【感想・ネタバレ】香華のレビュー

あらすじ

女としてのたしなみや慎みを持たず、自分の色情のままに男性遍歴を重ね、淫女とも言えるような奔放な生き方をする母の郁代。そんな母親に悩まされ、憎みさえしながらも、彼女を許し、心の支えとして絶えずかばい続ける娘の朋子。――古風な花柳界の中に生きた母娘の肉親としての愛憎の絆と女体の哀しさを、明治末から第二次大戦後までの四十年の歳月のうちに描く。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

私、たぶんこれを学生時代に読んだ。気がする。そしてたぶん当時は自分から遠い話だったので、あまり感慨を抱かなかったと思う。こういう、女であることを意識させられる女性主人公のものは苦手だったし。

郁代は確かにどうしようもない母親だけど、突き放すこともできない朋子の気持ちがとても、分かる。
朋子が再三言うように、朋子に子どもができていれば、郁代との関係も変わっていたように思う。郁代が子離れできないのと同様、朋子も親離れできていないのだ。親はいつまでたっても子を子ども扱いするし、家にいれば子はいつまでも親に縛られるものだ…。

母親である美しい郁代に似ない自分を、朋子は恨みがましく思っていたようだけど、父親に似ていると言われたとき朋子はどう思ったのだろう。
郁代が朋子にべったり依存していたのは、一番愛した男に朋子が似ていたからなのだとしたら、夫に早く死なれた郁代もかわいそうな人だ。
いつまでも江崎を未練がましく思っている朋子に重なる。もし江崎にそっくりな子どもが生まれていたら、朋子はどうしていただろう…


生活の上で身に付いた着物の知識がないと書けないだろうな、という描写がなんだか素敵で、今はこういう文章がなかなかないなぁという気がする。

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2017年09月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

母が娘を「妾」といい、娘が母を「娼妓」と罵る。そんな親子があるだろうか。明治の終わりから昭和40年代にかけての物語が、圧倒的な筆力で語られている。女であることをやめない母親を持つ、聡明な娘の気持ちがひしひしと伝わるようだ。苦労を重ねた朋子がようやく落ち着ける心のよりどころを見つけたかと思いきや、そうはならないと匂わせるラストはいかにも有吉さんらしい。血のつながりを否定もし、肯定もする業の深い物語だった。
話のなかにいくつもの着物や色の描写が出てきた。調べてみるとどれも素敵で、重く暗い物語にほっと息をつかせるようだった。

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2017年09月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自分の美しさを傲慢にひけらかし、自分の美貌にしか興味の
ない母親郁子のもとに産まれた朋子の幼少から老年までの物語。

母親らしいことは何一つしてもらえず、母親は自分が困ると
娘を頼りにし、困ってない時は娘を顧みない。

朋子は祖母に育てられ、母親の再婚家庭に引き取られたかと
思えば、すぐに芸者に売られ、更に同じ妓楼に遊女として
母親まで売られてくるという壮絶な日々を送る。

しっかりもので自分の将来をみすえ芸者から一流料亭の女将へと
出世していく朋子とだらしなく傲慢で自分の事しか考えてない
郁子のやり取りに苛立ちを覚え、大変疲弊する読書だった。

更には郁子の2回目の再婚相手との子供安子まで、
母親そっくりの美貌でそれでいて気は効かなく困った時だけ
姉を頼りにするので読んでいて朋子のお人よしに苛々した。

ただ最後の結末は人生の妙を感じるような、今までの母娘の
確執がすっとぬぐいさられるような終わり方でとても良かった。

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2012年05月19日

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