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Posted by ブクログ
“「なんだ、鳶さんが見たのはカラスだったんだ」
「違うよ。どうしてホシガラスが天狗なんだよ」
「だっていま烏天狗の話をしていたじゃない。日本の天狗のモデルとなった動物はカラスなんでしょ?それにホシガラスってなによ。わたしはただカラスと言っただけで......」
わたしがまじめに説明していると、変人生き物オタクが声を荒げて遮る。
「キミは壊滅的に愚か者だな。世界中探したとしても、カラスという種名の鳥なんかいない。カラスは科あるいは属の単位を指すグループの名称だ。おそらくキミはCorvus属のハシボソガラスやハシブトガラスを念頭に置いて発言したんだろうが、ヤツらは原則的にこんな高地には生息していない。最近ではたまに山小屋から出る生ゴミを目当てにやってくるヤツもいるらしいけどね。高地に適応したのはNucifraga属のホシガラスだ。だからボクは丁寧にキミのことばを補足して、ホシガラスと言い換えてあげたわけじゃないか」
非難が耳に痛い。いったいどうすればよいのか。ことば足らずの発言をフォローしていただき、ありがとうございました。と礼を述べるべきなのか?わたしの困惑をよそに、鳶さんお叱責が加速していく。”
雰囲気はQEDっぽい?
変人が蘊蓄を垂れ流しつつ事件を解決する。
そしてちょっとぞっとするような結末。
“鳶山久志という人物は生き物全般に興味を示すが、例外的にヒトという生命体には無関心を装っている。人間嫌いかというとそうでもないようで、他人から相談を受けると親身になって応えてくれようとするし、孤独が好きとうそぶきつつも知人からの誘いを待っているようなところがある。単に他人との距離の取り方がへたくそなだけかもしれない。不惑の自立した男としてそれはいかがなものだろうと思わなくもないが。
人付き合いは得意でないとしても、他の生物とはすぐに仲良くなるのが鳶さんだ。目先に生き物がいれば周囲が見えなくなるのは彼の本能のようなものらしい。”
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