あらすじ
谷中・根津・千駄木。かつてこのまちを闊歩した二十五人の物語。お雇い外国人教師ベルツ、本妻と愛人を行き来したサトウハチロー、怪談と幽霊画の三遊亭円朝、昭和恐慌で没落したヂエモンとその一族……。地域雑誌を編集するなかで出会った、不思議な魅力あふれる人物たち。その路上の肖像を掘り起こす。
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Posted by ブクログ
千年以上の歴史を誇る京都とは違い、東京は江戸幕府以降に都市となった土地だ。
でも、明治維新で大変化を遂げ、元大名屋敷だった建物は残り、持ち主が変わった。
その後、関東大震災で壊滅の危機に瀕し、さらに東京大空襲で焼土と化す。
何度にも及ぶ破壊を生き抜いてきたのが、今残る、昔ながらの土地建物なのだろう。
この本の主役はもちろん、東京という土地を通り過ぎていった人々であるが、歴史を生き抜いてきた土地や建物も、人を動とするなら、静の主役であると思う。
土地が変わっていくのは仕方がないけれど、残せるものは残して欲しい、と思うのだ。
最後の、渡辺一族の話は、印象に残る。
短期間に財をなし、昭和二年の買い付け騒ぎであっけなく滅びたお大尽…
あらためて東京散歩がしたくなったが、文庫版あとがきで作者は、最近の軽薄な谷根千ブームに立腹している。
そういうブームが更なる東京破壊を呼ぶからだろう。