あらすじ
本シリーズの特徴は話題の些末さ、否、多方面性のため、なかなか進まず、本題が何か忘却、否、もともと本題などない、というまさに人間の思考、会話、関係を象徴する点にあったのだが、前作で人気作家となりし水柿君なんとあっさり断筆、作家業を引退宣言。限りなく実話に近いらしいM(水柿)&S(須摩子)シリーズ、絶好調のまましみじみ完結!
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Posted by ブクログ
『嘘で固めることは、真実で固めるよりも、ずっと才能が要求される。一番簡単なのは、嘘と真実をよく掻き混ぜて硬化させる手法である。』
「よくわかんないけど、まあ、でも、将来性はないみたい」
「将来性なんて、たいていのものにはないよ」
「研究の?」
「いや、研究以外でも」
「踊るロボット目当てで並んでいるみたいだけれど、どうして? ー だって、どう見たって人間が踊った方が凄いでしょう? 人間よりも劣っているロボットじゃあ、話になんないわよね」
「超観覧車、乗りたぁい」
「超は副詞だから、観覧車超乗りたい、と言わないと駄目だよ。超観覧車っていう、もの凄い観覧車があるのかって誤解されるよ」
「そのつもりで言ったんだけど、私」
「超失礼しました」
「いやいや一般論。ようするに、仕事をしていたい人がいる、というか、仕事があれば立場が確保されるし、そこにお金も人も集まるってことだよね。長い歴史の中でそういう循環ができてしまったわけだ」
「珍しいよね、君がそういうこと言うの? もしかして、将来、参議院とかに出るつもり?」
「投票なら行っても良いけど」
『広い敷地内で二人だけでは少し寂しい。もう少しほ乳類密度を増やしたい、と彼らは考えた、はあと。』
「ドンか、それは威厳があるね。ドナルドの略になるのかな」
「ゴードンっていう機関車がいるじゃない、青の」
「機関車?」
「あの、ゴードンのドン」
『念のため書いておくが、世の中のすべての小説はフィクションであって、その約六十パーセントは冗談で書かれいるし、残りの四十パーセントは単なる嘘にすぎない。』
「ああ、可愛い ー イラクへさ、子犬を沢山送ったら、平和になるんじゃない?」
「可愛いよぉう ー 人間の子供なんか、目じゃないね」
「いや、人間の子も、自分が産んだら、これくらい可愛いんじゃないかな」
「こんなに可愛いわけないでしょ。鼻とか黒くないし、耳も気持ち悪いし」
「まあ、そりゃ犬じゃないからね」
「おしっこは、ケージの中でしてくれたら、どんなに嬉しいかしら。ケージの中でしてくれたら、天にも昇る気持ちになれると思うの」
「そんなシェークスピアみたいな台詞、通じないと思うよ」
「今ではもう、私の人生における悩みはあなただけ。おしっこはケージの中でするのが清々しいと思うわ。そうでしょう? そうすれば、薔薇色の世界が私たちの前に開けてくるのよ。ほら、想像してごらんなさい。素晴らしいわ。すべてのものが私たちを祝福してくれるでしょう。幸せがどんなに素敵なものか、考えたことがあって? ほんの少し、とっても小さなことなのよ。おしっこさえ、あそこの中でしてくれたら、あなたは神様に祝福されて、すべての力を手に入れることになるでしょう」
「そうかぁ、満たされていれば、悪いことはしないってわけね ー 子犬を飼えば、誰も悪いことはしないようになるんじゃないかなぁ」
『「この花はどう?」と片方がきけば、
「うん、いいんじゃない」と答える。
つまり、それは君の自由だよ、という意味であって、私は強くは否定しない、ただ、私は私の好みのものを買いますから、ということなのである。お互いの趣味をすり寄せて調整するようなことはけっしてない。そうすることが、お互いの感性や自由を尊重することだと考えている。』
「本当に鼻が高いわ。水柿さんのところは、犬まで上品だって」
「え、そんなこと言われたの?」
「言われてないけどぉ、そういう目で見られているかもでしょう?」
「もの凄い希望的な観測じゃないかな、それ」
『あるゆるコマーシャルが、水柿君にとっては逆効果になる。「こんなに宣伝しているところをみると、よほど品物が売れなくて余っているのだろう」という発想だ。』
『何が言いたいのか、というと、あの「燃えないゴミ」という命名が間違っていたのだ。もっと正確な日本語を使っていただきたい。ここに改めて、水柿君の意見を書いておくが、あれは「燃やしてはいけないゴミ」が正しい。有害物質が出るからだ、となんとなく想像できる。もう少し情報を多くし、気持ちを込める場合には、「燃やそうと思えば燃えないこともないが、だからといって安易に燃やしてしまうと各方面でそこそこの不都合が起きるゴミ」と呼ぶのが正しいだろう。』
『人間はいつでも、自分にとって一番価値のあるものを選ぶ。価値が見えないときは、価値がありそうなもの、あるいは、いずれ価値が出そうなものを選ぶ。無駄なように見えても、けっして無駄は選択されない。その人が信じる最善の道を必ず選んでいるのだ。怠けた方が良いと思うから怠ける。罪を犯してでも欲しいものが手に入る、そちらの方が良い、と思うから罪を犯す。人を裏切ってでも、自分の思いどおりにしたい、と思うから人を裏切る。人を愛した方が、自分に価値がある、と考えれば人を愛するだろう。全部同じだ。誰もが自分の欲望のままに生きている。ただ、価値を見出す道理が、それぞれで違っているにすぎない。』
『なんと自由になったのだろう、とときどき感じる。子供のときは数々の束縛があった。自分の思うとおりにはいかないことばかりだったではないか。集団生活を強いられたし、ノルマを課せられた。そして、大人になっても仕事がある。他人との関係を保つために多くのエネルギィを費やした。勤勉に働いて、その対価をもらう。稼いだお金だけが、すなわち自分の自由である。それによってのみ、自分の時間を得ることができたのだ。』
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水柿助教授、通称Mシリーズ第三弾。最終巻である。
相変わらずの水柿先生と須磨子さんのほのぼの夫婦生活に突如として入り込んできた可愛いの三乗くらい可愛いシェットランドシープドッグ、パスカルとの物語が主軸と言えば主軸。けどこの小説に軸なんてないし、考えながら読む物語でもない。パスカルかわいい須磨子さんかわいい、と悶えながら読むのが正解ですね。たぶん。
最終巻ということでどんな終わり方かと思ってドキドキしていたら、そんなんでいいの、というようなアレだけれどそこらへんもMシリーズならでは、って感じでしょうか。
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水柿くんと須磨子さんの生活に憧れる。自由とお金への言及が少数意見かもしれないけど、とてもリアルだった。うまくいえないけど、サラサラ読める小説だった。
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「工学部・水柿助教授の解脱」森博嗣
エッセイ風私小説。藁半紙色。
他のレビューで書いたかもしれませんが、自分、森博嗣の小説が体質的にあわないようで…
これだけ売れてる作家さんの作品で、「あ、無理」ってくらい読めないのは珍しい。
一応10年間のうちくらいで、「すべてがFになる」「四季 春」「スカイ・クロラ」を読んだんですが、全部苦手でした。。
そんな自分が唯一、そして他と対照的に大ファンな森博嗣作品が「水柿助教授」のシリーズで。
とうとう終わってしまいました。
この理系風味というか、論理的雑談というか、大好き、はぁと。(作中表現より)
他作品でこれと似たような雰囲気のものがあれば是非、読んでみたいですね。
☆4.5のくりあげ、(5)
Posted by ブクログ
シリーズ3巻目にして最終巻。
小説家として成功し、一気に生活水準が上がった情景が描かれつつも、根本的な部分は変わらない。
ふわふわと話が色々なところへ飛んで行き、いつの間にか戻ってきている。または、戻ってきたと錯覚させられている。
そんな話。
Posted by ブクログ
森氏のほぼ自伝っぽいフィクション小説(笑)もこれで完結。
ラストのSF落ちはベタ過ぎて突っ込みを入れたい衝動にかられたけれど、そこも森氏…じゃなかったw 水柿君らしさがよく出ていて面白かった^^
例え巨額の富を手に入れても、どこまでも己の信念を曲げない水柿君の生き方が、驚愕であり、羨ましくもあり、笑えるところが本作の良さ…かな?(笑)
Posted by ブクログ
本人は否定しているけど、ほとんどが事実をモチーフにしたエッセイに思える
実際と違うところは子供がいたり、パスカルは2代目だったり、大学も辞めてたりするけど、そんなところはメインには影響しない
最後は森小説らしいオチがついている
ある意味でサービスなのかもしれないけど、受け入れられない人も多かろう
日常系とも違う、新たなジャンルかも
まぁ、それが成立するのは森博嗣だからこそでしょうけど
Posted by ブクログ
明確なストーリーがあるわけではないけど、これにて水柿君シリーズ完結。
意外とあっさり終わってしまったけど相変わらず会話も地の文も跳ねまくってる。
水柿君は引退してしまったけど森博嗣にはまだまだ小説を書き続けてほしい。
Posted by ブクログ
シリーズ最終作ということですが、
フィクションという態の暴露本だと思って読んでるので、
なんとも残念でした。
しかしその自分の期待に大きく応えてくれる、
大ヒットを生み出した作家の日常が見えるというのは
非常に夢のある内容でした。
50億円の資産と毎月1000万の収入。
使っても使っても使い切れないほどのお金。
そんな状況になったら、きっと趣味に没頭できるんだろーな。
なんて思ったりしました。
Posted by ブクログ
ついにシリーズラストになってしまった。
初っぱなからこのシリーズでお馴染みの叙述トリック(笑)でニヤニヤしながら読んでいましたが、ラストに近づくにつれて寂しさが…そして断筆なんて….
最後の数頁にはすっかり悲しくなってしまいました。
うぅ~、水柿くん、須磨子さん、すきぃ。
Posted by ブクログ
適当に読んでもいいシリーズと思って油断してたら、最後何。唐突にシリアスになった?と思いきや、変なオチだった!変になり方が、このシリーズっぽくなくて、不思議な感じだった。これが解脱?
もし自分が小説を書いたとしたら、途中で飽きた時にこういう風に終わらせるかも、と思った。
水柿君は、筆者自身のようでいて、全然違うと思う。筆者がそういう考えの人だから、登場人物もそういう人なだけだと思う。想像でしかないから、読者がどう捉えるかの問題でしかないが。
Posted by ブクログ
作家として大成功した水柿助教授の日常。
ファンに対しての意識や自分の作品への無関心さが水柿助教授らしい。
小説家になった利点が買いたい物を買えること。
しかも億万長者なので規模が違う。数千万がさらっと出てくる。
3巻目でもダジャレや言葉の連想ゲームがポンポン出てくるのが凄い。
ただ最後のオチが??ってなったかな。
Posted by ブクログ
再読。水柿助教授を主人公とした「日常」「逡巡」に続く話であり完結編。今作も意味があるようなないような一周回って哲学的とまで言えるかもしれない事が書かれている。この三部作で一番面白く感じたのは「日常」だったけれどそれは水柿くんと須摩子さん以外にも色々な人物が登場していてその上に謎が多少はあったからだと今になって思う。この作品を読んで別作品の「相田家のグッドバイ」をちょっと思い出した。
Posted by ブクログ
水柿くんシリーズ完結。ついにミステリー要素まで”解脱”。犬成分多め。今日も水柿家は平和です。
某大作家のいう「話らしい話のない」小説とはこのことかもしれない(違うか…)
これは小説だと思って読むべし。
Posted by ブクログ
前2作同様に次から次へと関連性のない話が展開されていき全く飽きない内容。他の森博嗣作品を読んでいれば大変楽しめると思われる。しかし読めば読むほど著者自体の執筆活動に対する意欲を心配してしまい不安になるという問題作。
Posted by ブクログ
限りなく実話に近いという水柿助教授シリーズ、第3巻。
これで水柿助教授シリーズは完結だそうで、ちょっと残念です。
小説の水柿助教授も小説を書くのを辞めましたが、作者である森さんも近々断筆されるそうで、それも残念です。
このシリーズの面白いところは、小説らしくないところです。
どういう意味かは読めばわかります(笑)
そんな小説です。