あらすじ
鎖の音がする。 高校受験やら恋愛だかで辛苦を味わっている奴らを縛る、鎖の音。 世界という濁流の中に流れる様々な情報で、張りぼてでしかない見てくれを形成し、それを正解だと信じ切っている奴らを縛る、鎖の音。 ――がちゃがちゃ、がちゃがちゃ。 その音から逃げ出したくて、俺は――。
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Posted by ブクログ
解釈が一通りではない、いろいろと考えさせられる、そんな文章が随所に散らばっていて文学らしさが多少垣間見える。
秋田に刺殺されて意識が薄れていく最後、時雄は今まで聞こえていた鎖の音が他の誰でもない、自分自身を縛りあげている鎖の音であることを確信する。鎖とはいわゆる常識、共通認識、固定概念といったものを指し、それらを遵守している優等生ほど「鎖に縛られている」と表現する。つまり、今までずっと鎖に縛られている人達を嫌悪していた、殺人願望を常に抱いていた時雄もまた、ステレオタイプの枠組みに当てはまっていた人だったことになる。
私は時雄がどうして鎖に縛られていたのかがわからなかった。友人いわく、殺人に憧れてはいたものの実際は人を殺さない、殺人というステップまで足を踏み出せなかった「常識」に囚われていたからという可能性がある。しかし、時雄が最後のセリフを言うまでの流れの中で時雄が人を殺せなくて後悔をした場面は記憶の限りない。
機会があればまたもう一度、そこの部分だけでも読み返したい。