あらすじ
私たちはなぜ、いつも「大変!大変!」と言っているのか? もしかしたら、大変なのは、経済や社会や時代ではなく、そういうふうにしか考えられない私たちの頭のほうかもしれない――。科学への無邪気な信仰、個性尊重という錯覚、独創的な名前の子の増殖、まだまだ世界は発展するという思い込み……私たちの奇妙な固定観念を考え直す。(講談社現代新書)
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Posted by ブクログ
この人の視点は面白い。東日本大震災でまだ状況がよくわからないときの対処方法、考え方など納得できる。SNSの果たした役割など、言えそうでいえないこと。こういう人は信頼できる気がする。
Posted by ブクログ
最初にタイトルから受けた印象とはかなり違う本だった。
「いつだって大変な時代」という、さも当たり前な共通認識を疑ってみる。
そしてそこから派生する自己愛だったり身体性の無い情報だったり、世界は発展し続けるという幻想だったりと、いろいろな観点から切り込んでくる。
ハッとさせられる良書だった。
Posted by ブクログ
「今は大変な時代だ」というのは、人である限り、普通に考えることだ。
東北で大地震があったから、原発事故があったから、ではない。
それとは無関係に人はいつだって、いまは大変な時代だと答えてしまう。
なぜならこれは、「自分が特別だ」「選ばれた」と思いたい自己愛の発露であるから。
しかし頭の奥底では、「そうとも言えないぞ」という視点、内なる他者性ももっておいたほうがいい。
いろいろ便利だし、時にはラクだし、ほんとに大変な時にはそれがまた有効な考えである、ということに気づかせてくれる本である。
「今は大変な時代だ」とはペテン師の常套句でもあるのだよ。
以下目次
第1章 歴史は繰り返し美しく歪められる
第2章 科学とはただの妄想かもしれない
第3章 19世紀的ハイテンション気分の果て
第4章 個性の尊重で世界はどんどん歪んでいく
第5章 子供の名前を自由に付けてはいけない
第6章 無縁社会はみんなの努力の結果である
第7章 政府も東電も「他者」ではない
第8章 だから、いつだってふつうの時代
終章 ほんとに大変なときのために
Posted by ブクログ
本当に大変な時代って言うことが多くなり、ときどき本当に今が大変な時代なんだろうかって思うようになった時に見つけた本。そうなんだよ、いつだって大変だったはず。でも、過去のことはいい思い出になりやすいから、今が大変って思っちゃうし、本当は、大変だ大変だって思うことでしか生きていけない私たちが「大変な」問題なのかもしれない(笑)
一方で経営者が景気が良くなれば、、なんて言う話があるし、アンケートでも「景気の回復はいつごろになると思いますか」ってあるけど、景気なんかいつだってよくはないって言うのに通ずるものがあった。
Posted by ブクログ
「今は大変な時代だから」はつまり「おれは忙しいんだよ」の亜種ですね。
なんとなく変わっていく状況と、
実は変わっていない状況とを混同してはいけない。
今嘆いていることは、過去に自分が選んできたことの結果でもある。
落ち着いて考えれば分かること、見えることがたくさんあるのだ。
Posted by ブクログ
今の日本の社会のシステムの中でのもやもやしているものをこんな風にもやもやしていますと教えてくれている本。人の考え方のベースになる部分、当たり前の部分の考え方を揺さぶってくれる本です。
読後のもやもや感は今も晴れませんが、物事ちょっと深く考えてみようと思わせてくれました。
Posted by ブクログ
ものの見方はさまざまであるということ。改めて感じさせられた。
「第六章 無縁社会はみんなの努力の結果である」
だけでも読んで欲しい。
血縁・地縁など、さまざまな縁から自由になるために、われわれは無縁社会を選んだのではないか?
結びつきというものが、一義的にいいもののように語られているが、それはわれわれが重荷として切り捨ててきたものではなかったか?
その結果、本当に「さびしい」だけの人生を送ってきたのだろうか?
どちらがいいというのではなく、両方、またはさまざまな視点で見ることが大切。
Posted by ブクログ
「いまは大変な時代だから」は、いつの時代にも言われていたこと。だから「いつだって大変な時代」。
気象予報・少子化・無縁社会・子どもに付ける変な名前など、ある意味達観した諦念と独自の歴史感で鋭く突っ込んでいく。
カンケーないけど、最近の本は震災以前に書いた内容を、震災を材料に論拠を補強するパターンが多い。
Posted by ブクログ
いつだって大変な時代なのだ。
事後に大変だと塗り替えられることもあれば、突き詰めていくと実はぜんぜん違うものがみえることもある。
著者は、あれ?と思ったことをなぜ?に置き換えて、思索を続けるているのだろう。
梅雨入り宣言なんて大きなお世話だし、歴史的な転換点など当事者にはわからない。
いつのまにやら個人が尊重されていると錯覚してしまったことで世の中がねじれちゃった。
無縁社会を嘆くのはナンセンスでそれは団塊の世代が望んだことじゃないのか。それをいまさら大変だとは。
社会で起きていることへの人々のカンチガイを指摘する。
とはいえ、東日本大震災のときにツイッターは役に立ったかというくだりは、明らかに甘い。
ツイッターは生存確認で役に立っただけではなく、帰宅難民の情報収集にとても機能したのである。
ほかにも、若干、思考が浅いところがあるのがやや難。
Posted by ブクログ
よく使われる「~が今ほど重要な時代はありません。」って言葉に違和感を感じていた。このもやっとした感覚を明快な言葉で整理して解決してくれる。腑に落ちる解釈がちりばめられていて嬉しかったな。
Posted by ブクログ
著者みたいにこんなふうに、世間を醒めた目で見ていたい。確かにいつだて「大変だ」「大変だ」って、先走っていたような気がするなぁ。いつだって「世の中は不景気」だったし「未曽有の事態」だったし「正念場」を迎えていた気がする。そんなことないんだよね。と、大震災後に熱の上がった頭に水をかけてくれた。
Posted by ブクログ
今をどうしても切り取れないもどかしさを感じます。この今にいる私たちには今を語れないのでしょうか?今を生きているとしか言いようがないのでしょうか?
Posted by ブクログ
内容はまさにタイトル通りの本。
最近追い詰められて、神経過敏になっている社会や日本人や私のような人には、肩の力が抜けてしっくりくるものだ。
全9章あるタイトル、例えば「第5章 子供の名前を自由に付けてはいけない」や「第6章 無縁社会はみんなの努力の結果である」というのは本当に納得できる。科学に対する批判はパラダイム論とも違い、「正義を放棄してみよう」という程度の意見だとも思う。
日本の政治や外交が2流だとも3流だともいうのは、政治家個人の素質に依拠するのではなく、日本人の政治と外交の意識が2流であり3流である証左なのだけど、そうえいば、外交1流国というのは結局人情が死滅した世界に住んでいる国だなとも思う。
私たち日本人はこの列島に住んでから、ずっと大変な時代に住んでいる。そしてこれからもずっと大変な時代を過ごす。
ぼちぼちやるしかないな。
Posted by ブクログ
「今は大変な時代だから…」って毎日のように言ってる気がするな。でも昔だって大変だったわけだし、どの時代だって大変なんだ。今が大変だと思うとラクなんだよね。特に震災後は、国民が一致団結して復興支援みたいな風潮が強いけれど、一歩引いて社会を見ていきたい。
Posted by ブクログ
堀井さん版「ファクトフルネス」。しかもファクトフルネスより7年も早い。「未曽有の」「大変な」「十年に一度の」って毎年言われてる気がするけど、そんなに大変なの?という本。途中で震災を挟むのだけど、それでも少なくとも東京の人たちは「大変」じゃなかった、という意見が潔い。データに基づいて書いてあるところもあるが、基本著者の肌感覚なので、まじめに読むと説得力に欠けるところもあるけど、面白かった。コロナの状況も論じてほしい。
Posted by ブクログ
みんなが今は大変な時代だっていっていう時は、さして大変な時代ではない、ということ
ほんとうに大変なときは、それについて話せないというのは本当。
Posted by ブクログ
むむう。「プチ内田樹」って感じだなあ。まあそうだろうという部分がそれなりにありながらも、なんかこう、素直に首肯できない部分が多い。
「いつだって大変な時代」という言葉に対する洞察はハッとさせられるけど。
独特の文体は好き。
Posted by ブクログ
無縁社会についての考察が、シニカルながらも鋭かった。
個人主義を選択した自分達がトレードオフで得た結果なのだと。
無縁社会の死に様を勝手に哀れんでいる人は、理想的な死に方にとらわれ過ぎていたり、独善的思考にとらわれていたりするのだ。
政府や東電に関しても同様の論が展開される。
他人事のように文句を言うけど、我々がフルメンバーなのである。
「大変な時代」というキーワードは客観性、他者性を持って置いた方がいいよというための象徴として使われてもいた。
Posted by ブクログ
「大変な時代だ」と嘆くのはやめよう。ホントに大変な時代に生きる人は「大変な時代だ」なんて弱音を吐かない。なぜならそんなこと言っている余裕がないのだから。
著者のちょっとした視点の変え方が自分の視点をも広げてくれる。
Posted by ブクログ
常に、今が「大変な時代」だと思いたがっている(ように見える)世の中の空気について考える本。1つ言えるのは、死を意識しない人ほど、「生きるのは大変だ」と考えがち、ということ。いつも死と隣り合わせで生きている人は、決して「大変だ」などと意識しない。大変なのは当たり前だから。今の時代は、閉塞感こそ漂っているものの、客観的に見れば決して「大変な時代」とは言えない(それどころか、有史以来、もっとも「大変でない時代」ですらある)。もっとも、「大変だ」と考える人は、決して過去と比較しているわけではなく、漠然とした主観でそう思っているだけなのだけど。まあ、多くの人が「今は大変な時代だ(から頑張ろう)」思うことが、社会の発展を推進するエンジンになるのであろう。…というようなことが淡々と書かれていて面白かった。多くの面で私の価値観と合っていたかな。