あらすじ
山上徹也とは何者だったのか?
その人物像、国民の誰もが気づいていない犯行の真の動機を山上が鈴木エイトだけに対面で語った!
ついにはじまった安倍晋三元首相銃撃事件の裁判を傍聴し続けた鈴木エイトが、
メディアやYouTubeが伝えない事件の深層と、
山上の発言、真意を解き明かしていく。
そして、山上との4回計90分間の対話に成功。
山上が裁判で語らなかったこと、
語ったものの真意がつたわらなかったことを鈴木エイトだけに明かした。
山上が安倍晋三元首相を撃った本当の理由、その心中とは――。
「はじめに」より
私は判決公判の翌週、意を決して拘置所を訪ね、面会室で対面した山上徹也被告に、直接あの言葉が持つ強烈な違和感が示していたものの正体を確認することができた。
――被告人質問の徹也さんの発言のなかに、気になっているものがあります。
ほぼすべての公判を傍聴し、さらには判決公判前後に山上徹也被告と拘置所で数度にわたり面会し、私なりに事件の真相に迫ることができた。本書では、そこに至る過程を示し、世間やメディアがいまだ知ることのない山上被告の真実を追っていきたい。
(目次)
はじめに
序章 はじめて対面した山上徹也
第一章 初公判
第二章 検察側と弁護側の攻防
第三章 第一回被告人質問
第四章 二回目の被告人質問
第五章 三回目の被告人質問
第六章 安倍昭恵入廷
第七章 最後の被告人質問
第八章 求刑
第九章 山上徹也との対話
終章 統一教会系議員たちの復権
おわりに
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Posted by ブクログ
山上徹也
この名前を聞いて、誰か分からないと思った人にも「安倍元総理を銃撃した人物」、そう言えば伝わるだろうか。
2026年1月27日、山上被告に奈良地裁で検察の求刑通り無期懲役が確定した。現在は再審請求中である。
裁判官は判決の理由の一つをこう述べた。
世の中には被告人と同等やそれ以上に不遇な生い立ちを抱えながら逆境に耐え、自ら撥ね返して、自分の人生を築き、犯罪に及ばす生きている人も数多くいる。
被告人の生い立ち自体を大きく考慮すべきではない。
「アンビバレント」p214 求刑より
どの犯罪だって、犯罪を犯した人と似た境遇で犯罪を犯さない人はいる。
でも、統一教会がなければ、山上被告の母親が統一教会に入信していなければ、統一教会が多額の金銭を母親に寄付させていなければ、山上被告の父親が自殺していなければ、山上被告の兄が重い病気を患っていなければ、山上被告の兄が自殺していなければ、山上被告は今回のような犯罪を起こさなかったのではないか。
社会が放置していた統一教会の問題を、山上被告個人の問題としてしまってもいいのだろうか。という疑問が私の中には湧いている。
私が小学生の頃、母がある新興宗教に足を突っ込みかけた。
週に1度、家には信者(当時の母と同い年くらいで30代半ばの女性)がやって来て、勉強会のようなことが行われていた。私たち姉妹には子供用の本が配布され、母と一緒に教義を聞いていた。
私たち姉妹が、参加する、しない、の意思を確認されることはなく、母と一緒に聞くのが「当たり前」と言う空気がそこにはあって、私自身もそれが何かも分からず、新しいことが始まった新鮮さに少しワクワクしている部分があった。
しかし程なくして、母が急にその宗教を辞めると言って、週に1回の勉強会は無くなった。
当時のことを大人になって母に尋ねると「言ってることが矛盾していたから」と言っていた。
良いことを言っていると思って始めたけど、教義内容を知るにつれ、矛盾点に気がついたらしい。母のように意志が強く、途中で断れる人はそう多くはない。
そんな経緯もあって、私は山上被告が起こしたこの事件を、どこか他人事のようには思えずにいる。
著者の鈴木エイトさんは2002年から統一教会による組織的な偽装勧誘の阻止活動を始め、その実態を追ってきた。
エイトさんが山上被告本人に接見することができたのは、統一教会について長年 実態調査をし、山上被告からの信頼を得ていたからである。
そして、これから書く山上被告の重大なメッセージに気がつけた唯一の人物だと思われる。
読解力のある人であれば違和感を覚えるかもしれない言い回し。
でもメディアは素通りをし、その真意を汲み取ろうとはしなかった。
山上被告が第14回公判で述べたその内容は
「安倍元総理が亡くならなければならなかったのは、殺害されなければならなかったのは、間違いだったと思っております」
もし、自分が殺害したことが間違いだと思っているのならば
「殺害したのは、間違いだったと思っております」
でいいはずだ。
山上被告は判決後の弁護士との接見でこう述べていた。
「安倍元首相を失ったことで国益を損なった。非常に大きな責任を感じています」
その言葉を聞いたエイトさんはこう考えた。
彼にとって安倍元総理は「亡くならなければならなかった」「殺害されなければならなかった」のであり、安倍元総理が統一教会と関係を持ったことを「間違いだった」と彼は法廷で述べたのではないか。
中略
自分自身を自虐的に<右翼>と呼称する彼にとって、安倍元総理の殺害は<国益>を損ねる行為である一方で、安倍氏が<亡くならなければならない><殺害されなければならない>行い、つまり統一教会と深い関係を持ち、韓鶴子を礼賛するという国益を損ねる行為をしたこと自体を<間違い>と表現した。
「アンビバレント」p249 山上被告との対話より
どのくらいの人が認識しているのかは分からないが、山上被告は安倍元総理の(熱心な)支持者であった(安倍元総理を殺害した当日、彼は安倍氏が応援演説をした佐藤啓候補と比例代表は自民党に投票していた)。
その安倍元総理が、自分が最も嫌悪感を抱く統一教会に礼賛するようなビデオメッセージを送っていた。それは統一教会が政治によって保護されているに等しい状況とも言える。
これを知った山上被告の心中はどんなだっただろう。
「安倍元総理が亡くならなければならなかったのは、殺害されなければならなかったのは、間違いだったと思っております」
多くのメディアではこの言葉を
「(山上被告が)安倍元総理を殺害したのは間違いだった」
と発言したという内容で報道された。
山上被告はこの言葉をダブルミーニングとして使っている。
鈴木エイトさんが気がついた「安倍元総理自身の間違い」と各メディアが伝えた通り「自分が殺害したことが間違い」。
どれだけの人がそのことに気がついただろう。
自分はいつも目にする言葉のうち、どのくらいの意味を正しく理解できているのだろう。と不安になった。
アンビバレント。
人は日常のいろいろな場面で相反する感情を同時に抱くことがある。
いや、常にそういう感情に翻弄されているのかもしれない。