【感想・ネタバレ】消費するアジア 新興国市場の可能性と不安のレビュー

あらすじ

中国の一人あたりGDPと上海をはじめとする大都市圏の繁栄ぶりとのギャップからわかるとおり、もはや国レベルの平均化された指標は意味を持たない。大都市圏ごとの新しい経済単位を使う必要があるのだ。本書は、注目を集めるアジア大都市圏の構造を「消費」の視点で分析、格差拡大や社会不安など懸念材料を現実に即して考察し、アジア経済の新しい見方とアジアの未来市場としての日本の立ち位置を示す。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

経済発展が著しいアジア諸国。これらを見渡すと、そこには限界などまだまだ先の話のように思える。
筆者はそのような楽観的な意見に対して懐疑的な主張を繰り広げる。

筆者の主張の核となるキーワードは、地理的視点と多様性である。
まず、現在発展が著しい国家(中国、タイ、マレーシアetc)は、外から見ると国家全体が発展しているように見えるがそうではなく、地理的視点から見れば、局所的な発展に留まっている。例えば、中国なら上海などの沿岸部、タイならバンコクといった具合である。このような大都市は周辺部をも取り込み、「メガリージョン」として著しい発展を遂げている。
しかし、メガリージョンは一方で、国家内において極度の格差を生み出す。なぜならメガリージョンの発展利益は地方まで行き渡らないからである。沿岸部のメガリージョンと地方の農村部では、格差は50倍にもなる。
これを「中進国のワナ」と呼ぶ。

中進国のワナは何を生み出すか。これは近年に見る国家内の政治不安に繋がる。例えばタイでは、メガリージョンであるバンコクと東北部の農村の間の格差が著しく広がり、首相の政変も重なって動乱が発生した。このように、国家内格差は政治不安へと帰結する。

メガリージョンを抱え込む新興国が先進国になるためには、この格差を是正する必要がある。そのための方法として貧困層向けの公共政策を行う必要があるが、財源の問題が重く圧し掛かる。また、増税はメガリージョンの競争力向上に逆効果でもある。従って、新興国は減税と増税の間のジレンマに陥っているといえるだろう。

明らかに、冒頭の楽観論では間に合わないことが理解されるが、この問題に日本はどのように対応すべきだろうか。
一つは、日本内のアジア新興国に対する意識変革が必要であろう。今までの日本は、アジア新興国を大型市場と見なし、「日本とアジア諸国」という考えで投資活動をしていたが、現在の状況に鑑みると、「アジアの中の日本」というように考えを改める必要があるだろう。なぜなら、投資活動や市場拡大によって日本企業が新興国で利益を上げている一方で、格差の拡大に手を貸しているのも事実だからである。このままの状況では、中進国の課題のために、日本と新興国の両方に長期的な発展は見込めない。日本はアジアの中の一員として、この問題に善処すべきである。

もう一つは、その手段としての日本の技術の利用である。中国・韓国・台湾などが着実に技術力を上げており、かつて最強と謳われた日本の技術力はキャッチアップされている。だが、重機械だけでなく、現在日本が誇れる技術の一つがエコに関連するものであろう。これは、間違いなく日本が世界をリードしている。温暖化など世界的な問題に関しては、日本だけでなく新興国の協力も必要である。持続的な発展を促進し、長期的な利益を求めるのであれば、日本のエコ技術を新興国に売り出す必要があるだろう。

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2011年06月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

輸出中心で成長してきたアジアがどうやって、社会保障や消費にカネをまわして更なる成長を出来るか。その解は特にはないが、海外企業が入るのはローカライゼーション、ブランド、コネ、コスト競争力をうまくやらないとダメというのは当たり前の話。

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2012年05月03日

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