あらすじ
CMにひそむ「悪魔の仕掛け」――「感染爆発」。広告代理店のクリエイティブ・ディレクター堂門(どうもん)修介は、プレミアムビール「バドバーグ」の宣伝にあたり、ウェブ中心の広告を仕掛ける。コンセプトは、口コミによる「感染爆発」。狙いは的中し、大成功と思われたキャンペーンだったが、なんと「バドバーグ」と叫びながら自殺を図る事件が頻発し……。真相はどこに? (講談社文庫)
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Posted by ブクログ
消費者は何をもって商品を購入するのか。
TVでCMを見て購入を決める人は意外に少ないような気もする。
ただし、商品イメージはCMによるところが大きいのも現実だろう。
堂門は全面的に任された「バドバーグ」のCMのために奔走する。
ようやく出来上がったものは話題を攫い、ウェブサイトの閲覧者は日を追って増加していった。
けれど、すべてが上手くいっていると思った矢先、駅のホームで不審な死を遂げた男が最後に呟いていたひと言が問題となる。
「バドバーグ」・・・そう言って男は線路へと落ちていったのだ。
どんな仕事にも責任が伴う。
大きいとか小さいとか関係なく、請け負った仕事に見合った報酬が与えられるのと同時に、その仕事への責任も当然発生する。
犯人に明確な意図はなかったのかもしれない。
それでも、自分が仕掛けた罠によって誰かの命が失われたのは間違いない。
一心不乱にひとりで歌ともいえないような言葉を口ずさむ犯人。
そこに込められていたのは、やはり暗い怨念だとどうしても思ってしまう。
サブリミナルという言葉は知っていた。
他の物語にも登場したりするし、ドラマなどでも取り上げられることがあったように記憶している。
しかし、バックワード・マスキングというものは知らなかった。
いろいろな手法を考えつくものだ。技術者たちの底知れない情熱には怖れいる。
たとえどんな技術であっても、それを扱う人間に邪まな気持ちがあったら人を傷つける凶器となる。
普段はダラっと流し見しかしないCMだけれど、もしかしたら裏側には何かとんでもない意図が隠されているかもしれない。
気づかないうちに何かを刷り込まれているかもしれない。
そんな妄想じみたことを考えてみた。
冗談ではなく、近い将来にまったく別の形のこうした手法が現実のものとなるような気もしている。
サブリミナルに堂門が気づいた時点で犯人がある程度わかってしまう。
もちろん動機まではわからないけれどちょっと残念な気がした。