あらすじ
クールでビターな本格探偵ミステリ。
日本のハードボイルドの新たな夜明けはいつ来るのか?
効率化とフェイクの時代に「ほんとうの探偵物語」を模索する主人公から目が離せない。
――法月綸太郎氏
パズルだけでは味気ない。感傷ばかりじゃ満たされない。
私立探偵小説でしか味わえないミステリの美しさが、ここにはある。
――櫻田智也氏
「何者か」になりたい若者たちの熱量が心に刺さる。
不器用で愛おしい美学に心が震える、そんな素敵な“ストーリー”でした。
――ヨビノリたくみ氏
「古着ってのはストーリーだから、あのデニムには価値が出たわけ」。私立探偵の苗場は古着屋の店主から、希少なヴィンテージデニムを持って失踪したアルバイトの捜索依頼を受ける。やがて苗場が到達した意外な真相は――(「ヴィンテージ」)
開業資金を持ち逃げした自称実業家の男。苗場は被害者から依頼を受け、男の隠れ家のビルを突き止める。しかし男は、乗り込んだはずのエレベーターから忽然と消失してしまい――(「溶けるように」)
若き私立探偵が遭遇した5つの事件。
クールでビターな、令和の本格探偵ミステリ。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
現代ならではの、現代を舞台とする必然性のある私立探偵小説だったように思う。また、著者のハードボイルド小説に対する造詣の深さが垣間見える短編集だった。最終話で「自己の暗い過去との対峙と決別」のきっかけを与えてくれたのは主人公より10歳ほど若い人物だったが、歳若い人物からそれを与えられた、すくなくとも主人公が彼女に影響されたということは、そのひとつ前の話に登場する中年の人物のような「大人」に主人公はなっていない、すくなくとも少女の目からは「decent」な(きちんとした)人物に映っていたからだろう。
付け加えると、「苗場です。伍動事務所の」というセリフは原尞の沢崎シリーズにおける「渡辺探偵事務所の沢崎です」を意識しているのだろうし、最終話は結城昌治の真木シリーズを思わせる(ロスマクよりこちらだと思う)出来で、探偵自身にも家庭の悲劇がという「探偵自身の物語」はネオ・ハードボイルド由来のものかもしれないと感じた。日常における謎をハードボイルドで描くのは、リューインの『父親たちにまつわる疑問』も影響しているのかもしれない。ただ、こういった些末なことを抜きにして、物語を楽しめたのでこれらは蛇足であるが……。
あと、作品中て発せられるセリフに出てくる言葉に関連して、『探偵は眠らない』っていう翻訳ハードボイルドアンソロジーがありましたね(これも蛇足)。
Posted by ブクログ
初めて読む作家さん。
久しぶりに正統派のハードボイルドに出会った。
《伍動事務所》の探偵・苗場清志郎が主人公。
古着屋のヴィンテージジャケットと共に姿を消したアルバイト青年
デビュー直前に連絡が取れなくなった女性ボーカル
苗場の元恋人が依頼してきたストーカーからのボディガード
密室状態の雑居ビルから消えた男
家出した中学生の少女を見つけたその後
序盤は何となくこういうことかな、と思い当たる構図ではあったが、前向きになれるような話で新鮮な感じ。
だが中盤からテイストが変わってくる。
様々な構図を推理し、そこに向かって攻めの調査をしたり、タイミングを逃がさず対象者を炙り出したりという姿勢は原寮さんの沢崎シリーズのよう。
苗場自身に何かしらの訳ありな感じも匂わせる。
後半の二編は死体も出てくる。
だがその結末は違っている。そこは苗場の訳ありに関係があるのだろう。
苗場が『自分自身も含めて』『色んな人を』『許して』あげられる日は来るのか。
シリーズ化して欲しいと作品。
作家さんの他の作品を調べてみたが、探偵物とは違うようだ。