あらすじ
読みにくい日本語では、誰にも読んでもらえない。説得力のある、わかりやすい文章をどう書くか。短文を意識すること、語順や読点に敏感になること、段落の構成や論証の仕方に気を配ること。そして、起承転結ではなく、「結」起承「展」。これだけで、文章の説得力はぐんとアップする。本書では、作文に役立つ「使える定型表現」のリストも大々的に披露。日本語力を、生きていく上での強力な武器とするための指南書。
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Posted by ブクログ
■感想
特にサラリーマン、企画系の仕事をされている方にとっては痒いところに手が届く本です。
要約版を自分で作ったほどに、この本は実用的です。
■要諦
作文術の心得 短文道場
書くとは、知性と感情に働きかける説得の方法
説得のプロセスは、①何を書くべきか、②どういう順序で書くべきか、③どのような表現で書くべきかの3ステップ
日本語の語順。日本語は並列型の柔らかい構造、欧米語は直列型の硬い構造。
1.名詞・動詞・形容詞・形容動詞などの述語が文末に置かれる
2.修飾語が被修飾語の前に置かれる
3.文節は長い順に並べる
形容詞・副詞の語順
1.一つの語に、長い修飾語と短い修飾語がつく場合には長い方を前に置く(つまり「正順」)
2.修飾語はなるべく被修飾語の近くに置く
読点の打ち方。読点は読者へのサービスなので、下記原則があるも、抵抗なく読める場合は不要。
1.逆順の場合に打つ
2.ほぼ同じ長さの大きな分の単位が連続する時、その切れ目に打つ
3.「は」はそれ自体で遠くへかかっていく力をもっているので、本来は後に読点を打つ必要はない。ただし、強調のため、あるいは読みやすさを考えて打ってもよい
※その他読点を打つケース
i.長い語順の後で。長い主語だとか、「〜ので」「〜したとき」「〜して」などの後で。
ii.並列関係に置かれた名詞、動詞、形容詞の切れ目に。「巨大都市、東京」「美しい、静かな湖」「飲み、歌い、騒ぐ」
iii.倒置法が使われたとき。「ついにやってきた、運命の日が。」
iv.漢字または平仮名ばかりが続いて読みづらいとき。「それはいったい、なぜなのか分からない」「それは一体、何故なのか分からない」。ちなみに読点を使わず、「それはいったい何故なのか」「それは一体なぜなのか」でも良い。
v.助詞が省略されたり、感動・応答・呼びかけなどの言葉が使われたりしたとき。「あたし、嫌よ」「まあ、そんなことさ」「ああ、おどろいた」。
vi.文全体にかかる副詞の後。「多分」「恐らく」「事実」「無論」「実際」「ただ」など
vii.「・・・、と言う/と驚く」や「・・・、というような」といった引用や説明を表す「と」の前で
viii.「しかし」「そして」「ただし」など、接続詞の後で。
主語につく、ハとガの使い分けのポイント。
1.ハはいくつかの対象物のなかから一つを取り立てて他と区別する。(選択・対比)
ハはその後に「知りたい」重要な情報が来る(犯人は誰ですか)
2.ガはいくつかの対象物のなかから一つだけ取り出して他を排除する。(排除・特定)
ガはその前に「知りたい」重要な情報がある(誰が犯人ですか)
目的語につく、ガとヲの使い分け
1.ガの目的語は、「状態」であり、「欲求」「能力」含む(私はコーヒーが飲みたい)
2.ヲの目的語は、「行為」を表す(私はコーヒーを飲む)
※なお、最近の語法で、状態のガで「を」を使うケースが出てきた。誤用だが、現代はそうとは言い切れない。「きみを好きだ(きみ以外も好きかもしれない)」「コーヒーを飲みたい(コーヒー以外も飲みたいかもしれない)」「ピアノを弾ける(ピアノ以外も弾けるかもしれない)」
ハは変幻自在。
主語以外のハ。「この本は読みなさい」は、この本は特に読みなさい、という目的語の働きをしている。
助詞を省略できる。「大学(へ)は行かない」「音楽は(で)心が休まる」
「僕はうなぎです」は、僕はうなぎを食べます、の意味。欧米の文法からすれば、非論理的。「春はあけぼの」も同じ。
ハは文を飛び越す。ガは文を超えることができない。
住民から不審な男がこの界隈を彷徨いているという通報を受けて、警官はあたりをパトロールしていた。近くのスーパーからひとりの怪しい男が出てきて、左手に道をとって歩き始めた。すぐに立ち止まった。・・・「立ち止まった」の主語は、「警官」である。つまり、ハは次のハが出てくるまで、文を支配し続ける可能性がある。
日本語はきわめて発話環境依存的(ハイコンテクスト?)で、かつ主観的な言語。なので、主語が必要ないことがある。その都度必要な情報を補う必要がある。日本語の特徴は以下の通り。したがって、抽象的で観念的で論理的な表現は苦手。
1.発話環境依存的である
2.統語的に単純である・・・述語以外は補語
3.主観的である
欧米語との対比でいえば、日本語は主観敵なので、「無生物主語」を取らない。「無生物主語」がわかるかどうかが、外国語を理解するキーになる。
和文和訳で表現力を高める。
名詞中心文→動詞中心文・・・名詞を減らせば、「こなれた」日本語になる。
1.名詞は動詞に変える
2.形容詞は副詞に変える
3.無生物主語は原因・理由・手段・条件、あるいは場所・時間の表現に換える
動詞中心文→名詞中心文・・・上記と逆をすれば、論文やレポート向けの固い文へ
※要領は上記1〜3の逆。
文をまとめる 段落道場
段落には量的な目安はない。読みやすいところで段落を分ける。もっとも、読みやすさの観点から200字前後。
基本的に、1段落に1トピックセンテンス(中核文)がある。トピックセンテンスは、「段落の中心思想を表す文」「段落の内容を要約した文」と言い表すことができる。そして、基本的に中核文は、段落の先頭にもってくる。それにより、相手をイラつかせないだけでなく、話の展開が乱れないというおまけがつく。
1.段落の内容を要約する
2.段落の流れを予告する
3.読者の関心を引く
サポーティングセンテンス(補強文)は、議論を厚くする。したがって、補強文は中核文に内容的に結びついていなければならない。具体的には、補強文は以下のような形をとることが多い。
1.中核文を補足・説明する(敷衍)
2.具体例を挙げる(例証)
3.根拠に示す(理由づけ)
4.他の事例と比較・対照する(類似例ないしは反対例)
5.中核文を別の側面から捉え返す(影響、帰結、展望など)
6.段落を締め括る(中核文を言い直す、次の段落へつなげる)
段落を組み立てる 論証道場
2つの論証のタイプ。法則的なものに基づく、信頼できる「強い論証」、経験的なものに基づく、疑念の残る「弱い論証」。・演繹法と帰納法。どちらかではなく、1つの文章の中でうまく使い分ければいい。
演繹法。法則的なものを意外な対象に適用する。面白いアイデアがあるときは、演繹法でずばり断定するといい。
1.「法則的なもの」(基準、原理原則、格言名言、専門家の意見、前例社会通念、常識)を述べる
2.ある事実を挙げる
3.その事実が基準に合致するかどうかを判定する
帰納法。経験的なものから解釈を導き出す。適切なうまい例をいくつか挙げることができれば良い。手持ちのデータがたくさんあるときは帰納法を使うよい。
1.複数の「経験的なもの」(データ、アンケート結果、各種テキストや資料、体験・観察で得た知見、類似例反対例などのサンプル)が集められる
2.データの間の「共通性」を探す
3.その共通性から一つの解釈を引き出す
起承転結はビジネスには不向き。特に転はマズい。ビジネスで望まれるのは「展」である。起承転結ではなく、結論先出しで論を展開すること。
論を展開する時のチェックポイント。
1.それは何かを詳しく説明する
2.それを根拠づける「法則的なもの」はあるか
3.それを例証する「経験的なもの」はあるか
4.それはどういう問題(展望・影響・結果)をもたらすのか
5.それを説明する理由・原因はあるか
6.それと似た事例はないか。垂直方向のリサーチ(過去にあった例)/水平方向のリサーチ(身近の例)
7.それと反対の事例はないか(反対例)
仕上げの留意点。
1.文末に気をつける。「・・・と考える。・・・と考える。」など単調な繰り返しを避ける。「・・・だ」と断定したり、「・・・だろう」としたりする。それ以外のテクニックは以下。
(ア)疑問形にする
(イ)否定形にする
(ウ)文を一旦終えてから、いい足す
(エ)倒置法を使う
(オ)体言止めにする
2.平仮名を多くする
(ア)なるべく平仮名多め。(平仮名6、漢字4)
(イ)「時」「事」「物」が軽い意味の時は平仮名にする
(ウ)漢字や仮名が続いた時には平仮名の分かち書きの効果を利用する(「する場合とうぜん次のことが考えられる」「するばあい当然つぎのことが考えられる」)
(エ)名詞・形容詞は原則として漢字とするが、和語系のものは平仮名にする(「まなざしを投げる」「うつくしい空」「しずかな海」)。基本的な動詞は平仮名にしてもよい(「気持ちがゆれる」「風がふく」「姿がみえる」)
(オ)副詞は平仮名書を基本とするが、ケースバイケースで使い分ける(「じつに/実に」「ひんぱんに/頻繁に」「じじつ/事実」)
3.文体を統一する
カタカナの用法。基本的に、横文字の表記、擬声語(ガチャリ)、擬態語(ピーンときた)に使われる。が、カネ・オンナ・クルマなど、のように効果的に意味付けすることもある。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
読みにくい日本語では、誰にも読んでもらえない。
説得力のある、わかりやすい文章をどう書くか。
短文を意識すること、語順や読点に敏感になること、段落の構成や論証の仕方に気を配ること。
そして、起承転結ではなく、「結」起承「展」。
これだけで、文章の説得力はぐんとアップする。
本書では、作文に役立つ「使える定型表現」のリストも大々的に披露。
日本語力を、生きていく上での強力な武器とするための指南書。
[ 目次 ]
1 作文術の心得―短文道場(書き言葉は「外国語」;書くとは「引用」 ほか)
2 文をまとめる―段落道場(文から文章へ;段落とはなんだろう ほか)
3 段落を組み立てる―論証道場(「強い」論証と「弱い」論証;人は「権威」に弱い ほか)
4 定型表現を使いこなす―日本語語彙道場(オノマトペを見直す;慣用句を見直す ほか)
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