あらすじ
借金取りの浅田貴史と斜陽の旅行会社「楽園企画」社長・川江務の恋は遭難必至!? 浅田はローン会社社長・菊池と不倫中だし、奥さんは勘付いてるし、さらに…。もうこうなったら三~五角関係に突入か!?
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今市子先生の作品は、登場人物は引き継がれるがエピソードは一話完結のもの(『幻月楼奇譚』、『百鬼夜行抄』など)や、オムニバス作品(『笑わない人魚』、『五つの箱の物語』など)しか読んだことがなかったため、先生の作品の特徴のひとつである随所にさりげなく散らされた伏線が長編のエピソードではこんな風にストーリーの加速に効いてくるのか……と唸ってしまった。登場人物の心情描写や人物像の浮かび上がらせ方がとても魅力的で、それゆえに後半の人間関係の絡み合いにとてもわくわくさせられるし、軽妙かつリアルなセリフの応酬は何度読み返しても新鮮に愉しい。
もともとこの作品を手に取ったきっかけは、先述の短編集『笑わない人魚』に収録されている「真夏の城」の主要キャラクター二人が、設定を少し変えてこの作品に引き継がれていると同書のあとがきで知ったためであったのだが、「真夏の城」を読んだ際の印象と変わらず川江は大変いい男であった。
二巻、三巻もじっくり楽しみたい。