あらすじ
鬼払いの秘祭を取材するため、植物写真家の猫田夏海は、生物の知識に精通した<観察者(ウォッチャー)>鳶山久志らとともに、瀬戸内に浮かぶ現代アートの島――悪餌(おえ)島を訪れた。その夜、ご神体として“鬼の腕”が収められた神社で、神事の準備をしていた女性が宝物の刀で惨殺される! 洞窟に潜む羅刹の正体を、生物探偵が解き明かす! 異才・鳥飼否宇の真骨頂!!
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Posted by ブクログ
動物学&民俗学の少し楽しい知識も学べるミステリ短編集。どの事件にも怪奇の気配がして、非常に好みです。その解決は非常に現実的ではあるのだけれど、どこかしら一抹の恐怖と不安感が残される結末もまた、非常に好みど真ん中。
お気に入りは「洞の鬼」。もう舞台と道具立ての魅力だけでもお腹いっぱいなんですが。そこで起こる事件とその解決がまた凄い。結末の凄まじさも圧倒的です。
Posted by ブクログ
ホラー。ミステリ。短編集。
観察者・鳶山シリーズ。
民俗学と生物学の要素が入ったミステリ作品。
各短編のテーマは、河童・天狗・鬼。
ミステリ的にはかなり突飛な作品たち。著者らしい。
ラストの後味が悪い作品が多く、ホラー作品としてかなり好き。
Posted by ブクログ
妖怪テーマだけど、きちんと動機やトリックを解明していて面白かった。
でも、天の狗の動機というか、目的はちょっと納得いかない。
あの目的なら、違うところの方がいいんじゃないかなあ。
Posted by ブクログ
まず、妖怪を扱ったミステリとして、レベルが高い。妖怪と事件の謎がうまく結びついていて、事件も興味を引くものだし、解決も腑に落ちる。
また妖怪研究としても、これまでの説を踏まえつつ、著者の本領である自然科学の知識を駆使して、一歩進んだ推測がなされている。
ネックなのは事件の真相が明らかになっても、犯人が断罪されないところ。しかしこれは探偵役が「観察者」と名乗っている以上、仕方ないのか。
シリーズ化して、観察者が犯人としっかり対峙しなくてはならないときが来ることを願う。
Posted by ブクログ
シリーズ6作目。
「眼の池」「天の狗」「洞の鬼」3篇からなるホラーテイストの短編集。
“人間を水中に引きずり込む河童”
“空を飛び気まぐれに人を殺す天狗”
“異形の姿ゆえに恐れられ退治される鬼”
を題材にして、生物に関する知識を駆使しながら怪奇事件の謎を紐解いていく。
どの話も後味が悪く不気味な余韻を残して終わる。
何かに憑かれてしまった“人間”の、恐怖と悲哀を感じる作品。
Posted by ブクログ
河童、天狗、鬼とモチーフが統一されていて面白かったけど、最後に読んだ「洞の鬼」のイヤーな読後感が…。やっぱり実は真犯人が・・・、っていう話は後味が少々悪いね。鳶さんのキャラは結構好き。猫田さんといい感じになることは…ないのだろうかね。
Posted by ブクログ
河童に天狗に鬼。この世界観は周りに溢れてはいるので、
なんとなく聴き覚えてる事象はあるけど
観察者の世界観は面白く読んだ。
謎解きの後に、そのままだとあなたも殺されちゃいませんか?
なんて心配してしまうような余韻の中、
天の狗の犯人が自分だったら跡形も残さないように頑張るし、
洞の鬼の後味の悪さは心に残るくらいじゃすまないうえに、
それを言われちゃあ一生もんでしょうな。
Posted by ブクログ
河童、天狗、鬼など、犯人は妖怪かと思われる不可能状況で起こった犯罪を”観察者”鳶山久志が生物学の知識と卓越した洞察力で暴く短編集。
妖怪といってもおどろおどろしい雰囲気はあまりなく、土着的な怪異と自然科学的な解明がしっくり融合している。
ベストはなんといっても、トリックもぶっ飛んでいるが動機もイッちゃってる「天の狗」。
Posted by ブクログ
“「なんだ、鳶さんが見たのはカラスだったんだ」
「違うよ。どうしてホシガラスが天狗なんだよ」
「だっていま烏天狗の話をしていたじゃない。日本の天狗のモデルとなった動物はカラスなんでしょ?それにホシガラスってなによ。わたしはただカラスと言っただけで......」
わたしがまじめに説明していると、変人生き物オタクが声を荒げて遮る。
「キミは壊滅的に愚か者だな。世界中探したとしても、カラスという種名の鳥なんかいない。カラスは科あるいは属の単位を指すグループの名称だ。おそらくキミはCorvus属のハシボソガラスやハシブトガラスを念頭に置いて発言したんだろうが、ヤツらは原則的にこんな高地には生息していない。最近ではたまに山小屋から出る生ゴミを目当てにやってくるヤツもいるらしいけどね。高地に適応したのはNucifraga属のホシガラスだ。だからボクは丁寧にキミのことばを補足して、ホシガラスと言い換えてあげたわけじゃないか」
非難が耳に痛い。いったいどうすればよいのか。ことば足らずの発言をフォローしていただき、ありがとうございました。と礼を述べるべきなのか?わたしの困惑をよそに、鳶さんお叱責が加速していく。”
雰囲気はQEDっぽい?
変人が蘊蓄を垂れ流しつつ事件を解決する。
そしてちょっとぞっとするような結末。
“鳶山久志という人物は生き物全般に興味を示すが、例外的にヒトという生命体には無関心を装っている。人間嫌いかというとそうでもないようで、他人から相談を受けると親身になって応えてくれようとするし、孤独が好きとうそぶきつつも知人からの誘いを待っているようなところがある。単に他人との距離の取り方がへたくそなだけかもしれない。不惑の自立した男としてそれはいかがなものだろうと思わなくもないが。
人付き合いは得意でないとしても、他の生物とはすぐに仲良くなるのが鳶さんだ。目先に生き物がいれば周囲が見えなくなるのは彼の本能のようなものらしい。”