あらすじ
多くの人が福祉社会を志向しているにもかかわらず、それを支えるはずの行政への不信が蔓延している。本書では、目まぐるしく変わる政治状況を横目に見ながら、官僚制批判のさまざまな連関が辿られていく。トクヴィル、カフカ、ハーバーマス、シュミット、アーレントら幅広い論者が呼び出され、ウェーバーの官僚制論が現在との関連で検討される。官僚制と戦う強いリーダーが待望される現実と対峙する鋭利な政治思想史。
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Posted by ブクログ
マックス・ウェーバーの官僚制論を軸に現代の官僚制批判の問題に迫る良書。結語において議論の内容がテーゼの形で要約されているので、示しておこう。
【テーゼ1】官僚制に対する批判的な情念は普遍的である。(日本における1990年代以降の官僚批判がもっともわかりやすい例示だが、最近になってはじまったことではなく、ロマン主義にルーツをもつ官僚制批判の情念は根深い。)
【テーゼ2】官僚制はデモクラシーの条件でもある。(官僚制はその画一主義がデモクラシーを窒息させる面があると同時に、ユニバーサルな行政サービスを提供する上で不可欠でもある。)
【テーゼ3】正当性への問いは新自由主義によって絡め取られやすい。(「後期資本主義国家」においては、市場原理という意味での形式合理主義は貫徹できないがゆえに実質合理性の論理が侵入せざるを得ず、官僚制の正当性を揺るがせる。それに対する新自由主義的な論理は、こうした揺らぎによって生じる不満へのとりあえず説得的な解答になりやすい。)
【テーゼ4】ポスト「鉄の檻」状況において、強いリーダーシップへの要求には注意が必要である。(強いリーダーへの期待、カリスマ支配への期待はもはや時代錯誤であることをあらためて確認しよう。)
【テーゼ5】ウェーバーの官僚制は今日、新自由主義への防波堤として読むことができる。(これは著者の近著等であらためて詳細な議論が展開されるようだ。)