【感想・ネタバレ】昆虫食入門のレビュー

あらすじ

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「本当においしいんですか?」「はい。カミキリムシはクリーミーで、ふんわり甘く、ハチの子はウナギの味そっくりで、アブラゼミはナッツの…」"昆虫をおいしく食べる"著者の追究はとどまることを知らない。だが、昆虫食の研究はまだ始まったばかり。前人未到の食域に踏み込みつつ、昆虫食のスタンダードを探る。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

伝統食でありながらゲテモノ食とも思われてしまっている昆虫食。この本の著者の内山先生を招いた勉強会が社内で開かれたこともあり、勉強会後に読んでみました。

冒頭のカラーページに掲載されている各種の昆虫料理の絵ヅラは破壊力満点ですが、中身は至ってマジメ。
昆虫食の歴史、食べられる虫の説明(味や食べ応えについても細かく書かれてます)、社会や地域によって「昆虫を食べる」という行為の受容性が異なるのはなぜなのか、といったあたりが網羅的に説明されています。細かい部分はあまり追及されておらず総論的な内容となってますが、これは新書という性質上、仕方ないでしょう。

個人的な気づきとしては、まず昆虫食は「他の蛋白質豊富な食品が手に入らない地域で仕方なく食べられていたもの」ではない、ということ。たとえば長野で食べられているザザムシについては、それが捕れる場所は即ち川魚が捕れる場所なので、「あえて好んで」ザザムシを捕って食べていたのだ、と著者は述べています。

また、「虫は不衛生である」という論に対しては、明治以降に不衛生な環境と虫とを結びつけて考える風潮が醸成され、それによって虫が汚いものとされてしまったと述べたうえで、「食べないからこそ汚いものであるという意識が生まれる」のだと説明しています。そういう考え方もあるのか、と気づかされるポイントでした。
実際、イナゴやハチノコを食べる文化圏の人は、虫を汚いものや気持ち悪いものと認識することは少ないのではないでしょうか。

一方で、この本からは「昆虫を食料として安定供給する」にあたっての課題も見えてきます。
個人的に一番気になったのが、陸上の畜産物や魚に比べ、「育った環境や採集された場所により、栄養価や摂取できるカロリーにバラツキが大きいのではないか?」ということ。どんな食材でも栄養価はバラつくと思いますが、昆虫はその程度が大きいのではないかと思われます。
さらに、人が必要とする栄養価やカロリー量を満たすためには相当な量の虫を食べる必要があり、それだけの量を安定的に供給できるか(=養殖できるか)も課題でしょう。趣味の範囲で佃煮などにするために捕獲するならまだしも、本気で食材として供給するには養殖は必須。その辺をどうするかは課題になりそうです。

ただ、本書によれば昆虫は「食料が人間の食べる食材と競合しない」ため生産しやすく、「変温動物のため体温維持にカロリーを消費せず、溜め込んだエネルギーをそのまま食料カロリーとして提供できる」ため栄養効率も高い、とのこと。
あとは、食べ慣れておらず生理的抵抗感が強い、というポイントがかなり高いハードルになると思われるので、そこを何とかしないといけないでしょう。

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2017年07月02日

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