【感想・ネタバレ】人はなぜ「美しい」がわかるのかのレビュー

あらすじ

人はなぜ、「美しい」ということがわかるのだろうか? 自然を見て、人の立ち居振舞いを見て、それをなぜ「美しい」と感じるのだろうか? 人として生きる生活レベルから「審美学」に斬り込む。源氏物語はじめ多くの日本の古典文学に、また日本美術に造詣の深い、活字の鉄人による「美」をめぐる人生論。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「美しい」がわかる人と、分からない人。

「美しい」を実感するということは、「シンボリックに自分を語ってくれるものを発見する」ということで、それは理解されない孤独を癒す友達のようなものである。
 そして、そもそもの始めに「美しい」を実感するためには、他者の愛情という「豊かさの力」が必要である。

 しかしながら、人は「孤独」という「自由」に安住することなく、成長=自立に向かわなければならない。センチメンタリズムなどという言葉で孤独からの脱出をひとたび放棄(=時間の囚人)してしまえば、それは「美しいをわからない」ことなのだ。

「美しいを実感すること」は敗北を知ることに似ていて、その「実感」の先には「他者に対する敬意」がある。
「美しい」は、「存在する他者を容認し、肯定すること。」
注がれた愛情が「美しい」を生むのだとすれば、そういう気持ちで日々を過ごしたいものだと思う。

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2014年01月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

三回目。自分の中で過渡期になると再読しだす本の一つ。



完全に自分の土俵での感想ですが…、
最近自分は「悲しい」とか「哀しい」という感情について気になっているのだけど、橋本さんは「孤独」についてどんなに言及しても「かなしい」という感情については言及しないんだなぁ…と思った。どことなく、「かなしい」と思うことを敗北のように捉えている気がする。

例えば、ラストに杜甫の詩について語っているのだけど、悲哀を感じさせるような言葉が語られてる部分を好きでは無さそうなところとか。


ただ、自分にとっては「かなしい」という気持ちと「美しい」という気持ちは不可分にひとしいようなところがあるので、逆にこれ読んで自分の問題が炙り出されたかも。

再読情報下↓

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2011年11月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「美しい」と思う感覚はどこから来るのか。著者によると、「美しい」を感じるには「リラックスを実現させる人間関係」と、自分の所属するもの以上にいいものがあるという「外への憧れ」が必要とのこと。なんとなく分かる。そして、どういうわけか日本では「美しいが分かる人」は敗者との位置づけらしい。そうであれば、圧倒的な敗者にこそなりたいものだ。
橋本治はあまり読んだことがないので分からないのだけど、うねるような、伸縮するような文章が特徴なのか、思考の流れをそのまま文章にしたような感じと、言葉を多義的に使ったりしている部分とが少し読みにくかった。

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2014年07月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「美しい」がわかる、ということを筆者は「美しい」を個人が発見することと定義する。つまりいろいろな「美しさ」を知識として知っているのではなく、物事を見たり触れたりしたときに「美しい」と個別にはっ発見する能力について考察している。

著者の幼体験からは青空ではなく台風のときの激しく動き続ける雲であったり、一日遊んだ後の夕焼けだったりする。

さらには「徒然草」が「枕草子」よりも圧倒的につまらないのは吉田兼好が「美しい」を自分で発見できないつまらない中年男だったから、と身も蓋もない分析を行う。このくだりが非常に面白い。

最後に杜甫の「春望」から冒頭の「国破れて山河在り」を引いて結んでいる。「世界は美しさに満ち満ちているから、好きこのんで死ぬ必要はない」さらに「世界は美しさに満ち満ちているから、“美しいがわからない世界”が壊れたって嘆く必要もない」。

この世に「美しい」を見つけることが出来るという能力は、人間を生きさせる力にもなり得る、ということはありそうだ。

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2012年06月28日

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