【感想・ネタバレ】悲劇の天才将軍 石原莞爾の満州(Hanada新書 018)のレビュー

あらすじ

山本七平賞奨励賞を受賞したノンフィクション作家が書き下ろす昭和史の圧倒的人間ドラマと悲劇の物語。

石原が果たした満州建国、だが、それは悲劇の始まりだった。
背後にあったアメリカの存在、石原が夢見た日米決戦「世界最終戦」の実現はなぜ道半ばで頓挫したのか。
国内の官僚組織化した日本内部にいた「内なる敵」とは誰だったのか。
「天才参謀」は誰と戦っていたのか。
これは現在の日本への警鐘でもある。

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Posted by ブクログ

何度となく読んで来た石原 莞爾(いしわら かんじ)に関する書籍であるが、終戦記念日も近づく夏になると、本屋の新刊コーナーには何年かごとに繰り返し、石原莞爾関連の書籍が並ぶ。彼に関する研究は多くの歴史家が行ってきたが、軍人というよりも思想家と読んだ方が相応しい。
石原莞爾は1889年(明治22年)に山形県西田川郡鶴岡城下日和町に生まれる。これは現在の鶴岡市である。最終階級は陸軍中将。幼くして成績優秀、将来は陸軍大将になることを夢見ていた少年だったという。陸軍中央幼年学校(本科)入校の頃、軍に従事するための基礎教育訓練を受ける傍ら、宗教家田中智學の『妙法蓮華経』に関する本を読み始めている。石原といえば日蓮宗と言われる程、生涯を通じて日蓮主義をその思想の根底に置いている。
本書は数ある石原に関する書籍と同様に、石原の軍人としての生涯を振り返ると共に、東亜の融合と、アメリカとの最終戦争に備える必要性を訴える石原の考え方について、エピソードと共に解説していく内容となっている。満洲国建国から太平洋戦争終結後の東京裁判、そして石原が病に倒れ亡くなるまでの1949年8月15日迄を描いている。よって、当時の日本国内の政治の混乱、5.15事件や2.26事件に永田の殺害など、暗い事件中心ではあるが、変化の激しい時代を一気に読み返すことができる。本書は、戦後80年以上が経過し、戦争経験世代も少なくなる中、人々の記憶から薄れゆく混乱した時代を改めて思い起こし、未来の平和に繋げる意味合いが込められている様に感じられる。
何かと悪の首謀者的な位置付けで語られることも多い石原であるが、東條英機同様に勘違いされやすい人物かもしれない。ここで挙げる東條も、(勿論開戦を止めることができなかった首相としての責任はあるが)終戦後は、全ての罪を被り刑場の露と消えることになるが、東條1人が悪いわけではなく、国民全体の罪を1人で背負っただけに過ぎない。責任論で言えば東條が首相になる以前から、国家は帝国主義化し、いつ戦争が起こってもおかしくない状況だ。本書石原莞爾もその様な状況は容易に予測していたに違いない。だからこそ中国との和平、20年先のアメリカとの対決に備える事を訴えていた。石原と東條の2人の想い、そしてそれよりももっと大きな時代の濁流が2人を飲み込んでいく。
石原莞爾の「最終戦争論」も興味深い内容であったと記憶するが、先ずは本書の様な書籍で石原の人生をダイジェストで辿りながら、時代背景や周辺人物とのやり取りを知った上で読み直すと、より面白く感じられ理解も進むだろう。
楽しみな夏がやってきた。

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2026年07月04日

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