【感想・ネタバレ】夜ふけと梅の花 山椒魚のレビュー

あらすじ

「ああ、寒いほど独りぼっちだ!」。内心の深い想いを岩屋に潜む小動物に托した短篇「山椒魚」。新興芸術派叢書の1冊として、昭和5年4月に刊行された『夜ふけと梅の花』収録15篇に、同人誌『世紀』掲載の「山椒魚」の原型でもあった著者の処女作「幽閉」を併録。さまざまな文学的潮流が拮抗した昭和初年代の雰囲気を鮮やかに刻印し、著者の文学的出発をも告げた画期的作品群。

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Posted by ブクログ

井伏鱒二の最初の短篇創作集(昭和5年・新潮社刊)を文庫化した本(ただし「鯉」は含まれず、「山椒魚」ほか5作品は著者が加筆・訂正した全集版を底本としている)。

まず、物議をかもした自選全集版「山椒魚」(昭和60年、新潮社刊)について。作者はこの版で、あろうことか作品の結末部分16行をバッサリと削除してしまった。この部分は作品にとってキモとなる箇所であり、心にしみわたる文学的な感動を多くの人に惹き起こしたクライマックスでもあったから、当然賛否両論が沸き起こった。

私としても、あの「今でもべつにお前のことをおこってはいないんだ」という蛙のセリフに続く余韻が何とも言えず最高!と思っていたから、改訂版でその印象が殺がれるのを恐れて読まないようにしてきたくらいである。著者自らによるとはいえ、この改訂は文学作品に対する破壊行為ではないのか?

この問題については、「解説」で評論家の秋山駿が詳しく論じている。キーになるのは、「山椒魚」の原型となる「幽閉」という作品だ。前者は昭和4年、後者は大正14年に発表されている。本文庫には、その「幽閉」が併録されている。この二つの作品は冒頭の「山椒魚は悲しんだ」という一文以外は全く違っているが、たしかに「幽閉」のテーマは改訂後の「山椒魚」に通じているようである。

しかし自分としては、山椒魚と蛙が和解するヴァージョンに親しんきたのであり、これこそが「山椒魚」であると信じている。

他の作品に少しだけふれる。この本の最初に置かれている「朽助のいる谷間」は、最後の「一ぴきの蜜蜂」とともに、朽助というかつて実家で「私」の面倒を見てくれた山の番人が登場する話。朽助は「私」にとって心のふるさとともいうべき恩人だ。この人のお国訛り(井伏の生まれた福山地方の方言なのだろうか)が出たしゃべり言葉や手紙文が何ともいえず人懐っこくていい味を出している。

井伏の特に初期作品には意外にもプロレタリア文学の影響がある気がする。「炭鉱地帯病院―その訪問記―」や「生きたいという」は労働災害を扱っているし、また「朽助のいる谷間」ではダム建設で沈む村が描かれている。「生きたいという」の瀕死の怪我人の描写は凄絶だ。こうした社会問題に対する意識が、のちの「黒い雨」という傑作にもつながっていると思う。

そのほか「休憩時間」「シグレ島叙景」「寒山拾得」「夜ふけと梅の花」「屋根の上のサワン」など名作が目白押し。繰り返し何度も味わうべき作品群だ。

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2026年08月06日

Posted by ブクログ

この本に収録されている作品のほとんどの主人公が今ならばニートと揶揄されてもしょうがないような駄目人間で愛おしい。それだからこそそんな中にぽつんとある文学的な青春風景を描いた「休憩時間」や脱力系のオチが待っている「うちあわせ」が引き立つ。語彙や言い回しは流石に古くささを感じるけど文体としてはいまでも十分読めるし通じる。

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2012年07月08日

Posted by ブクログ

定本 夜ふけと梅の花 (単行本)のほうを読みました。
表紙は井伏氏が描いた、地図。

どの話も最初から最後まで貫き通される主人公のだめだめさが、
なんだか気持ちいいというか、文体との不思議な調和があって、
「よし、この主人公を反面教師にして頑張ろう」なんて気には塵ほどもならない不思議な心地よさがありました。

「一匹の蜜蜂」で、
肥え太って働かなくなったぐうたら蜜蜂を見て自分に重ね、
蜜蜂と自分を重ねることを周りにちょっと怒られてる場面があって、
でも「山椒魚」しかり、暗喩するということにすごく敏感な人なんやなぁと。

あとがきを読むと、同じ話でも何度か書き直して少しずつ違うみたいなので、他のバージョンも読んでみたいな。

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2009年10月20日

Posted by ブクログ

山椒魚に幽閉にて、他多数の井伏鱒二さん。昭和初期とはこう言う事ですか?現代とはまるで当てはまらない大学で黒板に落語するのとそれを監視する学生監 うーん逆に新鮮な斬新な、でも真顔で行っている 真顔といえば兎島の2人の掛け合いとそれを見守る男も うーんなんだかな、井伏鱒二=受験の模試としか思えないのですが、受験がなければ読まないから それを読み込んで悦に浸る自分。

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2025年08月28日

Posted by ブクログ

若い井伏。言わずと知れた山椒魚、初めて読んだ井伏作品でもある。その原型となる幽閉も収録。僕は年老いた井伏の方に親しみが湧く。これは僕が年老いたせいなのか。あと朽助が登場する作品が好き。あの方言の雰囲気がたまらなくよい。

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2017年04月09日

Posted by ブクログ

井伏鱒二の読みやすい部類の初期短編集。
概ね駄目な若者の視点で描かれるモノばかりですが、
学生の時分読んだ時より共感部分が多いと云う事は、やはり…(笑)
山椒魚のラスト16行端折られてる話は知りませんでした。
この文庫本で初めて其処まで読めた訳ですが、
最初に読んだ時の「?」部分が「!」になりました
これ、合った方が大分腑に落ちるのですが、
敢えて端折る処がナンセンス文学の美徳なんでしょうか。難しいです。

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2013年09月21日

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