【感想・ネタバレ】危機の宰相のレビュー

あらすじ

あのとき、経済は真っ赤に熱をはらんでいた――。1960年、安保闘争後の騒然とした世情の中で首相になった池田勇人は、次の時代のテーマを経済成長に求めた。「所得倍増」、それは大蔵省で長く“敗者”だった池田、田村敏雄、下村治という3人の男たちの夢と志の結晶でもあった。戦後最大のコピー「所得倍増」を巡り、政治と経済が激突するスリリングなドラマを、ノンフィクションの巨星が活写する!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

池田勇人元首相の評伝というよりは、所得倍増計画の誕生秘話。誕生に大きな役割を果たした池田元首相と二人のブレーンがルーザー<敗者>であったことや、多くの学者、官僚、政治家が否定的であったことなど、初めて知ったことばかり。非常に興味をそそられる内容でした。

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2017年02月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 “GOOD・LOSER”(良き敗者)だった三人の男たちが、キャッチコピー「所得倍増」のもと、日本の経済成長(ゴールデン・シクスティーズ)を演出する。
 半世紀後の現代、日本経済はピークアウトして久しく、むしろ六重苦に悩む。この困難な時代にこそ、悲観と楽観、夢と現実等、対極のバランス感覚が必要でなかろうか。
 「世界の静かな中心であれ」。筆者が語るよう、三島由紀夫の一文が身に染みる。

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2012年01月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『凍』を読んでから改めて著者の作品に興味を持ち始めたので、購読。戦後の宰相やその周りの政策当局者が何を考え、どう行動したか。下村恭民(下村治の息子)による解説で強調されているが、本書の中では当時の政策当局者が経済理論に強い関心を持ち、この取組みの中から「所得倍増」等のキーフレーズが誕生したことが示されている。復興期に於ける米国との関係維持だけでなく、その先にどう成長を実現していくか、まさに一寸先が見えない状況に於いて、引くべきレバーは設備投資費の増加なのか等、マクロな視点で経済を捉え、議論していた過程が印象的であった。当時に比べて現在は、成長が長らく停滞し、それ故にわかりやすい1つのスローガンでは国民の理解を得るのが難しい時代なのだと思う。豊かな時代を経験したからこそ、個々人が不満に感じる点は千差万別であり、これに対応しようとすればミクロな政策の話が中心になってしまう。しかし、常々感じていたことではあるが、ゼロ成長の時代を生きるにあたり国民が欲しているのは、やはりよりマクロな指針、そしてそれに基づくミクロな政策の説明なのではないだろうか。あくまで個人の感覚として、「所得倍増」のようなフレーズが思い当たらない現在に於いて、前者の説明が不足しているように思えて仕方がない。大きな指針無くしては、個別の政策の議論の着地点をどこに求めるべきなのかも見出しにくい。本書が描きたかったこととは異なるかもしれないが、当時と現在を比較して、上記等を考えながら読んでいた。

特に印象に残った箇所は以下の通り
・だが、日本経済が巨大であるということを国民の誰もが疑わない現代においてではなく、いったい日本がどこへ行くかもわからなかった一九五〇年代の半ばに、「日本経済には力強い成長力がある」といいつづけることがどれほど困難なことであったか(p.63-64)
・おそらく、将たる者は人に好かれるだけでは足りない。人を好きになる能力が必要なのだ。この挨拶の中には、池田の人を好きになる能力といったものがはっきりと映し出されている(p.93)
・三人は確かに「ルーザー」だった。しかし、日本という国を、吉田茂のいう真の「グッド・ルーザー」に仕立て上げようとすることで、三人もまた<よき敗者>となるべき道を歩み出していたのだ(p.141)
・下村は、この「反安保」のうねりを、自分たちがどこへ向かって進んでいけばよいかわからない国民の苛立ちだ、と見ていた。「日本国民の生きる道はちゃんとあるのだということを明示すれば、その苛立ちは消える」という固い信念があった。池田の手になる「所得倍増」がそのひとつの道になるはずだった(p.212-213)
・西欧近代、とりわけ西欧の経済水準に「追いつく」ことがすべてである時代が終わったとき、戦後日本の資本主義にとっての<蜜月>も終焉していたのだ(p.283-284)
・もし、これから先、日本がゼロ成長を生きなければならないとすれば、それは世界の静かな中心になるためなのではあるまいか、と(p.302)
・(あとがき)中でも、徹底した三人称によって「シーン」を獲得するという方法論に強く反応した。「シーン」こそがノンフィクションに生命力を与えるものではないか、と(p.309)
・(あとがき)もし、私が『危機の宰相』を優先していたら、いまの私と質の違う書き手になっていたことだろう。さまざまな形で歴史に物語るという方向に行ったかもしれない。あるいは、仕事を仕事として書くという、まさにプロフェッショナルな書き手になっていったかもしれない。しかし、私は「書くこと」の前にまず「生きること」があるという書き手の道を選んだ(p.315)
・(解説)『危機の宰相』の一つの重要なメッセージは、あの時代の活力が単なる情熱や使命感や若いエネルギーの産物ではなかったこと、「所得倍増計画」に関わった多くの政策当局者が、経済理論に対する知的な探究心を共有していたことである(p.331)

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2026年03月07日

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