あらすじ
犯罪を「したくなる」環境と、「あきらめる」環境がある――。物的環境の設計(道路や建物、公園など)や人的環境(団結心や縄張り意識、警戒心)の改善で犯罪を予防する方法を紹介。
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Posted by ブクログ
「犯罪者」と「非犯罪者」とに実は明確な差異はなく、悪意や犯意を持った者がいても犯行を可能とする機会を得られなければ犯罪は起きず、逆に、悪意や犯意を持たない者であっても偶々そういう機会に恵まれてしまったら犯罪は起きてしまう。ならば、犯罪者一人一人を分析して犯罪の芽を摘もうとするよりも、犯罪を起こさせ易くするような機会や場所を潰すことこそが、効率的に犯罪を防止することができる、というのが著者の主張である。
実は、私はこの本が出る十年も前に、全く同じことを語った本を読んでいた。京極夏彦氏の魍魎の匣 (講談社ノベルス)である。
この作品では、登場人物の陰陽師は、動機とは「世間を納得させるためにあるだけのもの」であり、あくまで副次的なものとし、犯罪行為を行わせるのは、そう仕向けるナニモノカ、つまりは魍魎や通り物と呼ばれる「妖怪」だと言う。そこで次に登場する本が悪魔のささやき (集英社新書)だ。
この本では、そのナニカを「妖怪」ではなく「悪魔」に例えている。そして言う。悪魔はただ「ささやく」だけ、と。
人間は常に、やじろべえのように善悪の境を行ったり来たりしている。悪魔や魍魎のささやきに負ければ悪事をし、勝てば踏み止まる事ができる。
ささやきに負けぬよう精神を鍛え、ささやきに負けた人間がいても犯罪が起きないよう地域住民が地元を監視し必要とあらば整える。人々が自他共に管理ができるようになれば、犯罪は起き難くなるのではないか、と私は考える。
Posted by ブクログ
犯罪というと犯罪心理学からのアプローチが多い印象があるが、本書は「犯罪を可能にする、可能にしにくい環境」という点から述べられている。
犯罪心理学的な考え方では予防がしにくいため、まずは環境を整えることで未然に防ごうという考え方には同意。
大学の先生だけあって書き方が論文調で、英米の取り組みと日本の比較、日本に転用するとしたらどのようにできるかということが丁寧に書かれている。
・伝統的な犯罪学は、「原因」をキーワードにして事後対策を重視。新しい犯罪学は、「機会」をキーワードにして事前対策を重視。
・「割れ窓理論」:割れた窓ガラスが放置されているような場所は、犯罪者は警戒心を抱くことなく侵入することができ、さらに「見つかっても通報されないだろう」などと思って犯罪を実行しやすいということ。