【感想・ネタバレ】イプセン 人形の家のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年07月24日

>遅くまでペンを執ったわ。本当に、何度もふらふらになったわ。それでも、そうやって働いて、お金を儲けるのは、とても面白かったわ。まるで男になったような気がしたの

>法律は決して動機を問いません。
>じゃ、それは、とても悪い法律よ。
>いいえ、そんなことありっこないわ! だって、愛情からしたんですもの...続きを読む

>しかし、お前が、自分独りで何の処理もできないからって、おれの愛が薄らぐと思らかね? いや、いや、ーーおれに寄っかかってればいいんだ、ーー助言もしてやる、指導もしてやる。そういう女の無力さは、二倍も魅力的なんだ。そのお前がわからなければ、おれは男といえやしないさ。
おれが大きい翼をひろげて、お前をかばってやるからね。 ああ、何てわが家は気持ちがいいんだ、ノーラ。ここならお前も安心だ。おれが守ってやるんだからな、タカの爪から無傷でおれが教い出したハトのように。まだ動悸を打っているその胸も、鎮めてやるよ
男というのは、 妻を許した、ーー心の底から本当に許したんだ、と自分で認めて、そういうことに何とも言えない心地よさ、 満足感といったものを持つものなんだ。それで妻は、 二重の意味で、彼のものになったようなものなんだ、ーー彼は妻に、新しい生命を与えたようなものだよ。 妻は、言わば、彼の妻であると同時に子供にもなる。お前も今日からはそうなんだ、途方に暮れた、寄る辺ない小っちゃな赤ちゃん。何も心配はないんだよ、ノーラ、ーーただ、何でもおれに打ち明けるんだ、そうすれば、おれがお前の心とも、良心ともなってやる

>あたしはとても間違った扱いを受けていたのよ、トルヴァル。最初は。パパに、それからあなたに。
何だって! われわれ二人に、ーー誰よりもお前を愛した二人にだって?
(頭を振って)あなた方は、あたしを愛していたんじゃないわ。ただかわいいとか何とか言って、面白がっていただけよ。
何てことを言うんだ。ノーラ!
ええ、そうなのよ、トルヴァル、パパと一緒にいたころ、パパは何によらず、自分の思うことをあたしに言ったわ。だからあたしも、同じように考えた、 ーーそして、もし、考えが違えば、あたし、隠したわ、ーーだって、パパには気に入らなかったでしょうからね。パパはあたしを赤ちゃん人形と呼んで、あたしが自分の人形と遊ぷように遊んだわ。それからあたしは、この家へやってきたーー
>でも、あたしたちの家は、 ただの遊び部屋だっただけよ。あたしは、あなたの人形妻だったのよ、 実家で、パバの人形っ子だったように。それに子供たちが、今度はあたしの人形だった。あたしはあなたが遊んでくれると、うれしかったわ、あたしが遊んでやると、子供たちが喜ぶように。それがあたしたちの結婚だったのよ、トルヴァル。
お前の言うことにも、もっともなところはある、 ーーやけに誇張して、大げさだがね。しかし、これからはそうはいかんぞ。 遊び時間は終ったんだ、ーーこれからは教育の時間だ。
誰の教育? あたしの、それとも子供たちの?
お前と子供たちの両方だよ、ノーラ。
ああ、トルヴァル、あなたはあたしを、あなたのいい妻に教育できるような人じゃないわ。

>あたしには、 そんなことできないわ。それより、もっと、先にしなくちゃならないことがあるのよ、 自分を教育しなくもゃ。それを手伝ってもらうなんて、あなたはそういう人じゃないのよ。あたし、独りでやらなくもゃならないことね。だから、あなたと別れるのよ。
>自分のことや、世の中のことを知ろうといろんですもの、それには独りきりならなくもゃ。 だから、もうこれ以上、ここにいるわけにはいかないのよ。
>お前は何よりまず妻で、母親だ。
そんなこともう信じないわ。あたしは、何よりもまず人間よ、あなたと同じくらいにね、ーー少なくとも、 そうなるように努めようとしているわ。そりゃ世間の人たちは、あなたに賛成するでしょう、トルヴァル、それに、本で言っているのも、そういうことよ。でも、あたしは、もう、世間の人の言うことや、本に書いてあることには信用がおけないの。自分自身でよく考えて、物事をはっきりさせるようにしなくちゃ。

「現代悲劇のための覚え書」
しかし現実の生活では、女性は男性の掟によって裁かれる、彼女が女性でなく、男性であるかのように。
この戯曲の人妻は、最後に何が正しく、何が正しくないかということがわからなくなってしまう。一方にある自然の感情と、他方にある権威への信仰が、彼女を大きな混乱に陥れてしまうのだ。
女性は、 現代社会では独立の人格となり得ない。この社会はまったく男性のものであって、男性が作った法律によって、男性の立場から女性の行動が裁かれる。
>女は実際的でないとか、 裏でこそこそやるというなら、男は違うと断言できるか。いったい男たちは、女性に同等の権利を与えることになぜ恐れを感じるのか?
>この作品が古めかしい「女権」問題の社会劇とされたのは時代のせいだが、イプセンがこの戯曲で示したのは、 何よりも自分自身が何者なのか、まずそれを確かめるのが人間の義務であり、そういう人間になるべきだ、ということだと言ってよかろう。そういうことに迂闊だから、愛や結婚の真実も見えなくなってしまうのである。イプセンはそれをきわめて日常的な衣裳で、そして無駄のない台詞、単純な筋運びで展開し、リアリズム演劇に一エポックを画したのである。

守ってるんだか閉じ込めてんだかなまるで人形か赤ん坊みたいなかわいがり
いや~~~すごい…1879年・・・ 男性が女性を抑圧する権力構造にかなり自覚的じゃないと書けないよね?

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2012年03月15日

19世紀にフェミニズムを描いたノルウェーの戯曲。
この時代は当然となっていた家庭での「男の権威」と同時にあった女性への卑下(嘘により家庭を駄目にし子供を堕落させうるのは母親、なんて文も)。
そんな「当然」の中で夫婦をあくまで対等の存在だ!というのは相当衝撃的な主張だったそうで。「今まで自立できな...続きを読むい人形のような自分だったから」という理由で家出したノーラの行動については論争が起こったほど。現代ですらいかがなもんかと言われるやも。

個人的に印象的だったのは夫のヘルメルがノーラをただ可愛がってただけで、結婚してから8年間真剣に話したことはなかった。可愛い娘が父から夫の手に移っただけ。それは人形みたいな扱い。という事態。
これは少なくとも現代の恋愛観にも通じるものがあるんじゃないかとさえ思えた。うまく一緒にやっていくためにはただ魅力を感じるだけではダメで、表面的でない次元まで話すような過程が要るんだと思った。
フェミニズムをうたった物語だが、久々に考えさせられた本でした。

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Posted by ブクログ 2011年05月25日

三幕家庭劇。
 劇脚本。
 未亡人視点。
 因習に縛られて放蕩していた夫の元に留まらなくてはならなかった女性の物語。未亡人になった彼女は息子のために夫の偽りの名誉を保とうとするが、結局は親の業(遺伝病)を受け継いだ息子は精神を病み、彼女は追い詰められる。

 五人劇。人数としては学芸会に最適ですね。...続きを読む 内容は……まあ微妙ですけど。
 ヘレーネ(苦労した未亡人・アルヴィング夫人)オスヴァル(息子、画家)マンデス(人の噂や評価ばかりを気にする牧師)エングストラン(レギーネの義理の父。指物師、詐欺師? ちんぴら)レギーネ(アルヴィング夫人のしたたかな召使)

 幽霊は実体のないもの。つまり、因習とか業。それが色濃く出るのは、オスヴァルがレギーネに戯れかかっているのをヘレーネが目撃した時に。
 レギーネの母はアルヴィングとの間にレギーネを作っていたのだ。そして、兄妹であることを知らない二人はいちゃついていて、それにヘレーネは大きなショックを受ける。
 オスヴァルはだが、レギーネが妹だとは知らなくても、その人柄を存分にわかった上で彼女を妻にしようとしていた。彼は不治の病で、痛み止めのモルヒネを溜め込んでいた。次に発作が起きた時、それを飲ませて、人生を終らせてくれることを祈っていた。母はダメだった。
 レギーネなら、薄情だから、病人の世話なんかすぐに嫌になって、やってくれるに違いない、と。
 まさにそうです。レギーネは言います。
「こんな田舎にぐずぐずして、病人の看護に一生費やすのは嫌」そして出て行く。まったく、素直な女性ですね(苦笑)
 ラストは息子が発作を起こす。太陽、太陽と抑揚のない声で呟いて。ヘレーネはモルヒネを使おうかと迷い、「いや、いけない」と金切り声で叫んで、恐怖のあまり立ち尽くす。 かわいそうです。牧師が全部悪いんです。  

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2014年06月15日

たった二日間の間に起きた出来事により、
夫婦の心のすれ違いに気付き離婚までに至るという
スピーディな展開の物語。

現代、この様な作品はたくさん出回っているが、
140年以上前に描かれたというところに驚かされる。

結婚している者、特に女性側がみると、本当にあるあるで、
林真理子さんなどの現代小説を...続きを読む読んだかの様に最後は共感できる。
つまり男女間の心の溝は今も昔も普遍的なものなのだろう。

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