんな、クリーンでコンプラわかってますみたいな、パワハラしたことないですよみたいな顔でいるけど
うちらとんでもない時代でもみくちゃになって恥ずかしいことも痛々しいこともたくさんして生き抜いてきたよな?そのときの価値観無かったことにはできないよな!?
自分も今37歳、全然若くない世代、価値観のアップデートでだいぶ気も使ってるし右往左往してる。古い時代にとんでもなかったことはもちろん悪いよ、でもその時にインストールしちゃった価値観は無かったことにはならないよ?

貢も、猛も美咲も善枝も、みんな変わる時代と価値観に翻弄されてて、そのどれもが正直で共感できた。(自分より10歳位上の中年のベテラン世代の予習も含めて。)

ハルが、マチカにキキとゾーイになろうとすんな、痛々しい。みたいな目線を持ってて、それに共感しつつも、でも最後、マチカがどんなにかっこわるくても頑張って別の人間になろうとするのも肯定してる描き方があっぱれだったよな。

以下印象に残ったところ

⚫︎マチカの体調悪いのをみんな全力で気付かないふりするところ、こんなに頑張ってるウチを認めろよ?と痛々しいマッカ なんてリアルだ。。

⚫︎人生は寂しいよね、と言い合い
猛が貢の本を読もう、と決意するところ

⚫︎猛の、地元のヒーローが中年になった悲哀を解像度高く描いているところが良かった。そうか、古き概念でスターだった人は、挫折ない分、若者に無自覚にノンデリなことをいう中年となるのか。苦悩もあるよな。でも猛のピュアさというか、決して嫌な人間として描いていないところがいい。

⚫︎言葉の恐ろしさに着いて。
まるで炎を手のひらに乗せているようなものだ。

⚫︎モテたかった。そう、モテたかったんだ、自分は。
なんて正直な!わかるよ。

⚫︎頼子の巨大さ。
頼子だけがずっと、ニュートラルで偉大な、余計な自意識のない、恥じることない人間として描かれている。彼女の内面だけがずっと謎。

⚫︎対照的に、見えにこだわる美咲の内面のなんと正直なことか。私も頼子にはなれない。美咲ほど徹底もできないだろうが。

⚫︎もうブスっていっちゃいけないんだよね?わかってる。ヤリマンもダメか〜 のよしえ!
ほーんと!

⚫︎最後の最後に頼子の語りパート。とても静かな。
スマホを置くと、毎日はとても静か。山の中にいるよう。
その通りかもしれない。
見なくても良いものをたくさん見て、心の中を忙しくしているのかもしれない。


あー、西加奈子の次の本も読みたいから、もっと生きよう。楽しみだな。

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2026年10月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人間と、人間関係の複雑さとか、その時その時で変わる感じ。それがすごく良かった。

登場人物も多いし、視点もどんどん変わって、視点が変わるたびに、その人がちゃんと主人公になって。
誰か一人の物語を中心に進んでいくというより、それぞれにそれぞれの人生があって、「こうあるべき」とか「こうしたい」とか、「これって何なんやろ」とか、右往左往しながら生きてる。

頼子は最後までなかなか掴みきれなかった。他の人みたいに、まわりの人の言動や、自分の中での罪悪感とかに傷ついたり迷ったり、感情に引っ張られたりしている感じと違っていて、周りから見える自分っていうのとか、こうあるべきとかがないんかなって。

SNSで貢への評価が変わっていくところも印象に残った。 賞を取った作家として「素晴らしい人」と見られていたのが、薬物や若い女性とのことが出てくれば「最低な男」になって、女性を守って亡くなれば今度は「英雄」になる。 でも、貢本人はその間ずっと一人の人間として生きている。

人にはレイヤーがあるってところ。 誰かから見た自分、自分が思っている自分、昔の自分、今の自分。 同じ人間でも、見る人や、その人が知っている情報、その時の関係によって全然違って見える。

遙と万千花の関係が好きだった。
もう昔の私たちとは違うんやなってなって離れてしまうことがあるから、二人の関係は終わるって思ってた。
でも、ちょっと待って、シバかな気が済まん!って感じの遙と、万千花がけんけん相撲をして、お互い今の自分をさらけ出して話して、昔の私たち!だけじゃない、新しい関係で進んでいく二人が良かった。

「こうあるべき自分」に近づきたいと思うことも、もしかしたら安心したいからなのかなと思った。 こうであれば間違いない、こうしていれば大丈夫、というものが欲しくなる。 でも、人との関わりの中で、自分が思っていた自分と、相手から見えている自分が違うことに気づいたりする。 そういう意味でも、人との関係って、自分自身のレイヤーを見せてくれるものなのかもしれない。

「人間ってこういうものです」って分かりやすい答えもなくて、それが面白かった。
再読してまた色々考えたいと思いました。

西加奈子さんの作品はこれがはじめましてで(恥ずかしながら!)、他の作品も読みたいと思いました!
この()の使い方、めちゃくちゃ好きで、他の作品もそうなのか?気になりました。
メディアでの西加奈子さんは見ていたので、痛快な関西弁で話す聡明でユニークで素敵な人!って印象で、私には難しくて、素敵過ぎて共感できるとこないかもしれん、、と思ってたけど、(実際難しくはあった!)でも、押し付けてくる感じはなくて、人間やもんなってのが良かったです。

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2026年10月07日

Posted by ブクログ

人は変わる、変わるけれど
それでも繋がり続けることができた人達のお話。

海外と日本の価値観の違い、多様性、
女性の生きづらさ、現代を生きる人の価値観等が
とても丁寧に書かれて読みごたえがありました。

表紙の猫とヤモリがかなり良いですね。
物語後半でわかるのですが
ヤモリには意味があるのですね。

序盤で出てくる話の
「サーフィンにハマってます フミ』という
フレーズは笑ってしまうのでずるい。

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2026年10月03日

Posted by ブクログ

親友、幼馴染、夫婦、姉妹…さまざまな2人のやりとりや生き方の対比がとても面白かった。

「きずものの自分、ありのままの自分」に自信が持てず、もがく私たちにとって、そのままで生きていいと、誰もがただの人間なんだと、これほど強烈に、まっすぐに、だけどシンプルに肯定してもらえることが、こんなに救われるなんて。

生きるって、生きてるって、すごいこと。

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2026年09月30日

Posted by ブクログ

人間を言葉で括る違和感についてを言葉で書くことに挑戦している感じ。

頼子がいちばんフラットなんだろうか、でも変わってるとか空気読めない、みたいなのは社会学的には異端なんじゃなかろうか、そう思ってしまう私は遅れている日本の体質に染まりまくってしまっているのだろうか。

とはいえどうあっても自分が感じることに嘘偽りはない、ということなのかな。
「我思う、故に我あり(朧げな記憶)」を思い出した。

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2026年10月11日

Posted by ブクログ

なかなか難しく、読みごたえがありまくった。主人公の一人である小説家、貢と全く同じ年である私は、何度も、首がもげそうなほどうなずいた。ふせんだらけになった。今のこのSNS社会を、これだけのボリュームで、解像度の高いエピソードてんこ盛りで、面白く、深く書ける作家が、他にいるだろうか。

それで長い感想を今、書いたのだが、間違えて消してしまい、もう一度書く気をなくしてしまったので、これだけ。

「人生って寂しいよ。」

ああ、でもまだまだ、生きていかなきゃならないのだ。

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2026年10月09日

Posted by ブクログ

良かった。ひとがサクッと容易に追い詰められていく瞬間を描くのが本当にうまくて読み手としても辛い瞬間があった。自分の中にある多様な痛さ、みたいなものをさまざまな角度から提示された感覚。読書とはこういう体験をするためにあるんだろうな、と感じられる一冊だった。

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2026年10月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人って人でしかないんだなあと思った
変わることも変わらないこともある
自分から見た自分と他人から見た自分の違いもある
どの部分がその人なのかどうかもわからない
貢の性欲は貢目線で見ると気持ち悪く描かれるけど別の人の視点だとまあそんなもんじゃない?みたいな感じで描かれてたり。美人作家の人のインタビューが赤線だらけなことも、その人の内側はわからないけどこれも二つの視点が混ざるだけでその人物像がだいぶ違う印象になる。
感想にまとめるのは難しいんだけど、誰しもが自分のために生きれたらいいなと思う。でもこの登場人物ぜんいん優しすぎるからなあ。むずかしい。とてもすきだけど、まだ自分の中でまとまらない。そこがすき。

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2026年10月06日

Posted by ブクログ

登場人物の緻密な描写が紡ぎ出す生々しい現実に、強く心を揺さぶられた。どれほど理性的に生きようと本能の力には抗えず、人はあっけなく転がり落ちることもある。その虚しさは、貢の小説のようにどこまでも流動的で掴みどころがない。

幼馴染、友人、夫婦…。お互いを想いあったり、反発したり、時には痛みを分かち合い涙を流したりする。この作品には、真に迫ったリアルな友情の姿が鮮烈に描かれている。
印象的で非常におもしろい作品でした!

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2026年10月03日

Posted by ブクログ

それぞれ二人ずつがペアになって、物語が進んでいく。
その二人は分かり合ったり反目したり、生き方がそれぞれ別の方向に向かったりしながら、でもそこは西加奈子、人に対する信頼感に満ちた物語になっている。

それぞれの成長譚なので、こんなふうに人は変わっていくのだね、ということがよーくわかる。
どうしても他人は「点」で見てしまうけど、成長を「線」で見ると納得できる。
セクハラインテリツンデレの貢が、どんなふうにそんな気持ち悪いおじさんになっていったのか、なるほどそういうことねと理解できる。
西加奈子の人間観は、「どんなやつでもそれなりに訳があんねんな」って感じかな。

新聞小説で読んだけど、夫も読んでたから、なんか緊張感のある毎日でした笑

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2026年09月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

小説家と妻
小説家と幼馴染
幼馴染と妻とその娘たち
小説家とともに逮捕された女
女と親友

いくつかの関係値にある人物が次々と描かれていくお話。人間は一事が万事ではない、ひとつのことでその人のすべてを語ることはできない、といったことがメッセージの核でしょうか。ちょっと長いな…と思ったけど、いやそれが人を書くということなのかとも思い直しました。人間の複雑さや説明のつかなさ、予測不能な感情の起伏などを、それでも言葉で書き切るしかない小説や小説家って、やっぱりどこまでいってもすごいです。

終盤にでてくる、遥とマッカの口論シーンがすきです。YouTubeでご本人を見た後だったからか、完全に西加奈子さんで再生されました。
西加奈子さんVS西加奈子さん

思えば他のいろんなキャラクターも、どことなく西加奈子さんが真ん中にある感じがします。性格設定や置かれている状況は歪んでいながらも、根本的にどこか爽やかでからっとして、ふつふつと強い。根が嫌な人じゃない。もっと壊れてそのままになったり、どす黒く堕ちていってもおかしくないのに、快方に向かうのが早い。それぞれの感情を補足するような(  )書きが多用されてて、そのときのキャラが!を使うような少しだけ一辺倒な感じがするからというのもあるのでしょうか。ここにもやっぱり西加奈子さん。でもそれもまた、テレビやYouTubeで見る西加奈子さんのほんのひとつでしかないのでしょうが。

周りにいる人、それが血縁者や友人や、一見遠い意外な間柄の人であっても、大切に繋がっている人がいるというのはいい生き方だなとしみじみ。
読書するとこれを感じることが多く、普遍的なことなんだろうなと、自分の暮らしをかえりみてしまいます。

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2026年10月05日

Posted by ブクログ

頼子と美咲、頼子と豊恵、貢と猛、遥と万千花それぞれの二人の間の感情の変化が手に汗握る面白さ二人の人間関係の「きずもの」が複雑に交錯してゆく過程が面白い。東京、カナダ、北海道と意外な場所を舞台に幼年期からの二組の男女を描いている点がとても引き込まれてしまいました。前作より3年とじっくりと描いた大傑作をあなたも読んで感動して下さい。

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2026年07月22日

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