あらすじ
2000以上の古美術商がひしめくロンドンの中心地セント・ジェームズ街にある、欧州屈指の古美術商スピンク・アンド・サン。
日本人として初めて勤務した著者が書き下ろした自伝的エッセイ。
講談社エッセイ賞受賞作。
〈解説〉大竹昭子
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Posted by ブクログ
20年以上前に書かれたエッセイ。もっと早く読みたかったと思う一方、加筆修正された版を今読めたことに感謝したい。
ロンドンの骨董街というタイトルに惹かれて手に取った。骨董とは全く縁がない人生なのだが、紳士のイメージのある英国ロンドンと、骨董というある種いかがわしさを彷彿とさせる物との組み合わせに興味がそそられた。
骨董の蘊蓄や老舗に就職できた自慢話が少々出てもおかしくないのに、そういった印象を少しも感じさせない筆致。そして、筆者の目を通した景色の美しさ、人や骨董への冷静な眼差しと思考、誠実に淡々と描写されていると感じた。
イギリス人の本質の一部、人種や階級社会の隔たり、歴史の堆積に対するものの考え方。
骨董だけではない、いや、骨董から通して見たそれらの思索を深めることができた。
Posted by ブクログ
イギリス人の隠れた本心、話し方や住まいから見える階級社会。それらをさらりと描いている。最後の章で、美術商が病を患い淡々と「これが人生というものでしょう」というシーン。同じ状況になって自分はそんなふうに言えるのか、と思ってしまった。
Posted by ブクログ
1997年に執筆されたとのこと、まだ上流階級がアンティークに大金を投下していた古き良き時代。
しかしそんな華々しい世界の陰湿さに、著者は独自の視点でずばずば斬り込んでいく。
非常に冷静な分析が印象的。
そしてタイトル通り、骨董でも骨董街でもなく「骨董街の人びと」が主題。
イギリス人が骨董を“自然体(イン・シツ)”で守ってこられた理由が感じられ、それが失われつつあることに無念さを覚える。
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて購入。
骨董をテーマにイギリスの歴史や国民性に触れられた気がする。
個人的に、序盤のような下町の人々と骨董の関わりのほうが好みだった。
中盤以降は筆者が伝統的な古美術商に勤め始めてからのエピソードになり、骨董品の薀蓄やイギリス上流階級の暮らしや国民性などが描写されている。これもとても興味深いものではあったが…
気になったのは、イギリスを肯定的に日本を否定的に評価している部分が多いこと。
階級社会が残るイギリス、その中でも高額な美術品を購入できるような上流階級を相手にする老舗の古美術商が舞台であること、当時の日本がバブルを経験していたことなど、社会や時代背景もあり仕方ないとは思うが、伝統や芸術に理解のあるイギリス、それに比べて日本は…という表現が多く感じて鼻についた。
個人的に興味を惹かれたのは、イン・シツという考え。
美術品、骨董品を競売に掛ける時、それらの品が使われたままの状況にしておくこと…らしい(絵は屋敷の壁に掛けたまま、のような感じ)。
あるがままを愛するということだろうか。道具は使ってこそ、使われてこそ本望…というような。その道具の「あるがまま」を評価するような考えがとても美しいと思った。